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11話 予選通過者




 予選を戦うカケルは偉そうなシュウたち4人に勝負を挑まれていた。そこへダイゴロウもやってきて、1対2に分かれての戦いになる。

 カケルを早々に倒してダイゴロウを4人で倒そうと考えたシュウだったが、思いのほかうまくいかず、ターコ同士を合体させる秘策にでた。

 しかし、速度や当たりの強さなど機体は別格なスペックだったが、操縦者の死角と連携の隙をついてカケルは2本の糸を切ったのである。


 決着がつき俯くシュウ。ガタイはそんな彼の様子を伺ったり、オロオロとしながらもターコを操縦して自分たちのもとへと運んできている。1人が操作していなくても墜落はしないようで、片方が沈んで拙い動きではあるが何とか移動はできるようだ。


「僕が……負けた? あんな名前も知らないバカそうな奴に?」


 シュウが顔を上げた視線の先には、遠くで勝利を喜びガッツポーズしているカケルの姿。身体を震わせ何も持っていない片手を強く握りしめる。


「くそっ、僕のターコなら負けなかったっ、勝てたのにっ。クソっ、クソっ」

「し、シュウくん……」


 何度も地面を強く踏みつけるシュウに、ガタイは掛ける言葉もみつからずただ隣で佇むだけ。

 そんな彼らに近づくのは勝者であるカケル。当然ながら満面の笑みを浮かべていて、その表情を見ただけでシュウは苛立ちを覚える。敗者を嘲笑っていると思ったからだ。


「おっ、自分専用のターコ持ってるのか。じゃあまた今度やろうぜっ」


 だが、カケルはそう言ってさらに笑みを深めた。純粋に楽しそうに。

 一瞬、何を言ってるのか分からず、シュウはポカンとした表情を浮かべた。自分なら絶対に言わない、予想もしない言葉を聞いたからだ。


 そこにいつの間にか子分2人を倒したダイゴロウもやってくる。


「負けた時に言い訳するようじゃ、そんなもんだってことだ」

「なんだと……」

「喧嘩吹っ掛けられて何もしないってのもつまらねぇな。テメェの相棒との勝負、俺に挑んでもいいんだぜ? また負けるだろうがな」


 こちらの笑みは自信と不敵なものだ。

 シュウは奥歯を強く噛みしめると、握りすぎて白くなった拳を解いて2人を強く指さす。


「ちっ、次は、次こそは僕が勝つ。僕は霞田だ、霞田シュウだ、覚えていろっ」


 そう言って分離した自分のターコを拾い上げると、子分たちを引き連れてフィールドから出て行くのだった。

 後に残されたのは彼らを見送るカケルとダイゴロウ。


 そして一陣の風が両者の間に吹く。


「さて、と」


 カケルの方へと振り向くダイゴロウからは、隠しきれないほどの闘志が漲っている。

 必然、1つの勝負が終わり気を落ち着けていたカケルも表情を引き締める。だが、自然と唇が弧を描く。


「見逃す理由はねぇよな」

「当然っ、こっちこそ」


 2人は離れて対峙する。

 ダイゴロウと以前戦った時は横並びだったが、こうして正面から対峙するとその威、その圧の強さを実感した。離れたはずなのに身体もより大きく見え、容赦なく睨みつける眼差しは気の弱いガタイだったら卒倒していたかもしれない。

