エピソード19 ウェディングドレス
女性3人は、お義母様が、ふだんお仕事や会合で移動される時の、運転手さんつきの白い大きな専用車で、聖ソフィアのチャペルに近い、都内の高級ホテルに向かった。
車の中で、私が真ん中で、両端にお義母様とお母様と3人並んで座っている。お義母さまに、お部屋のさまざまな準備へのお礼を伝える。
色々な話をしながら、ホテルに着いた。
エステは最高に心地よかった。眠らないように気をつけていたけど、途中から爆睡し、起こされて焦ったけれど、本気で寝ていたからか、元世界のままで、ほっとした。
エステが済み、全身ピカピカになり、お支度部屋に通された。
そこには、絹のウェディングドレスがトルソーに着せられていた。
「きれい、なんて綺麗なの。」
「お母様のウェディングドレスを、少しお仕立てなおしを、させていただきました。最上のフランス製の絹生地で、保管状態も完璧でございましたので、お嬢様のサイズに合わせて。」
先に着付けを終わったお義母様が着て下さった。
「これは、百合のドレスよ。彩ちゃんのために。ずっと預かっていたのをサイズ直しを。」
「サイズって、、」
「半年前に、うちで人間ドックに入った時に、ついでに測っといてもらったのよ。」
お義母さま、すごいっ。
「お義母さま、ありがとうございます。何から何まで。」
「だって、学位授与式の当日に、氷美が、誕生石のネックレスを渡したって、百合から聞いてびっくりよ。とにかく半年前から、百合と焦って、結婚準備を始めたの。
氷美は言い出したら、絶対に譲らない性格だから、親がしたい準備なんて、必要ないなんて言われたら、彩ちゃんを連れて、日本を飛び出してしまいそうだし、私たちも親だから、してあげたい事もあるし。
百合はね、特に、泣く泣く、彩ちゃんをうちに預けたから。準備してあげたいって。彩ちゃんの成人式の振袖も、百合が張り切って、京都の呉服店にデザインから、準備してくれたのよ。」
「お母様が?」
「そうよ。せめて振袖くらいは、と。
百合は、慈優さんを愛していたから、彩ちゃんを手元で育てたかったはずよ。
長山の診療所を継ぐか継がないかで一番苦しんだのは、彩ちゃんをどうするかだったの。一緒にいて育てたい百合は、決めなきゃいけない時間が限られていたから、だから、別居して、慈優さんとあなたを東京に残して、自分だけ長山に帰ると言い出したの。
さらに、彩ちゃんには、母親が必要だから、離婚するとまで言い出して、、
そしたら、慈優さん、つまり彩ちゃんのお父様が、百合を離すはずがないじゃない。大学では、有名な大恋愛だったんだから。
で、慈優さんは百合と離れたくないと言うし、家族3人で長山に移り住む話に落ちつきかけたんだけど、
それをすると、また彩ちゃんが、、医師になって、将来、また百合と同じ選択を迫られる可能性があると言う話になって、娘に同じ苦しみを味合わせたくないと。
ならば、診療所は継いでも継がなくてもいい事にするために、診療所を病院にして、将来は有望な医師に引き継げば、地域には病院がのこり、彩ちゃんは自由に未来を選べる、と言う計画になったわけ。
その話を聞いて、冬冷も私も、感動してしまって、だったら、彩ちゃんを預かりたいと申し出たの。ただ、私も冬冷の嫁として、医業もあるし、百合みたいには育てられない。息子達と同じようにしか育てられないけど、それでいいなら、と言う話に落ちついたの。
そこからよ、冬冷が、息子3人と一緒に育てるなら、1人くらい、結婚する気になるんじゃないかと、言いだして、慈優さんも、確かに兄弟3人の妹分になると、他の男に目もくれなくなるだろうし、なんて話になって、誰かと結婚させれば、僕らも安心だから、そうしようって。」
私が冬冷家に預けられた理由。
まんまと、氷美お兄様と私は、この親友である親4人の願いを叶えたわけだ。
でも、だからこそ、大切な人と結ばれた。
感謝しなくちゃ。
お母様のウェディングドレスを引き継いで、幸せになれる、と思った。
お母様が、着付けを終えて、来てくれた。
「お母様のウェディングドレス、嬉しい。」
「懐かしいわ。お父様と結婚する時に、あなたのおばあ様が、フランスから取り寄せて下さった生地なの。ベールのレースも全てね。
地元の医師とお見合いしてる最中に、お父様が、東京から、車で駆けつけて、お見合い場所に乗り込んできて、その場で、百合は僕と結婚しますって。
そのお見合い、お断りするつもりで、お父様に言わずに長山に帰って来たのだけど、お父様の勘違いで。それで、その後、私の実家で、両親に結婚の許可を得ていたわ。私がプロポーズされたのは、その後よ。」
「お母様、初めて聞きました。」
「話す時間もなかったものね。私が一番幸せな時に着たウェディングドレスよ。あや、あなたは、氷美さんにとても深く愛されているわ。結婚は、愛されるだけではダメよ。たくさん氷美さんを愛して、共に生きてほしいの。」
「お母様、お母様がお父様と歩まれたように、私も氷美さんと、歩みます。」
お母様と話しているうちに、着付けが終わり、
鏡を見た私は、絶句した。
私、綺麗かも?
このウェディングサロンの人達の技術はすごい。私を、綺麗にしてくれた!
「花嫁さまは、白百合のように、清楚で儚げで、神秘的で美しいですわ。新郎様から贈られた宝石が、また似合ってらっしゃいますね。」
みんなに褒められて、なんか、嬉しい。
氷美お兄様も、綺麗と思ってくれるかな?
お義母さまと、お母様に付き添われて、母校のチャペルに向かった。
母から娘へ引き継ぐウェディングドレス。
読んでいただき、ありがとうございます。




