008 魔法使いの服
次の日は服装の準備。
今は半袖シャツ、ショートパンツとスニーカーで、インベントリを確認してみると、家に置いてあった服と見覚えのない服も何着か入っていた。
いかにも異世界、という感じではなく、スカートやシャツ、ワンピースは地球の服でも似ているものがあるから、元々持っていた服もこちらの世界で使えそう。
クリーム色のシャツにハイウエストの紺のキュロットスカート。
森の中で採取もするし素肌の露出はあまり良くないと思い、ニーハイソックスやスパッツを探す。
防刃生地で探すと種類が豊富にあって、足用だけではなく、採取の時に良さそうなアームカバーや革手袋も購入。
小さなポシェットが付いた革ベルトとロングローブ。
用意されていた3枚のローブは色や生地の質感も良く、縁などに刺繍がしてあってかわいい。
時間に余裕ができたら生地を買って服を作りたいな。
ミドル丈のブーツを履いて完成。
園芸用ナイフやはさみ、スコップ、袋なども買って準備はできたので、明日からは森を移動しようと早めの就寝。
下のソファをどかしてシングルベッドを置こうと思っていたけれど、ベッドを買うお金がもったいないし、ロフトで寝るのは楽しいのでソファはそのままに。
翌朝は早起きしたので少し薄暗い明かりの中、採取や散策をしながら歩いていく。
「パール、近くに街あるかな?人が多くいそうなところ」
「転移させるのに大量の魔力が必要で、魔素が豊富な森の奥深くになってしまったから街まではかなり離れてるはずだ。どこが街かはわからない。ただ川沿いをたどって行けば、いずれ人の営む地域があるはずだ」
キャンプしながら探しつつ川を進む。
以前の私の性格なら不安を強く感じそうだから不思議な感覚だけれど、ルーツが妖精になったから?なのか、ネットショップで買い物が出来るのと食べ物にも困らない事、なによりパールがいるから安心して自然豊かな森の中も心地よく感じ、キャンプしながら旅をする想像をするだけでワクワクした気持ちになり楽しい。
ふとスマホを思い出し取り出して見てみる。
地図アプリがあった事を思い出し開いてみると、地図が展開され緑の森や川ばかりなので広域にしてみると街らしき箇所を見つけた。
でも、そこを目的地にしようとしてもできない。
森の中で道という道が無いからルート案内出来ないというよりも、機能のアイコン等が表示されてないので、この世界だと地図として見る事しかできないのかもしれない。
「大体の方向で行くしかないよね。よし、じゃあ街を目指して移動しよう」
この世界にある大陸の中で一番大きな森で、普通の森よりもかなり魔素が多く発生する深い森。
地図にはハンタナルと記されている。
歩きながらパールに魔素や魔力について詳しく話を聞いてみた。
魔素を多く取り込んだ獣が魔獣になり、種別が同じ獣で同じ場所で行動していても、生まれ持った魔素を貯める器が小さければ魔獣にはならなかったり、なっても器の大きさによって強さは変わり、その器が魔石といわれていて、魔道具などに使うエネルギーとして利用し使い切っても無限にではないが、魔力を貯めて電池みたいに使えるという。
どんなに小さい獣でも器はあるので魔石はとれるけれど、小さすぎる魔石は価値が殆ど無い。
魔石はおでこの裏側、脳の近く、前頭葉の付近にあるという。
魔獣になると知性が高くなり知恵が働き、普通の獣に比べ狩る難易度は高くなるが、その分、質の良い魔石も採れるし、肉も上質。
食べられない牙や爪、血なども武器や防具、薬に使えたりして、普通の獣に比べて素材として捨てる部位は無いくらい希少なので高く売れるらしい。
人間は魔石ではなく全身で魔力を保持している。
体の大きさは関係なく、全身にくまなく魔力を巡らせられる程、魔力量が多い。
ファンタジーの話に魔力を使い切ると死んでしまう、というのがあるけれど、この世界では魔力で生命を維持しているのではないので、使い切っても死ぬ事はほぼ無いが、エネルギーみたいな物なので全て使い尽くすような魔法を使用すると、意識が薄れたり身体に負担はかかる。
魔の森でなくても魔素は自然界にあるものなので、他の森でも魔獣がいる事も普通にあるけれど、この森はこの世界で一番魔素が強い森で魔獣は多い。
普通の獣でも怖いのに魔獣になんて会いたくないし、パールがいなかったら1日と持たないだろう。
警戒心の強い獣はパールに気がつくと素早く逃げる。
パールなら逃げる獣にすぐ追いつくけれど、私から極力離れないようにしてくれる。
しばらく川沿いを歩いていると川の向こう岸にカピバラがいた。私の知っている大きさよりひと周りは大きいサイズ。
近くに更に大きなワニがいたのでカピバラが捕食されてしまうかも?とドキドキしているとワニが川に入りだすと、カピバラがサッとワニの上に乗ったのだ。
水中をユラユラと泳ぐワニの上で日向ぼっこしているようなカピバラ。
弱肉強食の世界を上手く生きているカピバラに笑ってしまった。
☆☆☆☆☆☆☆
『パンタナール』
パンタナールとはポルトガル語で「大湿地」
ブラジル、ボリビア、パラグアイ、3国にまたがる世界最大の熱帯性湿地。
敷地(日本本州と同じくらいの面積)のうち8割がブラジル側にあり、雨季になると8割が水没し、その際に肥沃な土壌が湿地全体に堆積され乾季には草原になるが湖や沼、水溜りはたくさんあり、南米で最も野生動物が集中している地域と言われていて、約1,000種の鳥類、約400種の魚類、約300種の哺乳類、480種の爬虫類など豊かな生態系が形成されている土地。
パンタナールの中でもブラジル南西部の一部(パンタナール全体の約1割)が【パンタナール自然保護地域】として世界遺産に登録されている。(2000年)




