第四話:籠城戦①誘(おび)き寄せられし者たち
夢幻斎を倒した後、一馬は青龍派師範代で弟である天承雀悟、碧竜、氷月と作戦会議をしていた。
「6月2日に本能寺で戦うだと? それは本当か?」一馬は、雀悟に確認した。
「あぁ、間違いない。不破雷獣も娘を人質にされているから出向くしかない。こちらは、鎌田軟骨が人質だ」
「軟骨か・・・。一応、義理はあるな」
「最近は、雀武帝親衛隊の関係者の如く親衛隊本部に入り浸っている。捨ておいても構わないが、退所したと言えど同門だ」
「うむ。この誘いに乗らざるを得んな」
不破雷獣と天翔一馬の参戦が決まった。
「甲賀の代表として、藤林長門守も呼ばれている」雀悟が続けた。
「甲賀は、こちら側に付くと言った。朱雀派はそれに気づかぬわけでもあるまい。麻雀後に、力づくで決着をひっくり返す気なのかも知れない。もしくは、寝返る条件を付けるかも知れない」
「麻雀を打つ意味があるのか?」
「大義名分欲しさだろうな。そして武士には名誉が一番大切だ」
6月2日未明から、本能寺はぶ厚い霧に包まれていた。夜が明けると同時に、織田家1万の兵が姿を現した。それを取り囲むように、青龍派、玄武龍派、白虎龍派の派が姿を現した。お互いが派兵を予測していたような動きだった。
「戦になったら、勝敗は五分五分だど。麻雀の結果次第だど」堂満吉兆太が道満凶之介に言った。
「先陣は、一馬君と雷獣殿に託すことにする。結果に納得できぬ者たちの暴走し始めたら、我々の出番だ」太刀風八刀斎が蠣崎潤之介に言った。
「御意!」潤之介は畏まった。
「乱闘戦が始まった途端に、仕掛ける集団があるかも知れません。慎重に様子を見よう」雀悟が疋田一時に言った。
「分かった! いつでも行けるように準備しておくぜ!」疋田は、武者震いをした。
仲裁役として、雀武帝親衛隊から紫電改雅信が立ち会った。不破雷獣は、朱雀派の指名で対局に入らねばならなかった。
「確認いたします。今回の対局は、朱雀派が青龍派に対しての宣戦布告と言う形になります。雀武帝親衛隊から、中立の立場として不破雷獣殿が参戦します」
「あぁ、間違いない」剛掌霧笛が言った。
「そのように伺っております」天翔一馬が言った。
「残るひと枠は青龍派が指名できるが、甲賀忍者代表で良いのか?」霧笛が確認した。
「助っ人をお願いしました」一馬が言った。
「こちらも、乱闘戦の準備で手いっぱいだ。いいだろう」霧笛が承諾した。
「それでは、対局者が決まりましたところで、一位確定後のそれぞれの対局者の希望を伺います」雅信が言った。
「朱雀派は、青龍派の吸収合併を要求する」霧笛が言った。
「青龍派は、朱雀派の解散を要求します」一馬が言った。
「雀武帝親衛隊は中立の存在だ。以後の戦争の一切を禁じ、二着の流派の指導のもとに天下統一を要求する」雷獣が言った。
「甲賀忍者は、天下を治める野望はない。二着の流派の指示に従うが、天下統一後も伊賀・甲賀ともに独立することを要求する」王水である藤林長門守が言った。
雅信は、全員の要求を聞いたところで確認した。
「それぞれの要求に異論は御座いませんな?」
「ない!」霧笛が言った。
「ありません」一馬が言った。
「よかろう」雷獣が言った。
「良いでしょう」王水が言った。
「もう一つ確認事項があります」
雅信は全員の顔を順番に見て、全員が自分の話を聞いていることを確信しながら言った。
「既にご承知のことと存じますが、この本能寺を取り囲むように朱雀派の兵1万が布陣しています。そしてそれを取り囲むように、青龍派、玄武龍派、白虎龍派の兵隊が布陣しています。雀武帝親衛隊も遠巻きに布陣しています」
「・・・」全員が、雅信の次の発言を待った。全員が何を言われるのか分かっていた。
「対局開始と同時に【乱闘戦】に突入する確率が高くなります。誰が、どのタイミングで仕掛けるか見当がつきません。対局者の方々に置かれては、座席から立った時点で勝負を放棄したものとみなします。【籠城戦】という時間無制限の戦いになるので、くれぐれもその辺を覚悟をして頂きたいです」
「・・・よかろう」霧笛が重々しく言った。
