013 双子の家に到着
食事後お茶を飲みながら、いろいろ聞きたいようだったけれど、女神様の話は出来ないし、日本の話をすると夫を思い出してしまう。
アイザック「いきなりこっちに来てしまって家族とか心配しているんじゃないか?」
「祖父母は幼い頃に亡くなり、両親も数年前に。夫がいましたが世界を渡る少し前に亡くなりました⋯⋯」
アビゲイス「そうか、最近か。⋯⋯辛い上に住む世界まで変わって大変だったな」
アイザック「愛する人を失ったばかりなのか」
愛する人⋯⋯愛してたけれど、私は愛されていたのかな?
不倫はしていなかったんじゃないか?と時々まだ思ってしまう。
警察が夫の携帯を確認した時に、あの女性とのメッセージのやりとりが残っていたので不倫の証拠はあったのに、信じたくない気持ちがまだ残っているのかもわからない。
亡くなる間際に美月、と私の名前を呼んだ理由を知りたいと思う気持ちと同時に、知りたくないとも思う。
「そろそろ寝ましょうか」
アビゲイス「そうだな。ところで3人一緒に寝るのは⋯⋯」
アイザック「ああ、流石にな。俺達はやはりテントにしよう」
「えっ!?あっ!違います、私は上のロフトで!2人は下のベッドで!」
ソファを急いでベッドに変換する。
ロフトへの階段はキッチンスペースにあるからドアを閉めれば完全な個室になるし、男性2人でも充分な広さはあると思う。
アビゲイス「機能的な作りで便利だな。でもいいのか?こっちの寝室を俺達が使ってしまって」
「私は、いつも上で寝ているんです。秘密基地みたいだし、星空を見るのが楽しくて」
アイザック「秘密基地?星空が楽しい⋯⋯、そうか。ならありがたく使わせてもらう」
野営が娯楽に続いて、あえて狭い空間を選び星空を楽しむ?という感性がよくわからない双子だけれど、渡り人だからと納得してみた。
アビゲイス「結界はこのハウスの大きさをカバーできる結界なのか?」
「結界はハウスの機能にはついてないです。結界魔法は使えるので体を覆う大きさで囲むのですが、ランクはCなんです」
アビゲイス「結界の魔道具は持っていなかったのか。テントに比べればハウスは安全だが獣や魔獣だけではなく、人間にも警戒しなければダメだ」
アイザック「ハウスでパールがいれば獣や魔獣とかは平気だろうし、魔の森のこんな奥地だと人間はそうそういないから何事も無かったんだろう。今夜からは俺達の魔道具を使おう」
両手で持てるサイズの箱を見せてもらう。
「これが結界の魔道具なのですね。大きな魔石」
この魔道具の中の魔石は、タイニーハウスの中に設置されていた魔石より大きい。
アビゲイス「これは最上位の結界魔道具だ。結界を常時展開維持するだけでも魔力消費が多いが、物理、魔法共にある程度は防げる」
「私、魔力込めるの手伝えます」
アビゲイス「助かるよ(こんな大きさのハウスを気にせず収納しているくらいだから魔力量は多そうだ)」
アイザック「毎日夜寝る前に、困らない程度に手伝ってくれるだけで助かる」
私とパールは上のロフトスペースに行き、布団に入る。
久しぶりに人と接して会話をして楽しかったけれど、疲れてもいたのですぐに寝てしまい、翌朝は割と早く目が覚めたのに2人はもう起きていたようで、外で素振りのような事をしているのが窓から見えた。
キッチンで朝ごはんを作る。
作るというか以前作ってコピーしてあったピザを4種類と、卵とほうれん草のキッシュ、根野菜のスープに人参サラダをお皿に盛り付け、テーブルに出しただけだけれど。
2人に声をかけようとドアから出ると、アイザックさんがドア近くにいてびっくりした。
「アイザックさん、おはようございます」
アイザック「⋯⋯おはよう」
「どうかしました?」
アイザック「いや、アビーと見分けがついたから。なんでわかった?」
「?何となくというか、見た目や声はそっくりですけど、雰囲気というか上手く言えませんが、違いはわかります」
アビゲイス「へえ、もう俺たちの見分けがつくなんてすごいな」
アビゲイスさんが嬉しそうに言いながら近づいてくる。
「朝ごはんを用意したので良ければいかがですか?」
クリーンをしてハウスに入ってきた双子は、テーブルを見ると子供みたいな嬉しそうな表情になった。
アビゲイス「凄いな。こんなに沢山」
アイザック「全部美味そうだ」
「「「いただきます」」」
パールには負けるけれど、2人も凄い食欲。
本当に美味しそうに食べてくれるので嬉しい。
昨日出会った場所から双子の家までは馬で走れば4時間くらいの距離だけれど、急ぐこともないと馬に乗ったことが無い私の為に時速10キロくらいに抑えて、休憩も小まめにとりながら移動をしてくれ、2
日目の夕方前に到着した。
2階建てのコテージで案内されたのはダイニングルーム。
1階にはリビング、ダイニング、キッチン、トイレ、2階にはサウナ、個室が3部屋。
大きなソファとテーブル、ダイニングテーブルセット、無駄なものはない、すっきりとしたお部屋。
夕飯はステーキを焼いてくれるというので、パン、スープ、サラダは私が提供させてもらった。
アビゲイス「2階にゲストルームがあるから案内するよ」
シングルベッド2つと、1人用ソファ2つとテーブル。
スタンドライト、4段チェスト、シンプルで落ち着いた部屋に案内された。
アビゲイス「ミツキ、パールおやすみ」
アイザック「明日は無理して早く起きなくていいから」
「おやすみなさい」
部屋に入りクリーンをして着替えてベッドに入る。
「本当に良い人たちね。何かお礼が出来たらいいんだけど。何がいいと思う?パール」
『美月の作ったものを美味いと喜んでいたじゃないか』
「助けて貰ったのと、この世界の事も教えて貰ったのに、料理したものだけだなんて。でも前の世界の物で何か問題があっては困るし、こっちの世界の物は何も持ってないのよね」
街に行って何か探してみよう、と考えながら眠りにつく。




