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【2000PV達成!】『雀豪戦記』第二部「『覇裟羅達』BasarianS」堂々完結!  作者: ヒルキ 将
最終章『本能寺の変編』

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第六話:籠城戦③麻雀とともに死す!

本能寺を取り囲んで、内外で斬り合いが始まっていた。三方向から来る敵を寄せ付けず、朱雀派は奮闘していた。夢幻斎の放った火を消すために、雀武帝親衛隊は消火活動に奮闘していた。

「消せ消せー! 急げー! 火のまわりは早いぞー!」

「水が全然足りないぞー! 人手をもっとまわせー!」

「本堂に燃え移るぞー! グズグズするなー!」


「それでは、二回戦を始めます! 親は順番を一つズラして、一馬どのからになります」雅信が宣言した。

東一局 ドラ:②

親:一馬【100】 南:雷獣【96】 西:霧笛【96】 北:王水【108】 供託【0】

「流局」「ノーテン」「ノーテン」「ノーテン」「ノーテン」


東二局 ドラ:東

「流局」「ノーテン」「ノーテン」「ノーテン」「ノーテン」


東三局 ドラ:白

「流局」「ノーテン」「ノーテン」「ノーテン」「ノーテン」


東四局 ドラ:伍

「流局」「ノーテン」「ノーテン」「ノーテン」「ノーテン」


不用意な鳴きをする者はいなかった。

不用意に和了する者もいなかった。

折角の聴牌を無駄に出来なかった。

和了すると、折角育てた手牌から三枚没収されるのだ。

だから、慎重にならざるを得なかった。


一馬は千里眼を使いつつ手を進めていた。

「(霧笛が早いな・・・。マズいかも知れない・・・)」一馬は焦った。

霧笛:②②②東東西西西南南白白白

霧笛は、西を引き直し白も暗刻にしていた。

「(聴牌ったな・・・)」雷獣も焦った。

「(マズいな・・・。まだ生きている。7巡後に自摸る流れだ・・・)」一馬は何とか阻止する方法を考えた。

「(二人が焦っているな・・・。マズいのか・・・)」王水は、千里眼を使えなかったので雷獣と一馬の焦りから状況を判断していた。

「さぁ、平和な世の中がやって来るぞ!」霧笛はご機嫌だった。色だけ読めるので、自分が有利であることに気付いていた。

「朱雀派が天下を取ったら、どうしたいのだ?」一馬は霧笛に質問をした。

「決まっておろう。勢力拡大をする!」③を自摸切った。

「まだ、何か欲しいのか?」

「暗愚なお前たちには分かるまい! この壮大な考えが!」發を自模切った。

(ポン)!」 (ポン)發發(發)

「! (その鳴きは不用意だ!)」雷獣の眉間に皺が寄った。

「! (絶体絶命だ! 四暗刻が一巡速まった!)」しかし、一馬に二枚の急所が入った。伍と八だった。

「どのような考えだというのだ!」

「大陸を制圧するのだ! お前らはその先陣だ! 有難く思え!」中を自摸切った。雷獣は動かなかった。

「折角、天下を統一したというのに、再び乱世を繰り返すのか?」

「より大きな富のためだ。苦しいことは全て他人事と思え! 何でも我慢できるわ!」霧笛は、笑い飛ばしながら言った。

「今、自分の身に起きていることを他人事と思えるか? 苦しくても現実逃避し続けろと言いのか?」

「酒に溺れろ! 博打を愛せ! 子作りに励め! 快楽は、この世にいくらでも転がっておるわ。堕落するかしないかは、自分次第だ。いくらでも現実逃避出来るだろ?」

「戦の世を終わらせることが最上策だ! 朱雀派の好きにはさせん!」二人の罵り合いが終わった。一馬はじっと手牌を見た。そして牌山を確認した。

「・・・(雷獣、動かないのか・・・。動いても、まだ和了牌は霧笛の自摸山に残っている・・・)」一馬は祈るような思いだった。

「・・・(動いても、動かなくても自模られるわ・・・)」雷獣は無言だった。

「・・・」王水も黙って二人のやり取りを聞いていた。

「(くっくっく。随分と弱気じゃないか・・・。黒幅脛組の頭領ともあろうものが・・・、くっくっく)」

「! (くみと! なぜ、俺の体の中に!)」

「(随分と前から、憑りついていたさ。闇斗が成長するまで体を借りるぞ!)」

「させん!」突然の怒鳴り声に周囲が驚いた。

「! ん? どうしたんだ? 怖くなったか・・・」霧笛は余裕だった。

「碧竜! 俺を斬れ!」不測の事態に備えて、対局室の外で待機していた碧竜に命じた。そこここで、既に斬り合いが始まっていた。白虎龍派と青龍派が本能寺内になだれ込んできて、織田信長を襲っていた。雀悟は、八刀斎の力を借りて信長公に手傷を負わせていた。


