たとえばこんな重要事項
「ふ、ふぉぉぉお」
「おー、お互いたくさん取ったなぁ」
テーブルの上に並べられた料理を改めて眺めると、思った以上に壮観だった。
赤に白に緑のソースがそれぞれかかったパスタ3種(もちろん全種ではない)。その向こうの皿には、きらきら輝く葡萄たちが乗っており、こちらも赤紫や濃紫、翠とこれまた色鮮やかで宝石の如き一皿。そして、あちらにあるフライドチキンやポテトの山は、香ばしさ漂うまさしく食の黄金。その隣にある皿は一転して、焦げ茶、深緑、真紅に煌めく甘やかなケーキが集い、まこと麗しい様相。
他にもチャーハンや点心、新鮮なサラダたちも揃い、とかく豪華なテーブルとなった。
「これ、全部食べて良いのか……!」
伽羅が、感極まったかのように言う。
「いや、取ってきたん自分たちだし。全部食ってもらわんと困るて」
お残しは許しまへんで、なのだ。
「うう、ここ最近ずっと蒸し鶏と卵と野菜ばっかだったからさぁ、感動しちゃって」
いや、鶏肉好きだけどね? 野菜と卵も好きだけどね? 限度ってもんがあるじゃん、と伽羅は恨めしそうに言いながら、ジューシーフライドチキンを頬張った。
「~~~ッ、脂うま~~~! これよ、これ!」
「何でそんなまた、減量食みたいな食事を」
「親に今日のことがバレてさぁ」
ぺろっと自分の手を舐めつつ、彼女が説明する。てらてらの唇、やらしいな。
「前回の食べ放題のあと、私ちょっと太ったでしょ?」
「……ん~~~。そんな言うほどじゃなかったと思うけど」
私は、咀嚼したチャーハンを飲み込み(チャーシューの旨味と甘味がしっかり染み込んだ良きチャーハンであった)、思い返してみた。
ううむ。
いつもより少しぷにってるか? ぐらいだった気がする。
相変わらず引き締まったナイスマッスルしか印象に無い。
「あんがと。でも、親からしたらアウトなわけよ」
お蔭で、今回はちゃんと運動するって言っても信じてくれなくて、と伽羅はため息を吐いた。ため息ついでに、ぷすっとマスカットへフォークを突き刺し、口へ放り込む。
しょっぱいものと甘いものを交互に食べる、我らの通称・無限美味しいループを楽しむつもりらしい。
「うちは、これがあるからねー。やんなっちゃう。私、別にプロのボディビルダーじゃないって」
憂鬱そうにフォークを回し、パスタを巻き付ける彼女を見ていたら。
「じゃあ、一緒に暮らす?」
ぽろっと。
その言葉が、口をついて出た。
「……誰と」
「私と」
「……」
「……」
「それ、さぁ」
「うん」
「所謂、プロポーズじゃない?」
「そうね」
あまりにうっかり飛び出したので、今更恥ずかしくなる。とりあえず、クロワッサンにローストビーフを突っ込んで気を紛らわした。
「そんな、え。こんな、ビュッフェの序盤のさぁ、え、こんなときに出る?」
「仕方ないだろ。ずっと考えてたことだから、つるっと出ちゃったの」
「へえ。ずっと考えてくれてたんだ」
「……うん、そう」
はー、しまらねぇ。
むぎゅむぎゅと。もう苦しそうなクロワッサンの割れ目に、今度は野菜も詰め込んだ。
「とりあえず、さ」
「うん」
「めっちゃ真剣に食べたいから、返事はあとでいい?」
「うん。そうして」
もう一回、仕切り直そう。
食後のお茶のときにでも。
あるいは、腹ごなしの散歩のときにでも。
今日は幸い、空は晴れ。銀杏並木も、綺麗に色づき始めているのだ。
END.