 カケルが走り回ることでフィールド戦を得意とするように、ダイゴロウも別の意味で戦いやすいのだった。本人は意図してないかもしれないが。


 そしてダイゴロウは愛機アーバンを左右に揺らして待ち受ける。

 カケルも彼を中心にぐるぐると歩いて回り様子を伺うが、一向に隙が見当たらない。


 隙がないなら作るまで、カケルがいざ飛び込もうとしたその時だった。


『第2会場、予選終了ーーーー』


 大きなブザー音と共にタコさんアナの声が響いたのだ。2人ともハタと顔を上げて、空に映し出されていた時計のある場所に視線を送る。

 するとそこには時間の代わりに『予選通過者4名確定』の文字が出ていた。この会場の残り人数が4人になったのだ。


「命拾いしたな」

「へん、そっちこそ」


 2人して声を出すことなく笑いあう。

 これからというところで中断になったこともそうだが、決勝に楽しみが残ったという複雑な笑みだった。


 そして先に動いたのはダイゴロウ。カケルに背を向けてフィールドから出るために歩き出す。

 向かう出入り口は一緒だが、一緒に行動するつもりのないカケルは時間をずらすために軽く辺りを見回した。予選でいろんな選手と戦ったフィールド、駆け巡ったフィールドである。


「よし、行くか」


 視線を外に向ければ、家族や仲間が最前列で手を振ってくれていた。

 カケルは笑顔で手を振り返し、試合終了後のチェックを済ませて彼らの元へと駆け寄る。


「カケル、おめでとうっ」

「決勝進出すごいね」


 子供組みがワイワイと盛り上がり、その様子を大人組みは微笑ましく見ている。

 そして大人達も加えてしばらく盛り上がったあと、カケルは思い出したように辺りを見回し、もう1つの予選会場の様子を尋ねた。


「リョウマはどうだった?」

「凄かったわよー、リョウマくん」

「安定感っていうのかな、危なげなく立ち回って、こっちよりも早く決勝進出を決めたよ」

「よーしっ、やっぱりねー。これで2人とも予選は通ったわけか」


 勝ち進むと信じていただろうが、カケルは報告を聞いて零れる笑みが抑えられないようで、自然と頬を緩ませていた。

 そしてまだ決勝開始まで時間はあるが、リョウマと会えるかもしれないので中央会場へと向かう。そのついでに出店でジュースとチョコバナナを買っておく。バナナは栄養補給にいいと聞いたからで、決して食べたいからという理由ではないらしい。




 開会式の時に客が入っていた場所は、決勝で戦うフィールドとなる。なので既に一般人は立ち入れないようになっていて、早い人は客席で食べ物などを用意し、舞台のタコさんアナや大型画面を見て時間を潰していた。

 そちらでは第3、4会場で行われてる中高生の部の実況中。大型の映像画面には彼らの予選の様子が映し出されている。


 それを横目にカケルたちは客席前の通路を歩く。

 この会場には大小いくつもの画面が用意されてあり、そこには試合会場などいろんな場面が映し出されていた。

 その中の1つ、大型テレビくらいの野外では小さな画面に、小学生の部の決勝進出者の名前が表示されているのだ。


「おー、リョウマっ」

「予選通過おめでとう、カケル」

「お前こそ」


 目的地にやってくれば、画面を背に記念写真を撮っているリョウマがいた。

 カケルが駆け寄り2人はハイタッチを交わし、カケルも記念撮影を終わらせる。


「こっちは面白い奴とかいたけど、そっちはどうだった?」

「通過した人とはやり合ってないけど、みんな強かったよ。UFOみたいな円盤型のターコがいて――」


 互いに戦った人や印象に残ったターコのことなどを話していく。

 やはり大きな規模の大会だと自作した機体も多く、面白いターコが多いようだ。そこに解説役にハジメ博士と盛り上げ役としてレンの父親も加わった。


 そうやって盛り上がる彼らに話しかける声。


「すみません」


 澄んだ声色で話しかけてきたのは、柔らかそうな癖っ毛の黒髪に薄い青色の瞳を持つ少年。目はパッチリと大きく彫りはやや深めで鼻高な褐色肌、外国の子か血が混じってるのは一目瞭然だった。

