28話 オリヴェ男爵家の音楽会2
オリヴェ男爵家の音楽会で私は観客たちのまえで得意な歌を披露した。
他の令嬢たちのヘタクソな演奏を聞いた後だから、私の歌が引き立ちとびきり良く聞こえたはずだ。
「清らかで可憐な…… まるで女神様の楽園で暮らす妖精たちのような歌声でした。シャルロット嬢、今日は依頼を受けてくださりありがとうございます」
音楽会の主催者、オリヴェ男爵夫人が満面の笑みを浮かべている。
「こちらこそ光栄ですわ。デビューしたらこの音楽会に出席することが私の夢でしたから」
「まぁ! シャルロット嬢、なんて嬉しい言葉でしょう!」
感動したようすでオリヴェ男爵夫人は私にハグをした。それを見ていたお母様が周囲の人たちに私の自慢を始める。
「男爵夫人…… 実はシャルロットは音楽教師に美しいソプラノの声を持っているから、声楽を勉強するべきだと強くすすめられましたのよ」
「まぁ、そうでしたの」
「ええ、それで声楽家の教師をさがしだしてシャルロットは特別にレッスンをうけましたの」
「だからあんなにも素晴らしい歌声でしたのね?」
「ふふふっ……」
本当はお姉様が上手にバイオリンを弾くから、私も音楽教師について習ったけれど。私は不器用だからどの楽器を弾いてもうまく演奏できなかった。
それで声楽を習ってみてはと、音楽教師に助言された。
結局、声楽もレッスンが厳しくて耐えられずすぐにやめてしまったけれど。
声楽の基本だけは覚えたから、素人にはすごく上手く聞こえるらしい。
「カナリアのさえずりのように美しい歌声でしたわ」
「それにシャルロット様の歌声には、可愛らしさもありましたね」
「ええ、本当に綺麗なお声でシャルロット様が羨ましいです」
「ふふっ…… ありがとう、嬉しいわ! でも、私の歌よりあなたたちの演奏のほうが素晴しかったわ」
ピアノで私の歌の伴奏をしていた学園の友人も。
ヘタクソなバイオリンやフルートの演奏で、私の引き立て役になった令嬢たちも。
オリヴェ男爵夫人と一緒に私を褒め称えた。
(去年、バイオリンを演奏したデルフィーヌお姉様よりも。ずっと私の歌のほうが素晴らしかった証だわ)
チラリとお姉様が座る観客席を見ると、お義兄様とヒソヒソと囁き合いニコニコと笑っている。
「……なんて痛々しいのかしら?」
(男色家の夫とイチャイチャして…… 二人は本当の夫婦ではなく擬装結婚をしていると、誰もが知っているのに。あんなふうに愛し合っているフリをして!)
思わず私はニヤニヤと笑ってしまう。
(私より先に生まれたからってロンスヴォー伯爵家の何もかも、自分の物だと独り占めしようとしたお姉様が悪いのよ! いい気味だわ)
私が見ているとユベールお義兄様が席からはなれ、お姉様が一人になった。
「ふふっ……」
(惨めなお姉様を少し揶揄って、遊んであげようかしら?)
「ごめんなさい、みなさま。結婚したお姉様も来ているから…… 少しだけ、お話しして来ても良いかしら?」
「まぁ! 引き止めてごめんなさい、シャルロット様」




