076 浜辺の真珠
早起きして朝風呂へ。
「パール⋯⋯こういうのは岩場じゃなくて崖っていうのよ」
そうか?という顔をして、ちょっとした出っ張りの岩に一度飛び乗って崖の上へ。
アイク「砂場に乗るか?」
「2人は普通に登れるのよね?」
アビー「ああ」
「なんか、この高さは登らないとダメな気がする。冒険者として」
崖ではあるけれど、私の背丈2倍くらいの高さ。
この高さを空飛ぶ砂場で移動は流石に情けない。
「アイク、上から助けてくれる?」
アイク「それはかまわないが⋯⋯」
サクサクっと岩の突起を使いシュタッっと登り終えたアイク。
私も登りだしたけれど、掴んだり足を乗せられる石があまりないので中間地点で止まってしまった。
「ぐぬぬ⋯⋯あの石、もうちょっと下にあれば掴めるのに」
アビー「押し上げようか?」
「少しお願い」
アビーが下からお尻をぐい~っと上げてくれて、アイクが手を引いてくれたので登りきれた。
「ふ~~~」
ハラハラしていた2人は美月が無事登り終えて一安心だったが、どんな戦闘よりも疲れた。
「決めた!登れるように練習する!」
アイク「それは構わないが、温泉はいいのか?」
「えっ?あ、違う、今日じゃなくてコテージの中で」
アビー「コテージの中で?」
「うん。部屋が広くなるでしょ?だから岩壁を作るの」
アイク「?⋯⋯そうか」
よく分からないが、コテージの中なら自分達がいるからいいか、と納得しておく双子。
「すごく綺麗な泉ね」
アビー「滝があるからか、温度は少し低いな」
アイク「浮力もない」
小さいけれど滝があり、水質が驚くほどクリア。
今までの泉も綺麗だったけれど、浮力のある泉は底が見えなかった。
ここの泉は底の岩とか折れた木とかが見える。
浮力は無いからプールのようにフロートを浮かべて遊んだり。
1時間ほどで上がり、お腹が空いたのでお弁当タイム。
パールが帰ってくるまでカウチソファでゆったり過ごす。
パールが戻って来て、帰る時、崖は頑張って降りた。
殆ど2人に支えられながら。
日没まで2時間はありそうだから移動する事にして、海近くまで来たみたいだけれど、角度的に海は見えなくて、翌朝、早めに起きたのに2人は既に鍛錬を終えたところだった。
浜辺へ行くには足元の悪い下り坂を下りるのだけれど、その前に海が目の前に現れた。
旅行雑誌に出てきそうな綺麗な海には小島がいくつか浮かんでいる。
「わぁ。凄い綺麗な海。あそこは全て無人島?」
アビー「ああ、このあたりは魚があまり獲れないからな、貝のシーズン以外は殆ど人は居ない」
砂浜がある場所まで来てみると波打ち際にソフトボールくらいの半透明な卵らしきものがたくさんあった。
「すごい数ね」
アイク「何かの卵か?」
アビー「1つの中に数匹入ってるんだな」
「本で見たことある。大きな巻貝の嚢胞だったかな。強い波で打ち上げられたりする事があるって。乾燥すると死んでしまうから海の中に戻してあげないと。わぁ。ぷにぷにしてるのかと思ったら張りがあって弾力が強い」
風魔法で優しく卵たちを海の中へ戻す。
「この世界に来て初めての海がこんなに綺麗な海だなんて嬉しい」
アイク「これからの旅でもたくさん見よう」
アビー「ああ、ここより綺麗な海があるかもしれないしな」
☆☆☆☆☆☆☆
『フォルミーガの滝』
ブラジル、トカンティンス州
ジャラポン州立公園の周囲に点在する体が浮かぶ温水の泉、フェルヴェドウロの近くにあり、同じく約25 度の温水だが浮力はほぼ無い泉。
小さな可愛い滝と泉が繋がっていて滝自体の周囲を緑豊かな原生林に囲まれている。
底の砂まで透き通るほどクリアで天然のプールと言われるほど透明度が高く、底の砂や小さな魚、流木などが上からハッキリ見える。
太陽の光を浴びると美しいコバルトブルーやエメラルドグリーンにも見える美しい泉。
『ブラジルボリュート』
ブラジル周辺の海岸で見られる「透明な膜に包まれた塊」は、ブラジルボリュート(Adelomelon brasiliana)といい、全長20cmほどに成長する大型の肉食性巻貝の卵嚢。
見た目はテニスボールほどの大きさの、透明または半透明で弾力のあるゼリー状の球体。
膜の中には栄養価の高い液体と、数匹から数十匹の貝の赤ちゃん(胚)が入っている。
この貝は卵を岩などに固定せず海中を漂わせる性質があり、嵐や強い波が起きた際に、大量の卵嚢が一気に海岸へ打ち上げられ、砂浜が透明なボールで埋め尽くされたような光景になる事がある。
この卵嚢は現地で「Pérolas da praia(浜辺の真珠)」とも呼ばれるが、乾燥すると中の赤ちゃんは死んでしまうため、見つけたら海へ戻す人が多い。




