表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹にだまされ、私を無視する婚約者をすてることにした  作者: みみぢあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/65

21話 デルフィーヌの結婚4


 目の前で怒鳴るセルジュが…… 

 私にはまるで、初めて会った他人のように見えた。


 それどころかセルジュの言動に、困惑を通りこして気持ち悪さを感じている。



「まさか、あなた…… 私が今も復縁したがっていると、本気で思っているの?」


「いいか、デルフィーヌ。こうして付き合わされる僕の身にもなってくれよ! 将来、僕と結婚するとしても、これで君は離婚歴がある傷モノになってしまうじゃないか」


 セルジュはまた、大声で怒鳴った。


「……離婚っ⁉」

(私とユベール様の結婚式を見て、そんなことを考えていたの⁉ 頭がどうかしているとしか思えないわ!)


「こんなに傷がついた女と結婚しなければいけない僕が、どれだけ大変な苦労をするか。君は少しでも考えたことはあるのか⁉」


 興奮したセルジュは言葉を発するたびに、大声で怒鳴り続ける。

 

「大声で怒…… 怒鳴るのはやめて。セルジュ……」

(恐いわ。本当にこの人はどうしたの⁉)


「君こそ、こんなバカなかけ引きはやめてくれ!」


「……私はかけ引きなんてしていない」

(かけ引きをしていたのは、私と対話するのを拒み続けたセルジュのほうだわ!)

 

「だから素直になれよ! 今回は許してあげるから。そろそろ僕のところにもどっておいで」


 セルジュは大股で歩みより椅子に座る私の前で(ひざまず)き、媚びるように微笑んだ。


「……っ!」

 本気でそう思っているらしいセルジュに、私は絶句した。


「なぁ、デルフィーヌ……? 僕も悪かったよ。君に冷たくして……」

「……」

「もう少し君に優しくすればよかったと、反省しているよ」

「……」

「だからそんなに()ねるなよ? な? 良いだろう? 君は僕が……」


 パシッ!

 私の手に触れようとしたセルジュの手を振り払った。


「デルフィーヌ!」


「……私の前から消えて」

(嫌だ、何なの? 持ち悪いわ! セルジュがこんな人だと思わなかった)


 背筋が寒くなるほどゾッとして、ドレスの下の肌に鳥肌がたっている。 


 セルジュを冷ややかに見下ろすと、奇妙に歪んだ私の姿がセルジュの瞳にうつっていた。


「そんなこと言わずに、機嫌を直してくれよ。なぁ…… デルフィーヌ?」


「……」

 私が何を言っても、セルジュは自分の都合の良い解釈をしようとする。これでは妹を虐待したと、私に謝罪を強要していた時と何も変わらない。


 これ以上、セルジュと話すことはない。

 私と対話をする機会を自分からすてたセルジュに、今さら話すチャンスをあたえる気は無い。 


 何もかもおそいのだ。


「セルジュ、私たちは終わったの」

「デルフィーヌ!」

「私から婚約解消をしたいとお父様に訴え、それをセルジュが受け入れた時に…… 私たちは完全に終わったの」


 ピクンッ! とセルジュの頬が痙攣(けいれん)した。


「だからそれは、僕を……」

「あなたとやり直すつもりはありません!」


 セルジュの話を(さえぎ)るように、私は冷たい声で自分の言葉を重ねた。


「デルフィーヌ!」

「私はモンパトワル子爵夫人です。これ以上の無礼は許しません。お帰りくださいセルジュ卿」

「なっ…!」

「私はモンパトワル子爵夫人です。お帰りくださいセルジュ卿」


「ひ、ひどいよ……」

「いくら招待客でも、子爵夫人の私室に許可も無く入るなんて許しません」


「クソッ! デルフィーヌ、少しは僕のいうことを聞けよ!」


 ガチャッ! と扉が開く音が背後から聞こえた。


 セルジュが入って来た廊下がわの扉ではなく。隣のユベール様の部屋と私の部屋をつなぐ扉が開いたのだ。


「デルフィーヌ、用意はできた……」

 穏やかな声で話しながらユベール様があらわれたが。私の前に(ひざまず)くセルジュの姿を見てスッと表情が険しくなる。


「……ユベール様!」

 私は不思議なほどホッとして、椅子から立つとユベール様にかけ寄った。


 ユベール様は私を引き寄せ、広い胸に抱き締めてくれる。

 体温で温められたユベール様が付けている、サンダルウッドの香りがフワリと私を包んだ。


「何があった?」

「ユベール様……」


 緊張の糸が切れて、強張っていた私の身体が羽のように軽くなった。


 気が休まりハァ──… とため息をつくと。ユベール様が私を甘やかす時に使う愛称で呼び、私の心配をしてくれる。


「大丈夫か、フィーヌ?」


「はい。ちょうどユベール様が来てくれて助かったわ」

(いきなり密室で元婚約者と2人っきりになるなんて。こんなところを使用人にでも見られたら、また誤解されて醜聞の餌食(えじき)になってしまうところだったわ)


「彼は誰だ?」

「元婚約者のセルジュ卿です」

「……セルジュ卿?」


 ユベール様の声に明らかな嫌悪感が(にじ)んでいた。


 私はまたハァ──… とため息をつく。 


 これから私たちは祝賀パーティーの主役となり、招待客たちの注目を浴びなければいけない。

 醜聞まみれの私たちにとって、少しも気が抜けないイベントが待っている。


 今は本当に疲れているから、セルジュの相手をするために気力を削られるのが嫌なのに……

 

セルジュ(あの人)…… いまだに私が、自分と復縁したがっていると勘違いしていて」

「復縁? 私たちはさっき結婚したのに⁉」

「ええ。なのに私がいくら説明しても、話がかみ合わないの」


 ユベール様は切れ長の綺麗な目で、セルジュを(にら)みつけた。


「つまり…… あの男は自分からフィーヌを手放すような、愚かなマネをしておいて。今さらあわてて取り戻しに来たのか?」


「ええ、そうみたい。もう、嫌だわ!」

「かわいそうに。フィーヌ…… 私がついているから、心配ないよ」

「うん」 


 ついついユベール様に甘えて、私が愚痴っぽくなってしまうと。そんな私をなだめるようにユベール様は唇に素早くキスをした。


 私たち新婚夫婦の仲睦まじい姿を見ていたセルジュが、顔を真っ赤にして怒鳴った。


「……やっ! やめろよ、デルフィーヌ! そんな奴とキスするなんて!」



 さっきもセルジュに怒鳴られ、私は緊張で身体をガチガチにかたくしていたけれど。

 今はユベール様の腕に守られているから、セルジュに怒鳴られても安心して聞き流すことができた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