里の族長2
「条件……ふむ、言ってみなさい。」
「私はイザさんに着いていき世界を見て回りたいと思っています。その間はエルロッドさんが族長代理をしてくれませんか?」
全員驚いた。
「え?俺についてくるの?文無しで自分のこともわからないこんな竜族に?」
「はい♪」
「当分の間はお金の心配は要りませんよ。ウィルヘイム様が残していたものはシア様とイザさんに全て渡そうと思っています。里のものも同意してくれています。シア様の希望には出来る限り応えたいと思っています。しかしルーシア様の血を引いても居ない私に族長代理が務まるか……」
「(文無し生活とおさらばできるー!!)でもいいのか?」
「結構です。ウィルヘイムが残したものは里のために使ってください。」
(えー!!断っちゃったよ…でもまぁこれからの里のことを想ったらもらうのは悪いか。)
「……シアの言う通り。里のために使うべきだと俺も思う。」
(うううう…お金……結局貧乏生活は続くのか…)
「血に拘らず改革をすすめるなら何の問題があるんですか?エルロッドさんなら里をいい方向へ導いてくれると私は信じています。私のわがままで振り回してすみません。もっと世界を見てみたいんです!それに……」
「わかりました。シア様が変えられるその日まで、私がエルフの里を今よりももっと良い里へと導いて見せます。里を出て世界を回ると言うのでしたら、私からも一つだけ条件を出してもよろしいですか?」
「はい?」
「実はウィルヘイム様が残した資料を見ていると指輪をもらった相手のことが書かれていた日誌を見つけたんです。日誌によるとその者は純白のコートにフードを被った年老いた男だったそうです。」
「まさかそいつを見つけ出してほしいっていうんじゃ…」
「そのまさかです。見つけ出すとまでは行かずとも情報を探ってほしいのです。」
「でもエルフみたいな長寿な種族ならまだしも100年以上前に出会った年老いた男なんて今も生きているかどうかさえ怪しいんじゃ…」
イザは不安な顔をした。
「それがそうでもなさそうなのです。」
「どういうことですか!?」
シアは驚いた。
「日誌にはこう続けられていました。その男は去り際に『今度こそ……』と呟き白い羽と共に消えていったと。」
「白い羽…有翼人族か神族ですね。」
ウルマがつぶやいた。
「その通りです。有翼人族ならスヴァルトアルフヘイム、神族ならアスガルズかヴァナヘイム。どちらにせよアルヴヘイムに居ること自体不自然ですし、もし神族なら今もまだ生きている可能性もあります。」
「有翼人族は多少はこのアルフヘイムとも交流はありますがこのアジーウッドの森にまで入ってくるものなど居るかどうか…。神族に至ってはアルフヘイムでは1000年以上もの間、訪れたという記録もなく見たものも居ないはずですし、寿命は数千年と言われています。」
長老が言った。
「そもそも宝玉の力があった中で神族や有翼人族が入ってこれるものなのか?」
「有翼人族は入ってもさほど影響はないでしょうが、神族や竜族は宝玉がある所には決して近づかないと言われていますね。」
エルロッドがイザを見ながら言った。
全員イザを見た。
「えーっと…。俺竜族だけど宝玉の力とかなんか関係ないみたいだからよくわかんないや…あはは……」
「イザさんみたいな特別な力をもった神族って可能性もあるのね。わかった。私の母の命を奪い私を苦しめ、ウィルヘイムをあのように変えてしまう切っ掛けになった指輪です。元の持ち主必ず探し出して見せます。」
「よろしくおねがいします。シア様がお戻りになるまで里は私たちが必ず守っていきます。」
「狼牙族も協力します。メリル殿はホビット族に顔が効くようですし、ドワーフ族とホビット族の協力も仰げるかと思います。ヒュム族は――問題なさそうですね。」
霊廟にいた4人はシアの方を見て親ばか剣士を頭に浮かべて顔を合わせた。
「?」
長老が不思議な顔をしている。
「では族長の件も話がまとまったようだし、俺らはアルセンテスに向かうか!」
「エルロッドさん改めて里のことをよろしくお願いします。私のわがままを許してくれてありがとうございます。」
シアはエルロッドに深く頭を下げた。
「顔をあげてください。礼を言うのは私の方です。いままで里のものと同じく血に拘るエルフの慣習に妄執していました。その私の目を覚ましてくれたのは貴方です。いまはこの力を森のすべての者のために使うと誓います。ウィルヘイム様を狂わせた……指輪をもたらした者の調査の方はよろしくお願いします。」
エルロッドは頭を下げシアに敬意をしめしながら言う。
「んじゃいこうか。」
「はい!では行ってきます。」
「イザさん、ウルマさん、シア様をよろしくおねがいします。」
エルロッドと長老、里の民に見送られながら3人は里をあとにしてアルセンテスに向かった。
――森を抜けると街道に入った。
アルセンテスに近づくと、馬車や武具を付けた人がところどころに見受けられるようになってきた。
「イザさん!見えてきましたよ。あれがアルセンテスの入り口です。」
シアが走っていった。
「へー!街の向こう側は海か、結構きれいでいい街だな。エルフの里やメリルの小屋しか見てないから小さな街をイメージしていたけど結構でかいんだな。」
「ヒュム族は短命で魔力にも乏しく非力な分、繁殖力と結束力、適応力が高い種族ですしね。」
「ウルマさん??街の中ではそんなこと口に出さないでね……?」
「私は何か変なことを言いましたか??」
二人は苦笑いをした。