 そして彼の隣には妹だろう、褐色の肌や薄い青色の瞳は同じで、髪の色も黒だがこちらは柔らかそうなストレートのセミロング。


 何かと振り向けば少年がスマホを片手に、申し訳なさそうに画面を指さした。


「写真を撮りたいんですけど」

「あ、ごめんなさい」


 話し込んでいたのは予選通過者の映し出された画面の前。記念写真を撮るのには邪魔だろう。

 ハジメ博士に促されカケルたちはその場を離れる。とは言っても別の場所に移動したのではなく、横に避けて2人の様子を見ているのだった。

 チラリと画面に視線を送れば、第1会場の通過者に見慣れない呼び方の名前が見える。


不知火しらぬい、ネヒル」

「うん」


 写真を撮っていたのは兄、ピースサインをして返事をしたのは妹だった。

 そしてパシャパシャと何枚か撮ってカケルたちに話しかけてくる。


「はじめまして中学2年の『不知火 サヤン』です。そしてこっちが妹の……」

「……ネヒルです。小4」


 ネヒルはこの年齢にして可愛いよりも綺麗といえる顔立ちだが、キリリとしているはずの目が眠そうというかボーっとしていて、アンバランスに見える。対して兄のサヤンは見た目通り、口調も丁寧で礼儀正しく爽やかな印象だ。


「あ、私たちの1つ下だ。ネヒルちゃんって呼んでいい?」


 少女はこっくりと無言で頷く。

 ターコイズファイトの女性人口は多く、男女混合の試合でも活躍している人もいるが、この予選通過者で女性選手はネヒルだけだった。


 フタバも同い年くらいの女子と話したかったのか、真っ先に近付いて積極的に話しかけている。


「サヤンは大会出てないのか?」

「サヤンさん、だろ。年上だぞ」

「ううん、別に気にしなくていいよ。それで大会だっけ、僕は出てないかな。まあネヒルのターコを調整するスタッフとして参加してるとは言えるかもね」


 気にした様子もなく笑って済ませたサヤンは、身体を傾けて彼の背負うリュックを見せた。どうやら操縦者の妹、メカニックの兄と役割を分けているようだ。

 そして、自己紹介し決勝進出者同士ということもあり、そのまま話し込むことに。


「リョウマはネヒルと戦った?」

「いや反対方向だったのかな、会ってすらいないよ」

「僕は客席で見てたけど、リョウマ君と会わなくて良かったよ。もしかしたら負けてたかもしれないし」


 それは謙遜というものだろうが、実際に戦ってるネヒルは不愉快そうに兄の耳を引っ張る。ただ本気ではないからか、サヤンもそちらに頭を傾けながら「ごめんごめん」と笑う余裕はあるようだ。


 そんな他愛無い話しをしている間に中高生の部も予選が終わり、壇上に上がったスタッフとタコさんアナが話し合って何事かを確認し終える。


『それじゃあ小学生の部、決勝トーナメント組み合わせを発表する前に、軽くフィールドの説明からしておくぞぉ。決勝トーナメントはこの中央会場を2つに区切って2試合同時に行われる。僕がいるステージから見て手前半分が第1会場予選通過のA組、奥半分が第2会場のB組だ』


 フィールドの中央には赤いポールで区切られている。それでも元が学校グラウンドぐらいの大きさはあるので、半分でも十分な広さだろう。

 そして、タコさんアナの後ろにある大型画面に決勝の組み合わせが表示された。



 1試合A組 飛天リョウマ  vs 日比野コウスケ

 1試合B組 大空カケル   vs 菊池ケン

 2試合A組 不知火ネヒル  vs 一ノ瀬シンジ

 2試合B組 鬼頭ダイゴロウ vs 牧野タロウ



 カケルは自分の対戦相手の名前を見て周囲を見回し探すが、顔も知らない相手だ、見つかることはなかった。

 ただし横を見ればA組に参加するリョウマとネヒルがいる。まだ第1試合のことしか考えてないだろうが、それでも近くにいれば意識してしまうものなのか、目を合わせて軽くお辞儀をしている。


 組み合わせも発表されたことで、カケルは再び緊張感を高め気合いを入れ直すのだった。






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