030 街5日目、化粧品
ランチ後は化粧品店。
男の人にはつまらない店だろうから、別行動にして後で待ち合わせしようと思ったのだけれど、特に行きたい店もないし心配だから、俺達はお茶をしながら待つよ、と言うので一緒に化粧品店へ。
店に入ると、とても広く高級感もあり壁沿いに商品の棚が置かれていて、真ん中に円型のカフェスペースがありお茶を飲む事もできる。
こちらの世界では化粧品メーカーは存在せず、商業ギルドが製造から販売までしている。
商業ギルドは薬師ギルド、冒険者ギルドと横の繋がりがあるからこそ素材が幅広く手に入る。
個人はもちろん、大きな商会だとしても素材を揃え、加工、安定した供給は難しい。
個人の店や露店で製造、販売しても違法ではないが、趣味の延長で出来た物より薬師スキルの高ランク持ちが作ったギルド商品の方が効果は高いし安心して使える。
店舗はギルドが置かれている規模の街でも1店舗、王都では2店舗のみ設置されている。
ギルドで店の場所を聞いた時、お茶が飲め、休みながら買えると聞いていたけれど、化粧品の置かれている面積よりカフェスペースの方が広い。
男性も何人かお茶を飲んでいて、女性の長い買い物に付き合う男性に優しい店になっていた。
私達が入ると女性店員含め女性達の視線が集まる。
双子が真っ直ぐにカフェスペースへ行くと、がっかりした店員は睨みはしないけれど、おざなりな接客で、一人にしてくれていいのに私の動きには付いてくる。
この世界の化粧品がどんな感じなのか調べたいから、購入するものを籠にどんどん入れていると、
美容部員「後で戻されては困るのですけれど」
「えっ?これ全部購入するので戻さないです」
双子が立ち上がったと同時に、レジにいたベテランらしき女性が競歩のようなスピードで歩いてきて、私の傍にいた美容部員の首根っこを掴むような感じでレジに連れて行った。
店長「アリッサ!レジ担当していなさい!」
そしてまた猛スピードで私の前まで歩いてきた。
店長「お客様、販売員が大変失礼な態度をいたしまして、申し訳ございませんでした。もし何かお知りになりたいことがございましたら、私にお聞きください」
化粧水やクリームも種類が無いというか、匂いや肌触り、効用も多少違う種類的なものとしては数多くはあるけれど、部位に関係なく選んだクリームを顔や体全体に使うみたいだから、部位ごとに種類を増やしたり、顔用は特に効果ランクを分けて数種類、化粧品以上、薬品未満の医薬部外品をメインに作りたい。
ボディには少しお得なクリームを、顔にはお金をかけたいなど、費用対効果や予算を分けられたら女性はもちろん、既婚者なら家計的にも助かる。
販売されているものに保湿効果はあるようだけれど、保湿や塗り込む前の土台作りが一番大事だと思うからクレンジングオイルやクリームも作ろう。
クリーンでは元の状態に戻しているだけだもの。
化粧品はファンデーション、眉・アイシャドウ・マスカラ、チーク、口紅はあるけれど、種類があまり無く派手な色に偏りがちで赤は種類が多いのに朱系やオレンジ系、茶系、ピンク系、深みのある紅系の赤はあっても真っ赤がないから真っ赤な色を出してくれる色素の素材を見つけたい。
そんな感じで、新しい化粧品を作ろうと思っている事を話していると、店長さんは前のめり気味に話にのってくれて楽しい買い物タイムを過ごす。
化粧品は同性とワイワイ買い物するのが楽しいよね。
途中、少し疲れて私もお茶休憩。
「ごめんね。男性は化粧品なんて見てもつまらないのに」
アイザック「いいや、ゆっくり休憩しているから気にするな」
アビゲイス「軽く摘みながら飲むから、買い物を楽しんでくれ」
紅茶やコーヒーが一杯1500G、普通の茶葉やコーヒー豆なのに3倍近い値段なことにはびっくりした。
2人はフルーツが数種類入ったサングリアワインを飲んでいて、一杯2400G。
場所代かな?空席が多い事に納得できた。
《美月が休憩中》
店の外に連れ出されたアリッサ。
店長「アリッサ!お客様に対してなんて事をしているの!」
アリッサ「だって⋯⋯あの双子冒険者と仲良く買い物なんてぇ⋯⋯ずるくないですか?」
店長「仕事中よ!それにあのミツキ様は今後、美容界に革命を起こすわ!!あの肌と化粧見たでしょ!元々の素質もあるけれど、話を聞いてみると知識と技術が凄いのよ!商品開発もする予定みたいだわ。一番大事なのは土台作り、自分に似合う色を見つける、うん、そうよ!私がもっと美しくなれる未来が見えたわ!」
休憩後、化粧品ゾーンに戻ると店長さんがスススッと音もなく傍に来てビックリしつつ、買い物再開。
アイラインが無いのはみんな彫りが深いから必要ないのかな。
寒色系とか、落ち着いてる色を求めている、似合う女性もいると思うから寒色系やピンクブラウンやオレンジブラウン系のアイシャドウとアイライン、パウダーやハイライト、化粧下地もないので作ろう。
店長「まぁ!私がピンクですか?もう若くありませんのに」
「透明感のある明るい肌だからピンクでもベージュやオレンジ系統のピンクなら似合いますよ。洗浄と下地をしっかりしてやれば更に肌も輝きますし」
店長「塗布する時間より土台作りに時間をかけるのですよね!」
何故か私が美容部員のような感じになっていたけれど、この世界の美容レベルと求められている物のリサーチができた。
あとマニキュアも無いから作れば売れそう。
店長「ミツキ様!また是非お越しくださいませ!新商品の開発、楽しみにしておりますわ!」
ガッチリ手を握られ涙目で哀願されたので、早めに商品開発しよう。
特に土台作り用のを。
就寝時、事前承諾の言葉は既になく自然と頬にキスをされ、私も返し心地よい眠りに幸せを感じる。
街6日目、正午からパーティーが始まる。
化粧やボディクリームを塗ったりしていて、用意できたのが予定より少し遅くなってしまった。
部屋から出てリビングにいる2人にお披露目する。
出会ってから初めてガッツリと化粧をしたミツキ。
ガッツリといっても、ポイント箇所にしっかり色やラインを入れているくらいで、分厚く塗っていないのに華やかさが増して大人っぽい。
アイザック「綺麗だ。やはり行くのはやめよう」
アビゲイス「こんなに綺麗なミツキを他の奴らには見せたくない」
頬にキスされ、私はさぁ、行こう、と2人の手を引っ張るけれど微動だにしない。
2人の間に入り腕に腕を絡めて歩くと渋々動いてくれたので、待たせてしまった迎えの馬車の御者さんに謝り、領主様の屋敷へ向かい、パールには庭園で待っていて貰うことにした。




