エピソード18 妻になる
翌朝、私は、お兄様、いえ、氷美さんの腕の中で目が覚めた。
昨夜、私は、、、思い出しただけで、今も心臓がドキドキしてしまう。
ずっと大切だった氷美お兄様。この数年は、お兄様は一人暮らしになり、研究者として尊敬するあまり、研究者としては近いけど、何故だか距離が遠くなっていった。
大学院でも、慈厚会医療グループの三男で独身、と言うのは有名で、背は高い、頭は天才、スキーと水泳の元インカレ選手。
お兄様狙いの女性が常に群がっていた。みんなすごく美人だったりして、バレンタインには、講師室に段ボールが積まれるほどで、その後片付けは私の仕事だった。
どんどん手の届かない人になって、私は6歳の約束まで失念し、一人で諦めモードになっていたみたい。
それが、異世界転移の出来事から、親4人を巻き込んで、昨夜、親に押し切られるように結婚した。
でも、本当は、私が一番、氷美お兄様が好きだった。
左手に収まっている婚約指輪と結婚指輪をみた。首にあるタンザナイトのネックレスとセットになっているのがわかる。
ずっと前から、一緒に準備してくれていたんだ。
お兄様は、この数年、鬼教官みたいだったし、私が片思いになったと、思っていただけだった。
「お兄様、すき、、大好き。もう、遠くにいる知らない人みたいにならないで、、、一番誰よりも、カブトムシよりも、好きだから、私から離れないで、ください。」と、小さな声で言ってみた。
「えっ?」
急に抱きしめられた。
「朝から、離れないでと告白する馬鹿がどこにいる。」
「聞いていたのですか?」
「当たり前だ。あや↓より、先に起きていた。レムかノンレムか確認するためだ。なのに、起き抜けに、誘惑するか?」
「いっ、え、そんなお、お兄様。。」
「また、お兄様か?あやには、3人お兄様がいるぞ。氷逸兄さんか、氷聖兄さんか?他の兄さんの名前を呼ぶのかっ?」
「あっ、ごめんなさい、お、お兄様、、」
お兄様が、片側の眉を上げた。怒る前の仕草。
「ご、ごむんなひゃっ、ひゃ、、」
更に強く抱きしめられて、キスされた。
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内線電話が鳴っている。階下からだ。
ベッドサイドの電話にお兄様がでたみたい、
「少し寝坊してしまって、、、いっいえ、、わかりました、、、、こちらで、お願いします。」
お兄様は、私の口、頬やおでこにいっぱいキスをして、バスローブを羽織って、ダイニングに行った。
ダメだ、氷美お兄様、カッコ良すぎる、今から恋をしてしまいそうだわ。困った。
遠くで、瑠璃ばあの声が聞こえている。
お兄様が戻ってきた。
「さっ、僕の花嫁、ほら、起きてっ、朝ごはん。それから、軽くシャワーにしよう。」
お兄様が、朝食の乗ったトレーを運んでくる。
「お、お兄様、あ、私がしなくては、、、」
立ちあがろうとすると、お兄様の、またキスだ。
「ボストン留学時代に、フランスから留学した友人に教えてもらった。新妻には、食べさせてあげるらしい、ほら。」
お兄様が、スクランブルエッグをフォークにのせて、口元まで持ってくる。食べさせてもらうなんて、恥ずかしすぎる。
かあっ〜〜、また顔が熱くなってきた。
「そんな、急に好きな人の妻になって、妻だから、わかってますが、恥ずかしいし、嬉しいし、離れたくないし、でもそれは、最初から、金輪際、後にも先にも、氷美さんが夫だし、でも、あまりにも、かっこいいし、素敵だし、恋してしまいそうで、、、恥ずかしい、、」
ん?何か、日本語おかしい?