「良いでしょう」一馬が承諾した。
「異存はない!」雷獣が快諾した。
「分かり申した」王水も承諾した。
「それぞれの承認を得たところで、【籠城戦】の開始になります。対局者とは、顔を合わせないように、人質は解放されました」軟骨と輝雷美が釈放された。
「人質なんぞ取りくさって・・・」雷獣が吐き捨てた。
「雀武帝親衛隊は、素直に朱雀派の命令に従うもんだ」霧笛が言った。
「雀武帝親衛隊は、朱雀派の私兵ではないわ!」
「調停試合に、いちいちお前が出てくればいいだけのことだ!」
「・・・!」お互いが睨み合った。
「もともと、戦を無くすために麻雀の試合でケリを付けるはず。喜んで戦を仕掛け、麻雀の結果を無視して勢力拡大するのは、如何かな?」一馬が霧笛を睨みつけながら言った。
「ふっふっふ。力づくで天下を統一出来れば、平和は転がり込んでくるものよ・・・」霧笛もにらみ返した。
「雀武帝親衛隊だけではない。朱雀派は、伊賀や甲賀も私兵と勘違いしておる」王水が霧笛を睨んだ。
「伊賀の地を甲賀にそっくりくれてやるのだ。不満はあるまい」霧笛が王水を睨み返した。
この時点で、朱雀派に対抗する勢力が団結した。1対3の構図になった。
「それでは、ルールを説明します」雅信がルールを説明した。
【籠城戦】誰かが役満を和了するまで戦いが続く持久戦。誰かが戦闘(麻雀継続)不能になったときに備えて、一応の形として武功のやり取りを行う。
①時間無制限。誰かが役満を和了するまで対局は続く。
②役満和了推進のため、一九19①⑨字牌を2枚ずつ追加し、26枚多い状態で勝負を開始する。
③【武功の計算】親は、和了翻数の1.5倍。子は1倍。【100翻持ち、箱割れ無し】
④【武功の総どり】誰か一人が役満を和了った場合、武功を総どり出来る。
⑤【武功の分配A】役満をW和了または、T和了した場合、上家取り。
⑥【武功の分配B】役満をW和了または、T和了した場合、親対子で、2対1になるように等分で分配する。
⑦【流局時・限定相続】役満以外を和了した場合、次の局以降も手牌を持ち越せるが、同じ手役、同じ翻数の和了は出来ない。和了した者以外が、和了手牌を一枚ずつ切り次局が再開する。和了者は、次局開始と同時に二枚補充して再開する。
⑧【流局時・領地没収】半荘で一回も和了出来なかったら、武功を五翻失う(供託)。
⑨【流局時・対々放棄】対々和を和了した場合、半荘終了時に全て没収となる。
⑩【流局時・罰符】親二翻、子一翻。供託となり、次局に和了した者の総どりとなる。
※ 数え役満を、採用しても良い。
「なお今回の戦いでは、【武功の分配B】を採用します。数え役満は採用しません」雅信が言った。
「半荘に一回ずつ和了すれば、手牌を持ち越せるのか」霧笛が言った。
「和了すれば、自分の手の内を晒すことになるがのう・・・」雷獣が言った。
「和了後に、手牌から三枚没収される。必ずしも和了することで有利になるわけではない」一馬が言った。
「対々和は、全没収か。当たり前だな。対々和を持ち越されちゃ四暗刻の近道になる」王水が言った。
東一局 ドラ:西
親:王水【100】 南:一馬【100】 西:雷獣【100】 北:霧笛【100】
「それでは、東一局始めます!」雅信が宣言した。
「! ど! わー! わー!」開局と同時に外が騒がしくなった。
「? 何か外が騒がしいな」霧笛が訝しがった。
雅信に伝令が飛んできた。
「! 何? それはまことか?」
「はい、ただ今全力で消火作業中です!」
「! 何? 消火作業?」二人の会話を盗み聞いた雷獣が呟いた。
「!」 「!」 「!」
雅信がこちらに歩み寄り報告した。
「やけくそになった、人質の暴走らしいです。建物に火が放たれました」
「放火~? 人質ってどっちじゃ?」雷獣が訝しがった。
人質の暴走と言う報告ではあったが、真相は人質に化けた夢幻斎の暴走だった。
奥の間で、瞑想していた信長公が目を開けた。
「・・・。戦が始まったのか・・・」
「ははっ、確認してまいります!」
一人だけいた側近が部屋を出て行った。
〔第伍話:籠城戦➁乱闘戦始まる〕に続く




