023 幸せそうな花嫁
冒険者エリアの宿より商業ギルドがあるエリアの方がランクの高い宿が多い、というので移動する事になり、冒険者ギルドで提出していた魔獣などの報酬を受け取りに行く。
受付には行かず直接解体場へ行き、親父さん達がニコニコしながら報酬を私のカードへ入れてくれた。
魔獣は久々らしく、鹿は特に喜ばれていた。
魔獣が3匹いたからか920万Gの収入。
魔石と肉は半分引き取ったのに、すごい金額になった。
私仕事しなくても平気なのかもしれない。
でもパールだけに働かせたらブラック職場だと、女神様に思われてしまいそうだし、それに魔獣に出会う機会は少ない。
コピーを使えばパールの稼ぎだけでも生活できそうなのは、安心材料になるので女神様に感謝だ。
預けていた剣を受け取った後、商業ギルドエリアに向かい歩いていると、教会らしき建物が見えた。
「教会?」
アビゲイス「ああ、そういえば行きたがっていたよな、寄っていこう」
森に飛ばされ、教会に来るまでに少し時間が経ってしまっていたので街に着いた報告を女神様にしたい。
教会の入り口近くに来るとドアから数人の男女が賑やかに出てきた。
友人「キャロン、リミカ、本当におめでとう」
友人「リミカ、とっても綺麗だぞ」
街で見かける服装とは違い淡い水色のカクテルドレスを着た花嫁さんらしき女性は幸せそうな笑顔でキラキラしていた。
親族や友人らしき人達も続いて出てきて賑やかで楽しげだ。
アイザック「結婚の誓いをしていたのか」
結婚式⋯⋯私もお色直しは水色のドレスにしようと思っていたっけ。
キラキラと輝いて見える幸せそうな花嫁だった。
アビゲイス「ミツキ?」
話しかけられた事にも気が付かず、ぼーっと見ていると、花嫁が可愛らしい花束を階段上から投げた。
女友人1「キャー!」
女友人2「こっちよ!」
女友人3「私のよ!」
女友人4「結婚したいのよぉ!」
女友人5「あんた達は若いんだから遠慮しなさいよ!」
男友人1「死闘⋯⋯」
男友人2「あの争いを見られたら逆に結婚が遠のきそうだぞ」
争いに最後まで残った2人の女性が、掴んでいる花束をグググと自分の物にしようと力をいれお互いに引っ張ると、手から勢いついて投げ飛ばされ私の手元へ落ちてきた。
みんなの視線が私に集まる。
女友人5「ねぇ、あれって」
男友人3「あの双子だよな?雰囲気がいつもと比べて違うけど」
女友人6「久しぶりに見たわ、あの女の人は見た事ない人ね」
男友人4「あんな綺麗な黒髪⋯⋯初めて見た」
女友人5「昔見た絵本の白雪の妖精姫みたいな黒髪に白い肌だわ」
「あっ、これ⋯⋯」
返した方がいいかな、と思い近くへ寄ると
花嫁「あなたが次の花嫁ね!って既に結婚していたりする?」
「⋯⋯いいえ。おめでとうございます。とっても綺麗です」
花嫁「ありがとう!!」
オープンカーではなく、オープン馬車に乗り、友人たちに幸せそうな笑顔を向けて手を振り、見送られて移動していく新婦と新郎。
ここ最近、すっかり元夫の事を忘れていた自分にビックリした。
思い出すと少し心がザワザワと落ち着かなくなるけれど、それよりも今を大事に、楽しみながら生きていこうと思えていた。
双子と過ごしていたおかげだし、惹かれているのだと気がついてしまった。
素敵な2人だもの。好きになってしまう。
私は“恋”が出来たのね。
それは嬉しいけれど、恋で終わらせた方がいい。
楽しいだけで過ごしたほうが。
「⋯⋯」
アビゲイス「ミツキ?⋯⋯ミツキの結婚式を思い出してしまったか?」
アイザック「夫を思い出して辛いか?」
「えっ!?違う、私は結婚式はしていないの。式の準備をしている期間に亡くなったのだけれど、その時に夫が不倫していた事が発覚して、もう好きでも愛してもいないから思い出しても辛くないわ。ここしばらく忘れていた事にちょっと自分でもビックリしちゃって、ボーっとしちゃっただけなの。馬車が素敵で絵本に出てくる場面みたいだったし、花嫁さん綺麗だったね」
「「そうだな⋯⋯」」
2人には夫を未だに好きだなんて思って欲しくなくて、必死に弁解するような話し方をしちゃった。
教会に入るのも忘れてボーっとしながら歩いて、気がつくと目の前にはすごく高級そうな宿。
アビゲイス「どんな部屋が空いてる?」
「1人用が2部屋、2人用が1部屋、家族用が2部屋ございます」
アイザック「家族用で1つ」
えっ!?
1人には出来ないからと当たり前のように家族部屋へ連れて行かれた。
私と片割れとの2人か、3人の選択肢しかないようだ。
どちらかと2人きりになるよりは3人の方が良い。
☆☆☆☆☆☆☆
『ブーケトス』
昔、ヨーロッパではプロポーズをするときに花束とともに愛の言葉を伝え、この花束を結婚式の時に持つことが、ウエディングブーケの始まりと伝えられている。
時間の流れと共にプロポーズから結婚式にかけて、ブーケを用いるスタイルが定着した。
花嫁が未婚の女性ゲストに背を向けてブーケを投げ、ブーケを受け取った人が次に結婚できるというジンクスがあり、新郎新婦の幸せをお裾分けするという意味が込められている。
14世紀のイギリスで幸せにあやかろうとしたゲストが、新婦のドレスやブーケに触ろうとしたことが、ブーケを投げる習慣に変わったという説がある。




