071 溺れない泉
お腹空いたからお弁当タイムにしよう。
ピクニック弁当と⋯⋯
アビー「なんだ?それは」
「これ?カップヌードル」
無性に食べたくなって買ってしまった。
普段はあまり食べないのだけれど、時々凄く食べたくなる。
小さな頃、遊びに行った野外プールで休憩時に食べたカップヌードルは、特に美味しかった記憶がある。
醤油、シーフード、カレー、チリトマトを3人でシェアする。
アイク「具は少ないのに味は濃厚で美味い」
アビー「湯を入れるだけでこんな風に美味くなるなんて野営向きだな」
「確かにお湯さえあればいいから楽ちんよね。軽いし。麺は油で揚げて水分飛ばすか、熱風でノンフライ麺、あとはオーブンでも乾燥できなくもないかなぁ。スープは粉状にすれば期限も長く保てそうだし。カップの容器を作るのは難しいだろうから自分で用意した器で作る感じになるけれど、袋状で真空密封は市場で見たから販売は可能よね。いつか時間がある時に試作してみようかな」
食べ終わってもパールはまだ帰ってこない。
アイクが近くに生えていたバナナをとってくれた。
アビー「甘いがさっぱりもしてるな」
「凄いもちもちしてる。甘くて美味しいし。今度これでパウンドケーキ作ろうかな、ドライフルーツにしても良さそう」
アイク「楽しみだ」
パールが帰ってきたのでご飯を食べさせてから、アイスとウインドのいる場所へ帰ろう。
☆☆☆☆☆☆☆
『フェルヴェドウロ』
ブラジル、トカンティンス州
ジャラポン州立公園の周辺地域には透明度の高い天然の泉が沢山点在していて、100箇所以上の泉がカタログに登録されているが、すべてに入れるわけでは無く、実際に観光客が訪問できるのは、そのうち20箇所前後で入場料も泉によって価格が違う。
フェルヴェドウロ(Fervedouro)という言葉は、ポルトガル語で「沸騰するもの」や「ボイラー」だが、実際にはどの泉も25度前後で熱くはない。
地底から湧き出る非常に強い水圧で泳げない人でも沈まない不思議な体験ができ、それぞれの泉が異なる形や水の色、浮力(水圧の強さ)を持っている。
水深1.5mくらいの泉が多いが、水が湧き出す中心部の深さが35メートルから、説によっては70メートル以上あるのではないか、と言われている泉もある。
他の地域、国にも同じように水底から湧き水が勢いよく湧き出す水圧の強い泉はあるが、ここまでの浮力にはならない。
普通の砂ではなく、石英の砂である事が他とは異なる特徴で、地下から強い水圧がかかったとき、この粒子が泥にならずに水中でバラバラに舞い上がり、液体のように振る舞い流動化現象を起こす。
この「水と石英砂が混ざり合った状態」が、普通の水よりも高い密度を生み出し、人体を強力に押し上げる「水のクッション」になり浮力を強めている。
普通の砂や泥であれば、水が激しく湧き出せば茶色く濁るが、石英は化学的に非常に安定しており、水に溶け出したり水を濁らせたりすることがほぼ無い。
そして石英砂は重みがあるため湧き出し口から離れるとすぐに沈殿する事で水が常にクリスタルのように澄み渡った状態の透明度を維持する。
石英の粒子は光を反射するため、底に沈んでいる砂が太陽光を浴びて白く輝く事により、エメラルドグリーンやブルーをより鮮やかにさせてくれる。
有名な泉は
Ceiça
バナナの木に囲まれたオアシスのような泉で訪問者が多い泉の一つ。美しい水面と数ある泉の中で最も浮遊感が強いと言われている。
無理に潜ろうとしても、コルクのようにポーンと水面に弾き返される非常に強い湧水圧を体験できる。
水深は中心部で30m~70m以上あると言われているが、実際には心地よい浮遊感しか感じない。
Buritizinho
水が非常に透明度の高いターコイズブルーで、「最も美しい」と評されることも多い小規模な泉。
Buriti: 泉の形がハート型に見え、周囲のブリチヤシ(ヤシの一種)とのコントラストが美しく、SNS映えするスポットとして人気。
Macaúbas
他のフェルヴェドウロとは少し違う緑色の水を持ち、比較的混雑の少ない泉。
Bela Vista
泉自体の面積が地域最大級で、敷地内にレストランや宿泊施設が併設されており、夜間入浴も可能なほどジャラポンの中でも特に設備、観光インフラが整っている。
鮮やかなターコイズブルーで、中心部の湧き出し口は深さ約15メートルに達するが他の泉と同様に沈むことはない。
身体が浮くことで有名な死海は塩分濃度約30%以上あることにより身体が浮く仕組み。
水そのものが重いため、どっしりと横たわるような「安定した浮遊感」があるのに比べ、フェルヴェドウロは下から常に噴き上げる力に押し戻されるため、まるでトランポリンの上でバランスを取っているような、アクティブな浮遊感。
死海は非常にベタつき味は苦く、傷口があると激痛で目に入ると非常に危険、夏は40度近くまで熱くなるが、フェルヴェドウロは真水なので上がった後に全身がベタベタして、シャワーを急ぎたい、というストレスがないのも大きな魅力。
「大量の地下水圧」×「純度の高い石英砂」×「それを受け止める地形」という3つの地質学的奇跡が揃ったのが世界的に見ても非常に珍しく、報告もされていないので、このジャラポンという地域以外で体験できる所はない。




