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エピソード20 チャペル

懐かしい母校のチャペル。ここに4歳から18歳まで15年間通った学院だ。

学生時代は、ミサで、訪れる以外にも、悩み事があると、よく来ていた。


控え室に入ると、神父様とかなりご年配のシスターがいらした。

ご挨拶をしようと、お顔を見ると、

神父様は、当時の教頭先生を務めてらしたヨゼフ神父様だった。

今日、お世話になる事のお礼を申し上げ、シスターにご挨拶しようとお顔を見ると、まさかっ。


「シスター・セシリア様っ、ご無沙汰しております。」


「まあ、やっぱり彩様だったのですね。あらまあ、まさか、卒業生の百合様?華子様?」


「まあ、セシリア様。」


「セシリア様にお会いできるなんて。」


シスター・セシリア様は、私の高等部3年の時の担任。

お母様とお義母様は、ハープ部に入っていた時の顧問の先生だったようだ。

ハープ部は、初めて聞いた。


シスター・セシリアの喜びようは、天使が舞い降りてきたくらい、喜んで下さった。

男性達がまだ到着してないようで、控え室で、

急きょ、お茶会になった。

神父様は退室され、男性達を待ってくださるようだ。


「あなた方は、東愛大学にストレート合格だけでなく、華子様は医師になって、冬冷家に嫁いだと聞いておりましたよ。

冬冷家は、慶青学院のご出身だから、向こうのチャペルでお式をあげられたと。

百合様は東愛大学の医学部で出会った殿方と、このチャペルでお式を挙げられたのが27年前でしょう?

そのお嬢様が、彩様だなんて。そしてお相手が、華子様のご子息だなんて。これは神がおこしたもうた奇跡ですわ。」


セシリア様の喜びようが、なかなか、収まらない。


「きっと、セシリア様が、引き寄せてくださったのです。」


「私は、彩様が卒業なさった年で、教職を離れて、修道院長をしておりまして、このチャペルの運営責任者なのですが、卒業生のお式だけは、私が担当しておりますの。でもご両家のお母様お2人が聖ソフィアの卒業生って、なかなかありそうで、ありませんから。」


色々なお話をして、懐かしい時は、あっと言う間に過ぎていく。


男性の準備が整ったと連絡がきた。

お義母様とお母様が、チャペルに着席するために退室した。


セシリア様と2人になった。

「彩さまは、感受性が高く、社会に出て大丈夫かと、神様に守護をお祈りしていました。

でも、無事に、白百合のように美しくご成長なさいましたね。」


「セシリア様、ありがとうございます。聖ソフィアの教え通りに努力できたかどうか、、」


「自信をお持ちなさい。彩様を守り続けた方が、今、祭壇の前で待っていらっしゃる方ですね?」


「えっ?」

セシリア様、氷美お兄様をご存知なのかしら?


「彩さま。あなたの美しさを見れば、我が校の校訓、英知と純潔を大切に生きてらした事がわかります。神の愛に等しい愛を持つ方が、あなたを求めて待っています。幸せにおなりなさい。」


「セシリア様、私は、間違えてはいないのですね。」


「彩さま。もちろん、まっすぐに幸せに向かってらっしゃるわ。」


「ありがとうございます。」


セシリア様は、そっと優しく、抱きしめて下さった。

「神のご守護を。振り返らず、一歩をふみだすのです。」


シスターは、この扉まで、ここまでが神の家、と聞いていた。


私はチャペルへの扉を開けて、踏み出した。


すぐそこに、お父様が待っていた。お父様のエスコートで、赤い絨毯を、パイプオルガンと讃美歌に合わせて、ゆっくりと進む。

小さな声で、話すお父様。


「あや、父として、何もしてやれなかった。冬冷家がお前を育ててくれた。感謝してもしきれない。その中で、お前は、聡明で優しく美しく成長してくれた。嬉しい。百合の若い頃に、そっくりで驚いている。」


「お父様、私は、お父様とお母様を尊敬しています。6歳まで、たくさん愛して育てて下さった。それからの愛を、たくさんの病気と闘う人に向けて下さった事は、私の誇りです。慈優家にいても、冬冷家にいても、人の命を大切にする世界である事に変わりはありません。だから、お父様もお母様も、大好きです。今日、ここに来てくださる事も、願ってはいけないと、諦めていましたから。」


