088 天狗
朝食は空気が気持ちよさそうな外で食べる事にした。
フッとパールが立ち上がったと思って何だろう?と向いている方向を見ると、崖の手前にある大きな岩の先端に大きなイヌワシ?のようなものがいた。
大きいというか私の知っているワシよりかなり大きい。
それに何だか雰囲気が、パッと見たときに何故か天狗に見えた。
顔が赤くて大きな羽も先端が赤い。
アイク「魔獣だ」
「えっ?」
確かに普通の獣の感じではない。
でも、魔の森のジャガーもだけれど、恐ろしいオーラは感じても敵意を感じない個体がいるのはなぜだろうか?
「魔獣って、あまり敵対的じゃないの?」
アビー「いや、魔獣は基本、人間を襲う。人間、というか自分のテリトリーに入ってきたものは狩りの対象になるはずだ。おそらくパールがいるから様子見しているんじゃないか?」
アイク「魔獣の中でも知能が高いのかもな。自分から先にパールへ敵対行動を向けるのは愚策だと本能で感じてるんだろう」
フェンリルの大きさに戻ったパールが、自分のお皿のウサギの香草焼きの肉の中でも一番大きな塊肉を咥えて岩の方へ近づき、ぶんっと、空に向かって投げた。
すると、大きく羽ばたいたワシが空で肉を足でキャッチして遠くへ飛んでいく中、ハッハッハーーー。とかすかに笑い声のような声が聞こえた。
「本当に天狗みたい」
アビー「テング?」
「前の世界でのお伽話。あのワシを人型にしたような生き物が架空の物語に登場するの。人を攫ったり、笑い声で人を驚かすとか、優しいお爺さんの顔についてるコブを取ってあげて意地悪なお爺さんに付け替える、とか」
アビー「いいやつなのか、悪いやつなのか、わからないな」
「ふふふ、確かに。相手を見て変えているのかもね」
ご飯を再開しようとしたけれど、パールはお皿の前でシュン⋯⋯としている。
「一番大きな肉をあげちゃったもんね。はい、どうぞ」
大きな塊肉をお皿に乗せてあげると尻尾を振りながら食べ始めた。
コハクはマイペースに過ごしていたようで既に食べ終わっていて、毛づくろいをしていた。
移動して数日後、採取したり狩りをしながら進むが、道が広がり整った石畳になると、獣に出会わなくなってきて、他の馬車や乗馬の人も見かけるようになってきた。
心地よい湿度、温度でコハクは馬車の屋根に寝そべり風を感じているようだ。
商人や冒険者らしき人達や馬車を多く見かけるようになったので、なるべく奥深く、見えない所で野営する。
結界の魔道具を使っているので、魔法、物理的に獣や魔獣は勿論、人間も、膜のような結界の外から中には入って来られないけれど、獣や魔獣より人間の方が厄介な事も多いから見られない事が一番良い。
物理、魔法攻撃のレベルによっては結界を壊されてしまうけれど、最高ランクの魔道具で火竜の魔石を使っているので、相当なレベルでなければ壊れる事はないはず。
ようやく街の検問所へ到着。
馬車から降りて並ぶとS、Aランクの双子がいるからか、すぐに通してくれた。
パールとコハクを見て驚き、イヤーカフを見て私達3人が夫婦なのを知って更に驚いていたようだから、双子の事を知っていたのかな?
海の方へ向かうと高台があり、そこから海が間近に見えた。
「綺麗」
濃いブルーの海、リアス式海岸でどこか懐かしさを感じる海の景色が広がっている海の街イゼジマ。
早速、海岸近くへ行き食堂へ行くとパールとコハクのデカさにビックリしていた女将さんだけど、2匹がすりすりするとデレデレになり、大盛りサービスしてくれた。
うちの子達の可愛さと毛並みにはメロメロになるよね。
パールは汁物が少し苦手だけれど、魚は大丈夫なようなので魚の蒸し焼き系にした。
量的に足りなそうなので、肉料理も結局頼み、コハクは初めての魚でも気に入ったようで、焼きも刺し身もバクバク食べている。
私達3人はお勧め定食の煮魚と定番の焼き魚、刺し身定食を頼みシェアしながら食べることにした。
朝採れたばかりの魚で作った煮魚は鯛のような魚で美味しい。
ボリュームはあるのに二人には足りないので、貝系も追加で頼んだ。
「美味しい~」
アイク「ああ、美味いな」
アビー「ははは。すごく嬉しそうだな」
ネットで魚を買えるけれど冷凍だし、何より採れたてだろう魚とは比べるまでもない。
貝は地球産のより大きめで濃厚な味が多い。
☆☆☆☆☆☆☆
『天狗岩』
熊野古道伊勢路、馬越峠から登れる天狗倉山の山頂には巨大な岩「天狗岩」がある。
名前の通り、天狗が住んでいたといわれていて、巨大な岩が天狗が座って外界を見下ろしている姿に見える事から天狗岩と名付けられたとも言われている。
『伊勢志摩』
三重県、伊勢志摩半島
紀伊半島の東端に位置する志摩半島から熊野市にかけての海岸沿いは日本有数のリアス式海岸。
この辺りの地域はもともと海の中にあり、それが浸食されて平坦な海食台となり隆起した。
特産品は伊勢海老、牡蠣、アワビ、真珠など。