氷美お兄様が、固まった、少しして復旧し、めまいがしそうな顔で笑ってくれた。
「ありがとう、あや。僕もあやを離したくないし、この部屋から、どうにも出たくないけど、3時間後にチャペルで結婚式がある。あやはエステの予約があるから、30分後に、母さんと、慈優の母様と、先にホテルのエステルームに出発だそうだ。そこで花嫁支度をする予定だ。」
「氷美お兄様と、離れるのですか?」
「たぶん、2時間少しくらいだろう。離れても大丈夫なように、昨夜から頑張っている。」
うっ、また顔が赤くなる。
「さっ、とにかく軽く食べておかないと、結婚式まで持たない。貧血で倒れて、向こうの世界に行ったなんて困るからな。ほらっ、あや。あーんして。」
私は諦めて、氷美お兄様に食べさせてもらった。
この人は、決めた事は、絶対に実行する。
私が抗ったところで、お兄様が怯むわけなどないのだ。氷美お兄様歴20年、私は、世界中の誰よりも知っている。
朝食は、瑠璃ばあが準備してくれた慣れた朝食だから、食べやすかった。
しっかり食べて、お兄様の満足そうな笑みをみて、また胸がときめいた。
「どうした?また顔が赤い。」
「い、いえ、研究で、難しい実験が、うまく行ったときみたいな、笑顔だから。」
「うっ、顔に出ているのか?」
「昨夜から、ダダ漏れです。だから逆らえなくて。。」
「あやと結婚するのは20年来の目標だから、僕の研究歴より長いものだからね。
だから、安心して、満足して、良かったと、心底、感謝している。やっぱり、あやと結婚して良かった。」
「えっ?」
「僕の表情が理解できて、それを受け止めて、さりげなく当たり前のように自然に息をするように実行してくれる人間で、しかも女性は、あや↓しかいない。本気で、あやしかいない。
それが心地よくて、ある意味、中毒みたいになる。それが僕にしか適用されないのも、不思議なんだ。だから、離したくなくなる。」
私は、えらく納得してしまった。
「確かに、氷美お兄様にしか、適用できないんです。他の人は、自然に拒否してしまうから、、そう、だから、氷美お兄様でないとダメなんですね。」
氷美お兄様も、昨夜から初の普通の真顔になって頷いている。
「さっ、あと5分で下に行かないと、あの親4人に、勘ぐられる。あやは、エステだから、いつものように、すっぴんで問題ないだろうし。着ていく服は、ドレッシングルームに母さんが用意していると。」
「はい、すぐに着て来ます。」
私は、ドレッシングルームで、お義母様が準備して下さった、アイボリーのとてもラブリーな、私花嫁になるんですっ!、みたいなワンピースを着て、髪をくるっとねじり巻いて、お義母さまセレクトの淡いピンク色のバレッタで留めた。淡いピンク色のバックには、全て必要なものが入っている。
3階のエントランスにある玄関に靴などの収納家具があり、扉を開くと、またまたお義母様セレクトの靴がたくさんあった。冬冷家の嫁として必要な物は、全て準備してくださっている。
副院長として、医師として、ご多忙なのに、瑠璃ばあや、他のお手伝いさんがいても、必ず目を通されるお義母様の姿を見てきたから、感謝の気持ちが何倍にもなる。
3階のエントランスの扉が開いていて、瑠璃ばあが入り口にいる。
バックとお揃いの淡いピンク色の靴が、あれ?、片方しかない。とりあえず、片足を履いて、もう片方を探していると、、着替えた氷美お兄様が来た。
「あや、どうした?」
「あの、靴が、瑠璃ばあ、片方は?」
氷美お兄様が、膝をついて、私に言った。
「さあ、シンデレラ、僕の妻になる人は、この靴が履ける人だ。」
えっ?えっ、何?まさかのシンデレラごっこ?
瑠璃ばあが、めちゃくちゃ笑ってる。
氷美お兄様が、足を持ち上げて、靴を履かせてくれる。もちろん、履けた。
「シンデレラ、君が僕の妻になる姫だ。
さあ、あや姫、次は、結婚式だ。」
そう、昔、氷美お兄様を相手に、スリッパや、運動や、通園靴で、この本館の螺旋階段で、シンデレラごっこを、夕食前に毎日、せがんでいた。当時もうすぐ中学生になるお兄様は、毎回、呆れながら、靴の片方を履かせてくれていた。
氷美お兄様は、吹き出しながら、頬にキスをしてくれた。
お兄様にお姫様抱っこされた。
「そのヒールの高い靴で、階段から落ちて意識を飛ばされては困る。」
氷美お兄様にお姫様抱っこのまま、螺旋階段を2階まで運ばれて、2階で待っていた、両親4人の前で下ろしてもらった。
冬冷のお義父様が、苦笑しながら言う。
「彩のシンデレラごっこは、冬冷家の夕食前の毎日の儀式だったな。今日で見納めだ。はっはっ。それで氷美王子は、守備よく、プリンセスを妻にできたのか。」
「はい、もう誰にも奪えません。」
「では、さっさと結婚式を。婚姻届は、今日朝一番で、貴山弁護士が提出し、受理確認書も、もらってきてくれた。結婚は成立している。
彩は、戸籍では、冬冷彩になっているから、間違えないように。」
すごい、もう冬冷彩になったんだ。私は小さく頷いた。
「ではブリンセスあや、美しい妃になるため、結婚式の前に、私達女性は、エステに、参りましょう。」
お義母様も、シンデレラごっこを見せられた被害者だから、笑っている。
「あっ、あや↓、結婚指輪を、預かるの忘れてた。」
氷美お兄様が、私の左手薬指から、マリッジリングだけ、外してくれた。
「またあとでな。」
たぶん、無意識かも、しれないけれど、氷美お兄様が、私の頬をサラリと撫でて、3階に戻って行った。
「まあっ」
お母様と、お義母様が、薄く笑っていた。
冬冷彩になりました。もう少し、元世界にいます。読んでいただき、ありがとうございます。




