046 エタニティリング
0.5カラット以上は高く売れるから宝石店に持ち込んでいた双子だけれど、0.5未満のダイヤモンドはインベントリに保管していた。
これを使ってオーダーを頼む場合は石代がかからないだろ?とバラバラとダイヤモンドをテーブルに置いていく。
前回購入したサファイアのネックレスやダイヤモンドリングの事もあり、高額商品の購入を期待していたのか、今回は宝石持参と聞いて少し悲しそうな顔になったオーナー。
笑顔だけれど目が笑っていない夫人がオーナーを見つめると、オーナーはハッと姿勢を正す。
夫人「失礼いたしました。素晴らしい品質ですわ。どのようなデザインにしたい、などのご要望はございますか?」
前の世界で結婚指輪は石無しが大多数だったけれど、結婚指輪にはエタニティリングをお願いする。
リング幅の小さな宝石がぐるっと一周途切れなく続くことから永遠の愛という意味を持つエタニティリングのデザインは、こちらの世界ではないようだ。
そのデザインの話をしている途中で夫人の目が輝き出し、そのデザイン案を売ってほしい!と前のめり気味に頼んできた。
特許をとり、自分の店だけの限定で販売がしたいと。
複雑なデザインではないのに特許が取れるのか不思議だと思い聞いてみると、
例えばカットデザインや配置のデザインを特許申請すると5割以上真似しなければ特許侵害にはならないので、似たようなデザインにする事は可能なのとカットなんて何通りにもできるものだから特許申請する意味はあまり無く、申請されているものは少数らしい。
しかしエタニティリングでいうとリングの半分以上石を付ける事は出来ないから特許申請する事には意味があると。
大きな原石を形作るときに出てしまう欠片。
宝石の純度はグレードを左右するので大事だが、大きければ大きいほど価値がある基準なので小さな石は値段も低く、それを使い作れば値段も抑えられ、ぐるっと一周するから華やかな見た目にもなり、富裕層以外にも憧れの指輪が手に入りやすくなる。
より多くの女性が憧れの宝石を身につけられるようになる!と興奮している夫人。
永遠の愛を意味する、というキャッチフレーズも気に入ったようだ。
利益の5割渡す、と言われたけれど1割にしてもらった。
利益を出す為の労力と資金を出しているのは店側だし、デザインアイデアは元の世界で有名なデザインだったから。
なるべく価格を抑えて、より沢山の人が買えるようにして欲しいとお願いした。
では!ミツキリングと名付けます!と言うけれど恥ずかしいので断固拒否。
永遠を意味するデザインが気に入ったのだから、名前もエタニティリングにしてくれと納得してもらった。
「1つだけ条件があって、この指輪のケースはブルーにしてほしいのです」
店にあるものを見せてもらうと、シンプルで片手で握れるサイズの四角いブラックリングケース、どこの宝石店でも同じ様だ。
夫人「一般的には黒か濃紺ですので斬新ですね!!ケースもお相手の色にする、という事ですか?」
「私の場合は2人と同じブルーで幸運ですけれど、相手の色ではなく誰に販売するのにでもブルーケースにしてほしいのです。青といっても少し緑がかった青、ブルーダイヤバードいますよね?あの幸せの青い鳥の卵と同じ色に。幸運の青い鳥の卵でリングを大切に保管しているイメージです。卵の形だと不安定なので円柱で」
夫人「!!!!!!」
ピシャーン!!!と雷に撃たれたような夫人。
オーナー「オ、オリヴィア⋯⋯?」
夫人「幸運の青い鳥の卵に保管⋯⋯我が子のように大切に、大切に。うううぅぅ⋯⋯」
「えっ?」
夫人が号泣してビックリ。
双子もドン引きだ。
夫人「わ、わたくし、幸せ者ですわ。こんなに感動したのは初めてです。宝石はカラットが大きい、透明度が高い、価格が高いのが至高、と言われているのがあまり好きではなくて。ランク付けは商売上必要ですが、小さくても透明度が低くても、自分で稼いだご褒美に身につけたり贈られる事に心躍る物であってほしいのです。小さな宝石達が主役として輝けて求められる、そんなエタニティリングの宝石を保管する入れ物にも素敵な意味を持たせるなんて。ううう⋯⋯」
オーナーは奥様の感情爆発についてこれずポカンとした表情。
確かに男性には分かりにくいかもしれない。
ただのケースとしか思えない人は多いと思うけれど、宝石だけではなく、意味を持たせたケースにも心ときめく女性は多いと思う。
「それでは、具体的な全体図なのですが」
号泣していたのが嘘のようにキリリとした表情の夫人。
販売部門のリーダーだけあって大商人のような雰囲気にガラッと変わった。
言葉より図の方が説明しやすいからインベントリからスケッチブックを出して描き出す。
円柱で中のベルベットはブラック、リングケースを収めるためのボックスも作って貰う。




