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いっぱいいっぱいの倖せを
「いいよ」
「え?」
「さっき言ってたこと」
銀杏並木を歩いていたら、伽羅がいきなりそう言った。
「え、どれ」
「さぁて、どれでしょう~♪」
スイーツビュッフェであれだけ食べたあとだと言うのに、彼女の足取りは軽やかだ。私の少し前を歩く伽羅を見つめながら、やはりあの美しきマッスルがそれを可能にしているのだろうか、としみじみ感じ入ってしまった。いや、筋肉と満腹のだるさって関係してるのか?
ではなく。
どの問いに対する『いいよ』なんだ。
ついさっきの『お腹いっぱいだから、ちょっと遠くのカフェまで歩くか』に対して?
はたまた、そのひとつ前の『前に言ってた映画、今日見る?』に対してか?
……それとも。
「伽羅」
「何ぃ?」
「ちょっと休んだらさ。……不動産屋さん、行く?」
彼女が、くるりとこちらを振り向いた。
「いいね」
その顔に浮かべられた笑顔があまりに愛らしくて。私は、胸が苦しくなる。
ああもう、まったく。
お腹も胸も、いっぱいいっぱいだ。
END.




