009 食物連鎖の頂点に立つもの
しばらく川沿いを歩いているとパールがピタリ、と止まり、川の向こう側をジッと見つめた。
何だろう?と私も見ると、草の間から大きなジャガーがゆっくりと姿を現した。
私の知っているジャガーより大きなジャガーが、パールから私に視線を移してきて目が合った。
距離はあるのに息も出来ないくらい動けなくなった時、パールがフェンリルに戻り一吠えした。
ジャガーは数秒こちらを見ていたが、川に入り上流に向かって泳ぎだし、ネコ科とは思えないくらいにスイスイ泳いでいった。
「怖かった。ジャガーってあんなに泳げるのね......。あれ魔獣よね?普通の獣とは違うのが私にもわかった」
パール「あれはこの地一帯の食物連鎖の頂点に立つもので、他の魔獣に比べても知性が高いようだ」
マイナスイオンを浴びているような気持ちの良い空気の中、歩いていると木の実を見つけた。
見た目はりんごだけど私が知っているりんごの倍近く大きくて色が赤というより濃いピンク。
毒りんご?
「パール、あの木の実はりんごかな??」
パール「甘い匂いがする」
「パールは神獣だから毒があっても大丈夫そうだよね。人は食べていいのかな?」
パール「鑑定を使ってみるといい」
鑑定するイメージをすればいいのかな。
【名称】桃りんご(食:可)
【レア度】大
【特徴】熱を加えると糖度が増す
良かった。食べられるみたい。
気になるのは日本語では書いていないのに自然に理解できるのが不思議でパールに聞くと、話す言葉も普通に話せば通じるようになっていると聞き一安心。
ジャンプしてみると驚くほど高く跳べてビックリした。
妖精効果?
でも実までは届かない。
パール「美月、ちょっと下がっていて」
木に近寄りクルッとこっちに振り向きながらドン!と、両後ろ足で幹を蹴ると、一気に10個くらい落ちてきて焦ったけれど、パールが風魔法でフワリフワリとゆっくり降下させながら、雑草の上に優しく落としてくれた。
ハンカチで拭いて食べてみると、普通のりんごより柔らかく、りんごとは思えないくらい甘い。
食感と味がりんごと桃の中間。
パールは一気に8個くらい食べてるから、コピーを50個くらいしておこう。
こんなに甘いのに熱を加えるともっと甘くなるなんてすごい。
アップルパイを砂糖無しでも作れそうだし、ドライフルーツにしても美味しそう。
その後も歩きながら魔法の使い方を教えてもらいながら移動して、きのこもたくさん見つけて、鑑定で毒が無ければインベントリへ収納していく。
きのこは毒が怖いから、鑑定ってすごく便利でありがたい。
アロエのような見た目だけど色が黄色の草を見つけたので、鑑定してみる。
【名称】アーロエ(食:可)
【レア度】小
【特徴】熱を加えると物質を硬化させる成分がある。
炎症を抑える効果や皮膚や腸内環境を整える効果もある。
硬化?と思いナイフで切ってみると私の知っているアロエの果肉はなく、スライム状の中身だけで傾けるとゆっくりと流れ落ちる液状だった。
熱を加えるとこのスライム状が果肉のようになるのか、噛めないくらい硬くなるのかは不明。
見た目が似ているだけで全く違う物が複数あるのかもしれない。
これは薬にもできそうだからインベントリへ。
薬草なんて全く分からないから、それっぽい草を見かける度に鑑定していき収納していく。
色々な種類があるのでコピーは後で落ち着いてからしよう。
大アリクイや、大きな飛ばない鳥など沢山の獣に出会ったが、パールが瞬殺していく。
それをインベントリへ入れながら、歩いても歩いても森。
小さな川や沼地も所々あり、道という道はなく獣道ばかりだけれど、健康な体にしてくれたからか、疲れはそれほど感じないのでありがたい。
魔法を教わると言っても、パールは主に風魔法と少し水魔法が使える。
風属性はこんな事、土だとあんな事が出来る、などと属性の大まかな説明はしてくれるけれど、どう使うか、は感覚で使っている感覚派の様で使いたいと思えば使えるはず、と、天才派らしく教えるのは苦手らしい。
とにかくイメージが出来れば使えるのね、とポジティブに捉え試行錯誤して練習する。
防御系を優先して頑張る。
結界は張れたけれど、パールレベルなら今の結界を壊せるという。
パールレベルなんて魔獣でもそうそういないだろうから、一般的なレベルが知りたいところ。
結界は私の魔法しか通さないのと、パールを結界内に入れてしまうと感知が鈍るようなのでギリギリ私を覆う大きさの結界を意識する。
私の魔法しか通さないといっても、相手のレベルによっては壊されて通すし、物理的な強さでもレベルによっては壊れるというので、頑張って自分のレベルを上げなければいけない。
☆☆☆☆☆☆☆
『ジャガー』
アメリカ大陸最大のネコ科動物で北アメリカ大陸南部、南アメリカ大陸に分布している。
ジャガーの生息密度が世界で最も高い場所がパンタナールであり、ジャガーはパンタナールの生態系の頂点に君臨し、他の生物の個体数をコントロールする役割を担っている。
他の地域のジャガーに比べてパンタナールのジャガーは約1.5倍大きく、泳ぎが得意で川を渡ったり、水中からワニやカピバラを狩ったりして強力な顎で噛み砕く力を持っていて、ブラジルの50レアル紙幣にはジャガーが描かれている。
ウルグアイとエルサルバドルでは絶滅していて国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは「準絶滅危惧(NT)」に分類。




