089 日出づる場所
食堂を出て近くの市場へ行くと、観光客は多いのに大型従魔を全く見かけないので珍しいのか、みんな私達を見ている。
コハクと私がせわしなく店から店へ動いて魚を買う勢いに、2人は笑っている。
鑑定しながら魚や貝を買いまくり、伊勢海老よりも一回り大きな海老もあり、日本米に近い米の店もあったので嬉しい。
試食みたいな事もさせてもらい、あっという間に夕方になっていた。
アビー「くくく。ミツキ凄い勢いだったね。楽しかった?」
「うん!すごいたくさん買えてうれしい!ありがとう」
アイク「かわいいな」
2人にキスをされ、周りからめちゃくちゃ見られている。
でも当たり前になっているのと嬉しいのとで、私もそんなに恥ずかしくなくなってきているけれど。
市場や集落から少し離れ、海の見えるところにコテージをだそうと移動すると海の中に大、小の岩があり綱に繋がれていて、少し距離はあるけれど陸地には祠が見えた。
こっちの世界で鳥居と祠をみるとは思わなかった。
「鳥居と祠?」
アイク「ん?トリイ?ホコラ?」
「私がいた国の神様を祀る祠と神域を守る入り口でもある鳥居に似てて。こちらでいう教会ね」
アビー「渡り人が作ったのかもな。行ってみるか?」
渡り人は金髪碧眼と聞いたから同じ世界だとしても外国の人だと思ってた。
日本を知っている人か日本生まれ、ハーフとかなのかな?
それとも、もっと前に渡って来た人かもしれない。
祠の両扉の左右に分かれ格子と星の刻印がされていた。
アビー「簡易的な魔法陣か?」
「あれはドーマン(格子柄)、セイマン(星形)と呼ばれていて、海女さんがいるのかしら?海で仕事をする人達の魔除けや願掛けのしるしだと思う」
お参りをした後はコテージを出して、テラスでバーベキューをしながら海を見ていると、しめ縄で結ばれた2つの岩の先にある太陽が海に沈んでいき、空が赤く染まる。
いつか見た事のある景色に凄く似ていて、懐かしさが込み上げる。
ウッドデッキの端まで移動して眺めていると、2人が左右から寄り添ってくれた。
「綺麗で、すごく懐かしさも感じる」
「「ああ、キレイだな」」
「昔、旅行先で両親と見た景色に似てる。日の出も見ようって言ってたのに、私が起きられなくて見られなかったの」
「「明日、一緒に見よう」」
夕飯が終わりお酒を少し飲みながら、岩の先に浮かぶ月の光が照らされている海を見てクリーンはしたけれど、潮風に当たったのでお風呂に入りたくなってしまった。
2匹はもちろん風呂は嫌がり、2台に増えたハンギングチェアでユラユラと寛いでいる。
ネットで期間限定セールになっていた高級トリートメントを買ったので、試してみる。
私が2人の髪をいじっているとき、2人は私の体を洗いつつ、そのまま愛されタイムに流れてしまい、疲れ果てて熟睡してしまったけれど、日の出を見るために2人は起こしてくれた。
太陽が水平線から昇り始めると、空は水平線から上にオレンジ色、黄色、紫色、紺色などのグラデーションに染まる。
海面には太陽の光が道のように1本、鳥居を潜りながらこちらに伸びてきていて、神が通る道のように見えた。
太陽が昇りきって少し時間が経つと、スカイブルーの空に変化して忘れられない景色になった。
「ありがとう、起こしてくれて。すごく綺麗ね」
「「綺麗だな」」
景色よりも美月を見つめる2人。
パール、コハク、アイス、ウインドは砂浜を走って散歩していたので呼び戻し、外で朝ごはんを食べよう。
あんなに天気は良かったのにご飯を食べ終わる頃に雨雲が少し遠くに見えたので今日は室内作業。
オールインワン作成後に空き時間を使い少しずつ進めていたハンドクリーム、ヘアオイル作り。
クリーンが当たり前の世界なので、お風呂は富裕層や貴族の贅沢な趣味でシャンプー、トリートメントは平民に需要は無い。
漁師や市場、食堂の女将さんたちは常に長時間、水や海水を扱っているからか、手が荒れているように見えたのでハンドクリーム、海で塩風に当たると髪は軋むので、ヘアオイルを完成させたら喜ばれるかな?と思う。
特許を売るためには、この世界で取れる素材で作らないといけない。
なるべくシンプルで無理なく取れる素材で効果的なものを。
例えばクレソンはビタミン、ミネラル豊富で繁殖力が強く、水辺にたくさん生えていて発毛、育毛にも効果的な薬草なので、低コストな薬草だ。
私が鑑定すると、ビタミンとかミネラルとか出てくるが、栄養素の概念があまりないこちらの世界の人たちが鑑定すると、鑑定ランクの高い人でも肌に良いとか、目に良いとか大まかな説明くらいなので、効果的な組み合わせとかは予想がつかないみたい。
例えば女性にとって大切だが不足しがちな鉄分は、ビタミンCやクエン酸と一緒に取ると、吸収率が単体で取るより高くなる。
反対にコーヒーや紅茶に含まれるタンニンと一緒だと、鉄分の吸収を悪くさせる。
悪いといっても食事と時間を空ければ吸収は関係ないので、食事の時間以外でコーヒーや紅茶を楽しめば問題ない。
☆☆☆☆☆☆☆
『夫婦岩』
伊勢神宮は日本人の総氏神、天照大御神をおまつりする全国神社の中心。
最高至上神である天照大御神が鎮まる伊勢神宮へ行く前に、海(禊)で心身を綺麗にするための玄関口のような存在が、伊勢市の二見地区にある二見興玉神社。
境内にある海の沖合約700mの海中に沈む御神体「興玉神石」があり、海岸に突き出た大小2つの岩の「夫婦岩」を大注連縄で結んだのが鳥居となっている。
大きい「男岩」と小さい「女岩」が寄り添い、縄で結ばれている姿から、夫婦円満、良縁を願う信仰の対象となっている。
夫婦岩の鳥居、興玉神石=導きの神・猿田彦大神の先に昇る太陽=天照大御神を拝めると人生の進むべき道が明るく照らされると言われている。




