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村娘は生きる為に必死です。  作者: お魚お肉お野菜協会
第一章 村での暮らし
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君の名は

 


 レンの足音が遠ざかってから、テンはすぐにお腹に手を当てた。


 息を浅く吐いて、痛みの波が一度引くのを待ってから、ゆっくりと手を動かしていく。


 胃のあたりは……多分大丈夫。


 少し上も痛くない。

 左もふつう。

 呼吸を整えて、さらに下へと進む。


 ――右側。みぞおちの少し下のあたりに、引っかかるような違和感。


 テンは指先に意識を集中させて、ゆっくりと指の腹を押し込む。その瞬間、息が止まった。さっきまでとは比べものにならない鋭い痛みが突き刺さる。反射的に体が跳ねて、目から涙がこぼれた。


 そこは、ぐっと押したときに強く痛んで、指を離したあとも、ドクン、ドクンと心臓に合わせて痛みが残っている。


 ……これ。


「虫垂、炎?」


 言葉が、自然と浮かぶ。


 吐き気。発汗。局所的な圧痛。じわじわと強くなる痛み。

 整合するたびに周りの音が遠くなっていく。そんなの、ありえない。だってこれは――。


「……手術が必要な」


 テンの喉がひゅっと鳴る。手術なんて、この村にあるのか? それ以前に、このまま悪化したら。


 テンは汗を吸って重くなった布団を強く握りしめた。無意識に腹に当てていた手を、はっとして離す。


 温めるのは、逆効果。


 鼻から息を吸って、それでも足りなくて口を開けて息を大きく吸い込んで、そしてまた大きく吐き出した。


 父さんか母さんを呼ぼうか。

 ……だめだ、戻るのは明日。それに延びることもある。それなら。


「……バル婆」


 テンは唇を噛む。祖母に“虫垂炎”なんて言葉が伝わるのか。そもそも、病気に名前があるって発想自体が、この村にあるのかどうか。


 痛みがまた波みたいに押し寄せる。目を開く。天井が揺れる。それでも、痛みは消えない。


 テンは天井の藁をじっと見ていた。



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