038 冒険者たちの会話
美月達がギルドを出ていくまで息を殺し、置物のように動かなかったギルド内の者達。
ドアが閉まり数秒後にガヤガヤと話し出す。
男冒険者1「あの殺気、やべぇな」
男冒険者2「それにしてもリリーは怖いもの知らずだな」
女冒険者1「だってあの子、アイザックの事をずっと好きだったもの」
男冒険者1「まるで相手にされてなかっただろ?あの双子を狙ってた女なんて沢山いたのに、誰も相手にされてなかったんだから、あんな風に一緒に行動している女が現れたら諦めないか?普通」
女冒険者1「自分がこの地域では女で一番高ランクで強い魔法使いだから、一番相応しいのは自分だって思い込んでいて、他の女達を牽制して言いふらしてもいたもの。認めたくないのよ」
男冒険者2「まぁ、確かに一番の魔法使いだった。でも俺、火竜の時近くにいたが、あのミツキとかいう女はリリーよりも魔力が多い、いや、圧倒的な差がわかる程の魔力持ちだったぞ。なんせ数種類の属性魔法を広範囲に放って火竜を丸々インベントリへ保管していたからな」
女冒険者2「冒険者に見えないから余計悔しいのね。リリーは確かに美人だけれど、傲慢なプライド高い女はあの双子が毛嫌いするタイプだって理解も出来ず、行動を改めなかったのが原因なのに、女の方を攻撃するなんて本当馬鹿な女」
男冒険者1「お前ら、リリーの事嫌いだったのか?」
女冒険者1「だって私は双子はタイプでもないのに、いちいち牽制してくるのよ?私がアーロンにアプローチしているのを知ると、アーロンを誘惑したの。あの女、好きでもないのに恋人のいる男とか、他の女にアプローチされている男にちょっかいかけるのよ」
男冒険者2「お前、新人受付のアーロンが好きなのか?意外だな、少年趣味か?犯罪ギリギリアウト?おわっ!殴るなよ!アーロンは成人しているから大丈夫だよな!うん!ギリ大丈夫だ。それより、好きでもないのに、なぜちょっかいをかける?」
女冒険者2「恋人やアプローチされている女より自分の方が魅力的だって感じたいだけよ。男がリリーを選ぶと、リリーは全く相手にしなくなるし」
男冒険者2「俺がリリーにアプローチされた事がないのは喜んでいい事だよな?恋人がいない事や女達にアプローチされない事を悲しむ事はないよな?⋯⋯うう⋯⋯」
女冒険者1「ちょっと、泣かないでよ。それにしても噂で女の方が悪く言われて双子は同情されているみたいだけれど、私からすると女の方に同情しちゃうわ。あの双子に惚れられて」
男冒険者2「あの双子に惚れられるなんて女からしたら最高なんじゃないか?見た目と強さ最強、そして金持ち。世の中って不公平だよな⋯⋯」
女冒険者1「好きではないタイプなら最悪よ、穏やかな日々を好むなら尚更。強者で世界の果てまで追いかけて来そうな執着の強そうな男だし。あの双子、ルーツが竜よね。私はルーツが蛇だから何となくわかったし、私も執着が強い方。強いといっても竜に比べたら大分マシな方よ。ヤバいわよ、あれは。絶対に手に入れようとするし、手にしたら絶対に手放さないわ。まぁ、魂で惹かれてしまったのなら死ぬまで諦めないだろうから相手が諦めるしかないわね。私もアーロンを手放すつもりないし」
男冒険者1「アーロン、強く生きろよ⋯⋯」
女冒険者1「度が過ぎた執着をされるのを嫌がる女は多いし、一度嫌いになると何もかも全て駄目、生理的に受け付けられなくなる女は多いのよ?」
女冒険者2「そうそう。それに切り替えが早いのも女よね。振られた側でグダグダ引きずる男は多いけれど、女は切り替え早いし、少しも振り返らない、昔の男との思い出は新しい男との思い出で上書きする。男は丁寧に名前を付けた箱に保存していつまでも保管してる。そんな大事に保管してても、女は相手の名前も1年後には忘れちゃうのに」
男冒険者3「そ、そうなのか?振られたらなかなか忘れられないし引きずるもんじゃないのか?」
女冒険者2「男って女がいつまでも自分を好きでいてくれるって思いがちよね。あんた、食堂で働いてるあのぶりっ子の女と別れたでしょ?メリッサとより戻そうとか思ってる?無駄よ?メリッサはアンタの事なんてこれっぽっちも引きずってないし、新しい彼と結婚するみたいよ、来週に」
男冒険者3「け、け、け、結婚?!」
女冒険者2「ええ、あんな愛情深い良い女は男がほっておかないわよ。メリッサは昔からモテてたのにアンタだけしか見てなかったのよ。それなのにぶりっ子と浮気して!愛されてるからって何しても愛し続けてくれると思う馬鹿な男が多いのよね」
男冒険者3「そ、そんな⋯⋯カリナは俺以外の何人かとも付き合ったりデートしてたんだ。メリッサの一途さと大事さが改めて身にしみて、何度でも謝ろうと⋯⋯」
女冒険者1「謝っても許せない事があるのよ、どれだけ愛してても。いや、愛してるからこそ?振った側のくせに引きずるタイプは一番最悪ね。ちょっと秋波を送られたからってフラフラした愚かな自分を恨む事ね」
男冒険者3「ううぅ、メリッサ⋯⋯ゴクゴクゴク」
男冒険者2「リック、飲みすぎだ」
男冒険者1「そろそろ、許してやってくれ。かわいい女に言い寄られたらフラフラしちまう男は多いと思うぞ」
女冒険者2「じゃあ、アンタも可愛かったり好みの女に言い寄られたら浮気するわけ?」
男冒険者1「いや、俺は⋯⋯嫁に惚れ込んでやっと結婚できたんだ。浮気する奴が悪いな、うん。幸せを祈ってやれ、リック」
男冒険者3「うううううう⋯⋯」
女冒険者1「泣きながら寝た?全く。刺される覚悟が無いやつは刃を向けちゃ駄目だっつーの」
女冒険者2「そうそう。別れる覚悟もないくせに浮気なんかして。惚れた女が現れてしまったのなら誠意を持ってキッチリ別れてから新しい女に求愛するべきよね」
女冒険者1「あの女性が噂の話を聞いて顔色が悪くなって謝っていた時、殺気でリリーを追い出して気にするなって双子が必死だった。あの子、相手を思って自分から身を引くタイプなのよ、きっと。性悪リリーとは正反対なタイプね。どう見ても双子からの思いの比重が重すぎて傾きすぎ。あの女性が双子の重い愛を受け止め続けられる事を陰ながら祈ってるわ」
男冒険者1「性悪⋯⋯本当にリリーが嫌いなんだな。何か疲れたがとりあえず、あの双子は沢山の女に囲まれるより、愛する女の側にいたくて必死って事だろ?キャーキャー女達に囲まれて冷たい態度をとっても更に囲まれて、いけ好かない奴だと思っていたが、恋愛で苦労するような普通の男だったんだな」
男冒険者2「今思うと、あの双子に群がる女って見た目はいいが俺も苦手なタイプばかりだ。あんな男でも恋愛で苦労する事あるのか⋯⋯何気に世の中は平等に出来てるんだな。うん。応援してやりたくなったぜ」