「え? お前は何を言っているんだ・・・」雷獣は不安になった。

「(氷月、聞こえるか。くみとが俺の体内に宿っている。封印するために、碧竜に俺を斬らせる。俺が傷つけば、くみとは俺の体内から出ることは出来ない。すぐに、碧竜に伝えてくれ!)」

「(やめろ!)」くみとは抵抗したが、一馬の身体を操れなかった。

碧竜の傍にいた氷月は、碧竜に伝えた。

「何ですと・・・。くみとは生きて一馬様の対何に潜んでいたのですか・・・」

「だから、一馬の様子がおかしかったのね・・・」

「傷だけつければいいのなら、やります!」

すぐに碧竜が飛んできた。

焦ったのはくみとだった。

「(ま、待て! 霧笛に和了られるぞ!)」

「気が狂った奴の相手はしておれんわ!」霧笛は、豪快に南を自模って②を切った。

「! (和了じゃないのか・・・?)」雷獣が冷汗を垂らした。

「?・・・(あれは、和了牌のハズだ・・・)」一馬が状況を理解できなかった。

「(二人とも焦っているな・・・。霧笛は和了りだったんだ・・・)」

三人以上に自分の行動が信じられなかっったのは、霧笛だった。

「! なぁにぃー! なぜ、それを切っている!」

「(くっくっく。ついに成功したぞ! 動物だけではなく、人間までも操れるようになったわ! 『鳥獣入魂(アバター)』の完成版『生物入魂(メガ・アバター)』じゃ!)」くみとが歓喜した。

「・・・(取り敢えず、助かったことに変わりはない・・・)」一馬は無言だった。

霧笛の首筋に、刀を突きつけた者がいた。刀傷にまみれ、血みどろになった織田信長公であった。

「と、殿!」霧笛はほとんど泣き出しそうだった。

「うつけめが! 狼狽(うろた)えるな! 『生きざまは華やかに、死に際は美しく』と教えてきたはずだ」諭すように静かに言った。霧笛は落ち着きを取り戻し、牌と向き合った。

生霊(いきりょう)の一匹や二匹で騒ぎ立てるな! 気力で追っ払え!」

「ぎょ、御意!」

霧笛は冷静になり、対局が再開された。


「(来たな!)」一馬が待望の牌を引いた。

「(よし、準備完了だ!)」雷獣は、一馬の心を読み自分の手を進めていた。

「(よし、これでいい! しかし和了るのは、二人のどちらかだろう・・・)」王水も聴牌った。

「(なんでぇ、お前も追いついたか。朱雀派包囲網『BASARIANS』の完成だ)」雷獣はほくそ笑んだ。

そして、一人追い込まれたのは霧笛だった。

「ぜー、ぜー。はー、はー」息が荒くなり、汗がダラダラと流れてきた。館に燃え移った火が矢鱈と熱かった。ぼとぼとと、柱が崩れ落ち始めていた。朱雀派も、青龍派も白虎龍派も、戦いの手を止めて消火活動にあたっていた。

