081 商業ギルド、酵母
最後のメインイベントは沢山の花びらが空を舞い散るフラワーレイン。
花びらが下に落ちる前に掴み、その数を競うのが仲間内で流行っているみたい。
「綺麗だったね。私は4枚。アイクとアビーは12!?凄い。パールは、ふふふ。1枚」
パールの頭に1枚の花びらがのっていた。
するとパールが口を開けてベロを見せてくる。
そこには花びらが5枚あったので全部で6枚になり、私が一番少ない結果となった。
花祭り翌日は朝食後、実行委員会の人達との約束があったので、昨日のフードコートの場所まで行く。
「おはようございます」
なぜか商業ギルドの人もいた。
隣の店舗主人「あっ!おはよう!昨日は助かった!売り上げも1日とは思えないくらいだったようだな!しかもギルドの人に聞いたら有名人だったようだし」
ギルドカードのタッチ決済で売上額はギルドに筒抜け。
「おはようございます」
オーレン「おはようございます。ギルドのオーレンと申します。キックス殿から急遽店をやってくれる人がいると聞いて驚いていましたが、まさかミツキ様だったとは。最初は1日だけでもありがたいと思っていましたが、終わってみると、売り上げが他の店舗と同じくらいなのでビックリしました」
本当は全日程の、どの店舗よりも売上額が多かったが、キックスもこの場にいたので同じくらいだとオーレンはごまかした。
店舗は昨日のうちに片付けてクリーンもしていたので確認はすぐに済み、やり取りが終了したのだけれど、ギルド長が話があるから時間がある時に来てほしいとの事なので、昼過ぎから行って大丈夫か聞くと大丈夫みたいなのでランチ後ギルドへ。
応接室へ案内されると数分後、ギルド長が入ってきた。
マスター「お越しいただきありがとうございます。チョコレートの件、支部では扱えそうに無いので王都本部へ相談(丸投げ)しております。ヘアアイロン等は落ち着きながらも売れ続けていますし、サスペンションは他国からも問い合わせがあり、嬉しい忙しさです。そして化粧品なのですが、今の美容品部署で扱うには大きくなってきてるのと、今後を考えて化粧品専門部署を作る事に致しました。ミツキ様監修のものを「月の雫」というグループにまとめ、販売していく事に。うちの職員の化粧品店舗の店長が乗り込んできて、いえ、立案してきまして、凄いやる気なので任せることにしました。そして花祭り、申し込みはもう無いだろう、と思っていたところにミツキ様達のお名前が出てきて驚きましたが、売上が一番だと判明した時は更に驚かされましたよ。3店舗中ではなく、全日程の9店舗中で一番ですよ。他の店舗と違い急な参加で準備期間もなく、1日だけだったのに」
「持ち帰りが多かったのが良かったのかもしれないですね」
マスター「その持ち帰り!娘がくれたのですが、凄く美味しくて!!でも!半分の半分?しかくれないので一口しか食べられなくて。最終日だったから忙しくて私は持ち場から離れられなくて。ぜひ!次回も参加してほしいです!!!」
「次回ですか。外国に行く予定もあるのでタイミング良くフラシルにいれば」
マスター「そうですか⋯⋯」
「あ、でもあのワッフルを焼いていた魔道具、近いうちに特許の申し込みができると思うので、ご自宅で作れるようになると思いますよ」
マスター「えっ!そうなんですか?それはありがたい!!あの外は歯ごたえあるのに中はほのかに柔らかく、パンケーキと似ているようで違うので、とても美味しくて」
「あっ!でも生地でいうとクッキーワッフルは問題なくできると思いますが、柔らかい方のワッフルは難しいかもしれません」
マスター「えっ?生地が違うのがあるのですか?娘は何も言っていなかったので知りませんでした」
「こちら、よかったらどうぞ?」
全6種の3セット入りをプレゼント。
マスター「わっ!こ、これをいただいてもよろしいのですか?」
「ええ、ちょっとしたときにお渡しできるようにストックしてあるので。生地がワッフルと少し硬めのクッキーワッフル、中はキャラメル、塩キャラメル、シナモンキャラメルの3種類です」
マスター「ちょっと失礼して。もぐもぐ!!私が娘に貰って食べたのはクッキーワッフルという方ですね。ワッフルの方は更にフワッと、しかしモチッともしていて。柔らかい部分がクッキーワッフルの方はパンケーキに似ているので作れそうですが、ワッフルの方は初めての食感です」
ベーキングパウダーの元である重曹はあるので、こちらの世界のパンは異世界あるあるの、パンで釘が打てるくらい硬い、という事は無いが、重曹だけではうまく作るのは割と難しい。ベーキングパウダーのように割合よく酸などを加えて扱いやすく加工していないと。
「これはシンプルな丸パンなのですが」
「!!!こんなパンは初めて食べました。もっちりフワフワ、味わいも深く旨味も感じる」
「これは酵母というのを使って作ったパンです。重曹との違いは酵母という菌を使っているのです。重曹は強制的に早く膨らませているのに対して、酵母は時間をかけて生地をふんわりさせながら熟成させている感じですね」
「では、酵母を登録していただけたら、この美味しいパンが広まりますね!」
エールの泡も酵母ではあるのだけれど、あえて言わないでおく。
穀物と果実で作る酵母では違いが大きいから。
ライ麦、全粒粉などのハードなものは、どっしりと強く麦の濃さを感じられるエールの泡の方が良かったりする。
エールの苦みや風味を感じるので苦手な人は多いかもしれないけれど。
果実で作る酵母は時間もかかるけれど、その分食感や旨味が多くの人に好まれる。
ホットコーヒーとワッフルがのったプレートを取り出す。
「このコーヒーに蓋のようにしてのせて20秒後に食べてみてください」
「!!中が柔らかいソースになって違った美味しさに変化しますね!!」
酵母を登録後、ギルドを出て宿へ帰った。