「彩の結婚式だよ。この赤い絨毯を歩く役目を、他の人には取られたくないものだよ。」


「では、もっと、ゆっくり歩きたいです。」


「それは難しそうだ。氷美君が待っている。彼は長い長い年月を、待っていたはすだよ。」


「お父様、お父様がお母様を愛してくださって、ありがとうございました。だから今、ここに私がいます。私は、すでに幸せです。」


「彩、幸せでいてくれて、ありがとう。」


赤い絨毯の道がおわり、段がある、

氷美お兄様が、お父様に一礼し、手を差し出した。

お父様が、私の手を、氷美お兄様にわたして、私の背中をそっと押した。

氷美お兄様に手を引かれ、神父様がいる祭壇に向く。


お式はつつがなく進み、指輪の交換も、誓いの署名も、感動して震えながら、すぎていく。


そして「誓いのキス」

氷美お兄様が、ベールをあげる。

今日、冬冷家を出る前にたくさんキスをしてもらっていたけれど、

とても長い時間、会えなかった気がする。

久しぶり?に、目があった。


白いタキシードの氷美お兄様は、あまりにもカッコ良かった。少女マンガの表紙の王子様より、素敵だった。誰が何と言おうが、素敵すぎる。

神様、感謝していますが、こんなイケメンを世に出してはなりません。


お兄様が、瞠目なさり、破顔した。

とろけるような笑顔。これは違反だ。犯罪だ。

こんな笑顔を出したら、卑怯だ。

息ができないくらい、めまいがする。

あぁ、氷美お兄様、

「好きで好きでたまりません」ん?声に出してしまった。

その声をお兄様が、聞き逃さなかったみたい。

私は、お兄様に腰を軽く、の予定が強く、引き寄せられて、

頬に手をそっと当てられた。


お兄様が耳元で囁く。

「あや↓、綺麗だ、妖精になったのか?舞い降りた天使より綺麗だ。」


「私、いつ死んでも、いいくらい、幸せです。」


軽い軽い唇が触れるだけの誓いのキスが、愛情たっぷりのキスになって、幸福感が押し寄せて、息ができない。


「あや↓息をして、そうでないと倒れて異世界だよ。僕を見て。」


思い出したように、息をして、私は生き返った。


神父様の言葉で、結婚式が終わり、参列者をみると、瑠璃ばあに、高見、氷逸お兄様と氷聖お兄様と、彼女?さんが来ていた。

身内ばかりだけど、だから幸せだった。

フラワーシャワーでチャペルの出口まで、氷美お兄様と歩いた。幸せがとにかく押し寄せて、涙腺が緩みっぱなしだ。


その後、エステをしたホテルに戻って、家族だけで、お食事会があった。

氷美お兄様が、せっかくだから、ウェディングドレスのままがいいと言い出して、着替えは、帰ってからする事になった。


お兄様達の彼女さん達は、帰ったみたい。まだ婚約前だと、冬冷家の敷居は高いだろうな。私みたいに、家族と同じ状態が20年なんて、反則だよ、と、さすがに思った。


食事会の話題は、和やかな談笑だ。知らない人が見たら、仲の良い親戚の集まりに見えるだろう。


しかし、もっぱら、異世界転移を止めるための臨床試験の薬をどうするかと、茶葉の分析結果。よく考えなくても全員が研究が好きな医者。みんな同じ大学出身。すごい圧迫感。

今、ここでテロが起きたら、世界的に有名な脳神経外科医の救出が優先になると思う。

冬冷家全員と慈優の親まで揃ったのは初めて。

私だけ、のけものみたいだ。こんなのおかしい。


「あや↓、どうした?何か気になる事が?」

氷美お兄様が、私の気持ちに気がついたのか、心配そうに聞いてくれる。


「い、、あ、、おにい、、い、氷美さん。私、私、私だけ、違うんです。私が、、こんなのダメ、ごめんなさい。」

やってしまった。泣いてしまった。


「あや↓、どうした、泣いていてはわからない。」

氷美お兄様が、手を握ってくれる。


「あや↓、結婚が嫌なのか?僕の何かが辛くなったのか?」

すごい力で体を引き寄せられた。


「氷美お兄様、氷美さん、ごめんなさい。私、私、私では、氷美さんにふさわしくありません。」


周りが固まった。


「氷美、2人にした方がいいか?」お義父さまの声だ。


「いえ、2人の時には、こんな事はなかったので、、今、ここで解決しないと。申し訳ありませんが、しばらく、ここにいてください。」


「僕らはかまわないけど、彩ちゃん、大丈夫か?」

氷逸お兄様の声がしている。


「あや、今は、いつ何が起きるかわからない。意思表示ははっきりしなさい。辛い事も、口にしなくては、わからない。わからないまま、向こうに飛ばされても、僕も、みんなも困る。」


「氷美、さん。」


「何が相応しくないんだ?僕は自分が決めた妻は、君しかいないと言っただろう?」


「でも、ダメです。私、医学部に行かなくては。この輪に入れないんです。冬冷の輪に入れない。医師にならないと、ダメです。私、そうでないと、氷美さんにふさわしくないから。」


