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異世界の歩き方  作者: ❀雪月風花❀


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039 月が綺麗ですね

アイスとウインドがいる厩舎へ寄った後すぐに森の中へ入り、家までの道を休憩もせず、止まることなく移動した。


アイザック「この辺りで野営しよう」


アビゲイス「すぐ飯にするか?」


「ううん。少し疲れたから早めに寝ていい?食事はテーブルに置いておくから好きなときに食べてね」


あまり食欲が無いので私は食べずに上のロフトに登り、お布団に入って眠る。

早く寝たので日が昇る時間には目覚め、ロフトを降りると双子は既に起きていた。


アビゲイス「おはよう、体調はどうだ?」


アイザック「移動は止めて今日はここに留まるか?」


「ごめんね、心配させたみたいで。大丈夫。早く帰りたいし、ご飯食べたら出発しよう?」


馬上からの景色をぼ~っと見て一度の休憩を挟み、気がつけば日は落ちかけていて家に着いていた。


「アイス、ウインド、ありがとうね。アイザックさん、アビゲイスさんも長い時間乗せてくれてありがとう。少し部屋で休ませて貰うね」


少し休んでから夕飯を食べようと思っていたのに、客間に入りクリーンと着替えを済ませベッドに横になると寝てしまった。



アビゲイス「ミツキ、大丈夫だろうか」


アイザック「⋯⋯」


アビゲイス「あの店やギルドで言われた事が原因だろう?しかし、噂は下着の店で既に聞いていただろ?落ち着いてもいたし。それなのにギルドではなんであんな風に青ざめていたんだ?」


アイザック「確かに。途中までは困った顔をしていただけだったはず。噂じゃなくても、あの女の何かが原因だったのは確かだ。今度会ったら殺す、あの水女」


アビゲイス「ミツキが妖女や街の女達みたいな性質だったら、今頃100人の夫を持っているよな」


アイザック「前の夫の裏切りに傷つき、男を増やすどころか女1人で生きていこうとして、俺たちからも離れようとしていたくらいなのに」


アビゲイス「仮とはいえ婚約した事は嫌がってなかったし、俺達への好意も感じとれた。それでも離れようとするのは元夫みたいに裏切られたら、と恐れているのか?」


アイザック「裏切られた事を知った後で死なれたならダメージはまだ浅かっただろうが、愛している時に死なれて最大の絶望や悲しみを感じたと同時に、実は裏切られていたと知った。死と裏切り二重に悲しみ苦しんだ。愛する事は怖いだろう」


アビゲイス「親や親族がいない天涯孤独の中で、一番心を預けていた相手にそんな事をされるなんて、どれだけ傷ついたか⋯⋯」


アイザック「本人は夫を忘れていたと言ったが、愛情が無くなっても傷ついた痛みや記憶を完全に消すのは難しい。俺達に出来ることは、本人にも消せない怖さを感じさせないくらい愛する事だ」


アビゲイス「そうだな。痛みや悲しみさえ思い出せないように愛そう」



家に着いて少し横になったら寝てしまっていたみたい。


夕方前に寝てしまって今は夜中の12時を過ぎたばかり。

2人はご飯を食べてもう寝たかな?


婚約も仮ではなく、本当の婚約にしたい思いはあり2人への思いを伝えたい、けれど怖い。

迷惑ばかりかけている私といたら、いつか嫌われてしまう時がくるのではないか?

今後、惹かれる女性に会えば、また私は裏切られるのか?

自分だったら他に妻を増やされるの嫌なのに、私は1人で2人を求めてるなんて自分勝手よね。

それに一度死んでいる事はどう思われる?


そういう思いは2人を信じようと思い、消化できたと思っていたから、噂を聞いても大丈夫だった。


でも、あの水魔法使いの女性から2人が私のせいで死ぬって言われて想像してしまった。

確かにパールがいない時には私を守って死んでしまう時があると思えた。


楽しくて幸せで忘れていたけれど、私が幸せになろうとすると大切な人が死んでしまったんだった。

祖母も、父母も、夫も。


やっぱり、私は1人で居たほうがいいんじゃないか。

でも2人と離れる事を想像するとすごく苦しい。


ふと月明かりを強く感じ、窓に目を向けるとカーテンの隙間から月が見えた。


!!!

女神様が重なった時の髪の色と同じ色のストロベリームーン。

女神様に会えないだろうか?


この部屋の窓からは角度的に月が見えにくいから、急いで、でも音は立てないように外へ出て月を見上げる。


甘い匂いがしてきて少し先を見てみると、月下美人が咲いていた。

大きな立派な花とは別で、地面近くに小ぶりなサイズの月下美人もある。

真っ白い花が月の光を反射しているように光って見える。


「キレイ。お母さんが昔育ててたけど匂いが同じなのね」


お母さんは月が好きで私の名前にも月をつけ、月に関する話をよくしてくれた。


「月が綺麗ですね⋯⋯」


小さく呟いた言葉は別の意味をもたせた台詞、という話を知っている人には有名な愛の告白の言葉。


月が綺麗ですね=愛してます

ストレートに好意の言葉を直接言えない人にも好きだと伝えられる、良い喩え話だと思っていたけれど、2人に言う勇気はない。

2人が込められた意味を知らないと分かっていても。



☆☆☆☆☆☆☆


『月が綺麗ですね』


夏目漱石が英語の「I love you」を「愛している」と直接的に訳さず、「月が綺麗ですね」と訳すように教え子に教えたという逸話。


このエピソードの文献記録はないが、広く知られるようになったのは、月という美しい自然の情景に想いを託すことで、直接的な愛情表現を避けながらも、奥ゆかしく、間接的に「愛している」という気持ちを伝えることが出来る、日本的な美意識や情緒的な表現が多くの人に共感されたため周知されたと考えられている。


挿絵(By みてみん)



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