052 サスペンション
「それにしてもこんなに揺れるのね。もしかして⋯⋯あの、車輪と本体の間にサスペンション、衝撃や振動を和らげるような部品は使ってますか?」
技術者「?えっと本体と車輪の軸は直接繋げていて」
技術者さんに説明したけれど、難しいらしく困り顔。
アイク「工房の代表はいないのか?」
技術者「今はギルドへいっていて、もうすぐ帰ってくると思うのですが」
1時間後に再度訪れる事を告げ、工房を出てカフェでお茶をする事にしたのだけれど、ちょうどティータイムなのか女性のお客様が多く、入ってすぐ感じるくらい中にいる女性達からの視線が凄い。
双子の顔が険しくなったので入店を取りやめる事にして、屋台が集まっている広場へ行くと昼食のピークは終わっているのでお客さんも少ない。
コーヒー専門の屋台で購入しようとして数種類の豆があり、悩む。
アビー「3種類違うのを購入しよう」
広場の端においてあるテーブルは近くに誰も座っていない為、ゆっくりティータイム。
「これが特に美味しい、なんて豆だったっけ?」
アビー「確かイエローブルボン、豆を買えるか、帰りに聞いてみよう」
「値段も1番高い豆よね、希少種なのかな」
アイク「街の豆屋でも見たことない品種だったな」
お茶をしながらサスペンションの事をまとめる為にネットショップでそれ関連の雑誌や本を購入。
アビー「サスペンションというのはバネの事だったのか」
双子は日本語が読めないけれどイラストや写真で構造は理解できたみたい。
「うん。でもバネだけだとだめみたい。ええと、このダンパーだったり他の部品も一緒にしないと」
アイク「たしかに、バネだけだといつまでも揺れそうだな」
大体の構造を把握して、帰りにコーヒー豆も購入できて楽しいティータイムだった。
高地で採れる通常のブルボン種は赤い実だが、突然変異により黄色に実った果実から採れた豆をイエローブルボンというみたい。
レッドブルボンでも充分美味しく、イエローブルボンは5倍近く値段が高い分、街中の屋台では売れないようで豆の大量購入を喜ばれた。
工房へ戻ると、これまたドワーフのようなヒゲが立派な年配の男性が待ってくれていた。
「衝撃や振動を和らげるのをつけてほしいって?」
スケッチブックを出して描いておいたイラストを見せ双子が説明してくれる。
「⋯⋯なるほど。確かにこれならかなり軽減されそうだ。見たことないから特許はこれからなのか?」
「代わりに申請してくれないか?共同という形で利益は半々で」
「半々でうちが受け取れるのか?自分たちですれば丸儲けだろう?」
「俺達は冒険者でもあるのと、他でも特許をいくつか取っていて全ての事に時間をかけられないから専門家に共同で動いてもらっている。ミツキは渡り人だからこちらには無い知識があり、アイデアは出せるが専門家ではない。これらを元に進化、改良させたりして、より良いものにするのは専門家に任せたいんだ」
「なるほど、稀有な色持ちだと思えば渡り人か。了解した。申請はしておくからギルド識別番号を後で教えてくれ。これを使う馬車はどの馬車にする?」
「さっき見た貴族用の黒いやつで、中も少し改良したいんだよな?ミツキ」
椅子の足の前の面の板を2重にして、1枚を上に上げ固定して背もたれのクッションを嵌めるとフラットに出来るように。
タイニーハウスにあるソファベッドのようにベッドへ転換できる座席にしてほしい。
私はそこに、更にマットレスを敷きクッションを沢山置いてゴロゴロと過ごしたい。
高額な馬車を買うような高貴な人達はゴロゴロなんてしないだろうから、キャンピング馬車は流行りはしないだろうと思ったけれど、年配な人や長距離移動には良さそうという事で特許。
御者は2人が交代してするので、私ばかりゴロゴロして申し訳ないが、交代でミツキと2人きりの時間を過ごすのは楽しみだ、と2人共に嬉しそうなので地球産の柔らかい低反発な座布団を御者台の椅子に取り付けようと思う。
サスペンションばかりに気を取られていたが、車に近づけるならタイヤみたいにしたいと思ったけれど、ゴムは無いみたい。
「白い樹液が出る木はないですか?」
「白い液体というとラテックスの木か?防水や柔軟性が良くなるように外套や荷馬車の幌なんかに使われていたが、ワックスの改良で必要無くなり今ではあまり使われていないと思うが。川上の熱帯雨林地帯にたくさんあるぞ」
ゴムは確か何か混ぜて乾燥させる加工が必要なのだと思うけれど、本を買って素材が手に入れば今度試してみよう。
作れるかわからないので、ネットショッピングでゴムの素材を買い、馬車を購入後に2人に車輪に取り付けを試してもらおう。
これで更に地面からの衝撃が少なくなるはず。
馬車のサスペンションと内装の加工を頼み終わったので、宿に戻った。