周りの気が緩んだのが、わかった。


「あや↓、医学部には行かないと、高一で決めたはずだ。」


「だけど、氷美さんは、医学部です。」


「それは、親父と約束していたからだ。」


「でも、私だけ、仲間はずれです。」 


お義父様が口を開いた。

「彩、彩は、今日、冬冷彩になった。何が仲間外れなんだ?」


「冬冷家は、みな医師です。」


「彩が医師でなくても、氷美の妻であり、私や華子の娘で、氷逸と氷聖の妹だ。」


「それに、研究者として、冬冷の嫁に相応しい聡明さを持ち合わせ、氷美を大事に思ってくれている妹だ。仲間はずれには絶対にしないよ。」

氷逸お兄様が、なぐさめてくれるけど。


「でも、、」


「臨床試験の部分で、生命科学の研究者として、意見を述べてほしい。今は専門家の意見が必要だ。誰でもいい、というわけではない事はわかっているね。」


「あや↓、落ち着いた?」


「はい、、ごめんなさい。」


「せっかくの美人が台無しになる。あやの薄化粧も綺麗だったのに。まあ、泣いた顔も可愛いけど、、、」


「氷美、仲間はずれにしたいのは、彩ちゃんじゃなくて、氷美だな。氷美は彩ちゃんを独り占めしすぎる。」


「氷聖兄さん、それはないだろう?可愛いものは可愛い。独り占めしたいから、妻にしたんだから、みんな、あやに近づかないでほしい。」


みんなが、氷美お兄様の惚気に付き合ってられない、と言う顔をしている。

私も、少し、落ち着いてきた。


「はいはい、、、で、親父、式が済んだら、僕の彼女も先に帰ったんだけど、やっぱり、敷居が高いって、、、」


「氷聖もそうだったのか。親父が、彼女を呼んでも構わないと言ってくれたから、連れてきたけど、やっぱり、冬冷家の敷居が高いと、僕の彼女も帰った。

彩ちゃんでさえ、20年も僕らと一緒にいて、すでに家族なのに、彩ちゃんもさっき疎外感を感じたわけだ。僕からしたら、彩ちゃんが、氷美の妻になっても、妹意識は変わらない。

だけど、外で付き合ってるだけの女性からすると、敷居が高いのは、彩ちゃんが、取り乱して、よく理解した。僕らは、結婚まで、道のりが遠いな。」


「氷逸お兄様、氷聖お兄様、私でよければ、お義姉さんになる方々ですから、一緒にお茶会をしたり、冬冷家の良さをアピールしますから。」


「それはありがたい、彩ちゃんに頼もう。」


「そうだな、義妹が味方になってくれたら、心強い。」


「兄さんたち、そう言う話しは、夫の僕を通してほしい。勝手にあやに話されては困るっ。」


「氷美、ちょっと独占欲が強すぎないか?」


「そんな事はない、あやは僕のあやだから。」


私は、恥ずかしくて、氷美お兄様の袖を引っ張った。


「そうだろう?あやも嫌だろう。」


「氷美さん、あの、嫌ではなくて、冬冷家の一員として、お兄様たちの愛が実るようにお手伝いしたいのです。私は氷美さんの妻ですから、離れませんから、お兄様たちを、そんなに防御しなくても。」


「あや↓あやの心がけは、素晴らしいが、兄さん達は、あやを嫁にしたがってたんだ、だから、僕を通すんだ。わかったね。」


これは、ダメだ、私は溺愛されている事に気がついた。氷美お兄様歴20年、ここは逆らうべからず。


「はい、氷美さんの言う通りです。」

私は、お義父様に、小さく視線を送った。

お義父さまが口を開く。


「そうだな、あやに冬冷家の用を頼む時は、家長である私から、氷美に依頼しよう。

氷美も彩も、疲れただろう。車を回すから、先に新居に戻って、ゆっくりしなさい。氷美、彩を頼む。何かあれば、すぐに連絡しなさい。

私達は、もう少し、転移の対処について、話し合いたい。」


「では、親父、母さん、慈優のお義父さん、お義母さん、兄さんたち、今日は、ありがとうございました。転移の事もあるので、気を緩められませんが、あやを大切にしますので、よろしくお願いします。」


「今日はありがとうございました。」


みんなが、微笑んでくれる。

「さ、あや、帰るぞ。」


「はっ、はい。」

私は、氷美お兄様に連れられ、お義父様の運転手さんつきの車で、新居に帰った。


帰るなり、氷美お兄様に抱き締められた。


「花嫁姿が、可愛すぎる、あやっ↓」


この20年、尊敬し続けてきたストイックで鬼教官だった氷美お兄様は、異世界の溺愛王子と入れ替わったのではないかと、疑いたくなるようなお兄様に変身していた。

向こうに行って、確かめなくては?



結婚式も無事に終わりました。

さて、もう安心、ですね?

読んでいただき、ありがとうございます。

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