その中で、四人は卓を囲んで麻雀を打っていた。

一馬が西を切った。

(ポン)!」 (ポン) 西(西)西

「狼狽えるな! 初めからやり直すつもりか!」信長が怒鳴った。

「申し訳御座いません」と言って、②を切った。

信長公は、深手の傷を負いながらも優しい笑顔をしていた。

「ふっ」と笑って、霧笛の頭を撫でた。

「それならば、それでいい・・・。そこからやり直せ。字一色を狙ってみろ!」と言って、膝から崩れ落ちた。体から魂が抜けて霧笛の体内に潜り込んだ。

「!」一同は驚愕した。

「戦国の魔王が事切れおったわ」雷獣が言った。

「よし、今だ! くみとを封印する。碧竜よ、俺を斬れ!」一馬が怒鳴った。

「御意!」碧竜は大きく刀を振りかぶった。

「どっせー!」碧竜は渾身の力で刀を振り下ろした。

「崇徳天皇の魂も、貴様の内臓も悉く頂いてくれるわー!」刃が一馬に当たる寸前にくみとは逃げた。

「ぐぼわあぁー!」一馬の口の中から、内臓を食い破りながらくみとが飛び出してきた。逃げた先は、霧笛の体内だった。

「ぐわっ!」一馬は、血反吐を吐きながら、気を失わないように踏ん張った。

「ひぃぎぇー!」霧笛は、絶叫した。崇徳天皇、織田信長、くみとの魂を飲み込んだ霧笛の体は二回り大きくなった。

「おーのーれー、逃げおったかー!」碧竜は苦々しく叫んだ。

「ぶおんっ!」碧竜は刀の軌道を変えて、霧笛を斬った。霧笛は、深手を避けようとしたが逃げ切れなかった。

「ざっぱっ!」肩に切り傷を負った。

「(しまったー!)」くみとは、崇徳天皇、織田信長とともに霧笛の身体に封印された。

「よしっ! くみとを霧笛の体内に封印で来たぞ!」一馬が口を(ぬぐ)いながら叫んだ。

「これで、敵は完全に霧笛ひとりだ」雷獣が安堵した。

「やったか!」王水は一安心した。

心置きなく、麻雀で決着をつける時が来た。

「俺を斬っても良かったのだが、くみとの封印にひとまず成功だ!」一馬は言った。そして霧笛に向き直って言った。

「さぁ、お前の番だ!」霧笛を睨みつけた。

とうとう霧笛は追い込まれた。

霧笛:北東東白白白一南南南 (ポン) 西(西)西   自摸:北

脂汗が出た。

「(俺が字一色を狙っているのはバレている。一は一馬に危険な牌だ。しかしそう都合よく聴牌しているか・・・? 手牌は萬子しかないが、ただの清一色ではないのか・・・)」霧笛は千里眼を使ったが、萬子・筒子・索子・字牌の区別しか出来なかった。

「(雷獣の手は、どうだ・・・。萬萬萬字字字字字字字字字字か・・・。萬子の混一色だ。萬子のメンツは完成している。一は通る・・・。王水はどうだ・・・。索索索索索索索索索索字字字。緑一色だ。聴牌か?・・・)」

「(随分長いな)」一馬が思った。あまりの出血の多さで、気を失いかけていた。

「(牌の色しか見えない筈だが、何を悩んでおる・・・)」雷獣は訝しがった。

「(切る牌がないのか・・・?)」と、王水は思った。


霧笛は、深々と呼吸を整え目をつぶった。記憶に直接訴えかけてきた信長公がいた。

「(臆するな! 負けたならば全員を斬り捨てれば良いだけだ!)」信長公が、心の中で怒鳴りつけた。

「(御意!)ぜー、ぜー。」呼吸を整え終わると、信長公の影がすうっと消えた。


霧笛の前に、黒装束の見慣れぬじじい忍者が現れた。

「(まだ、馴染まぬか・・・?)」

「(お前は誰だ?)」

「(さきほど、お主に乗り移ったくみとじゃ。鳥獣入魂(アバター)が使えぬか?)」

「(まだ使えんわ・・・)」

「(じきに、ワシがお主の身体に馴染めば使えるじゃろう。この勝負が終わるまでに使えるようになれば良い・・・)」

「(分かった!)」と言って、すうっと黒忍者の影が消えた。


高貴な貴族が目の前に現れた。

「(権力に溺れ、権力に媚びる俗物どもめ! 己一人の快楽のために他人を犠牲にして良いと考えておるのか?)」

「(お前は誰だ? 俺の体の中で何をしておる?)」

「(情けない! 情けない! 何時まで経っても世の中は、権力の下僕(しもべ)ばかりじゃ! 人間とは、永久に成長せぬ生き物じゃ!)」

「(うるさい! 俺の意志に反するなら、俺の身体から出て行け!)」

「(出て行けぬのぅ・・・。お主は、死ぬまで苦しみ続けるのじゃ・・・)」

「(それは、何故だ!)」

「(哀れよのぅ、悲しいのぅ。それは、お主の器が小さいからじゃ)」

「(何とでも言え! 大きくなって見せるわ!)」

「(出来るかのぅ。まずは、この勝負に勝って見よ)」

「(誰だか分からぬ奴に、指図されるまでもない!)」とブツブツ言いながら、眼をくわっと見開いた。覚悟を決めて牌を一枚掴み、大きく振りかぶった。

「一!」卓が壊れそうな勢いで叩きつけた。

「ぶわちぃ!」

「ロン!」

「ロン!」二人が声を発した。

「んなぬぅ?」霧笛は相手の手牌を確かめた。

一馬:一一一二三四伍六七八九九九

雷獣:一九九東東南南西西北北中中

「九連宝燈! 役満成立!」一馬が叫んだ。

「邪悪七対子じゃ、成仏いたせ!」雷獣も叫んだ。

「役満の和了が成立しました。よって、青龍派の勝ちとなります」雅信が宣言した。結果を受け入れない霧笛が立ち上がった。

「くぉのやぁろぅ!」霧笛が刀を抜いて一馬に斬りかかった。

「勝ち逃げ御免!」一馬が腰の臥龍按剣(ガリアンけん)を抜いて霧笛を一閃した。

斬られた霧笛は、ヨロヨロしながら何ごとかを呟いた。

(うぬ)なら出来るぞよ。麻雀で世の中を変えてみろ!」信長公が怒鳴りつけた。

「やってみろ、このままでは死ぬだけだ!」くみとも(そそのか)した。

「致し方御座らんのう。協力するわ。術を使え!」崇徳天皇の怨霊も協力した。

「ふっふっふ。出来るわ! 鳥獣礼賛(いきものバンザイ)!」霧笛は燃え(たぎ)る火の鳥と化し、大空高く飛んで逃げて行った。内臓を食い破られ、ボロボロになった一馬は崩れ落ちた。


〔第七話:籠城戦④(最終話)時の揺蕩(たゆた)うとき〕に続く

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