126 冒険者ギルド
この土地に王都が作られてから50年くらいと言うだけあって道も建物も綺麗。
建物も似た造りだけれど、あの日の丸のようなタペストリーが遠目でも目に入るのでギルドはすぐわかった。
ギルド内に入ると時間帯的に冒険者が多いようでガヤガヤと賑やかな雰囲気だったけれど、私達に気がつくとピタッと会話が止まり、気が付けばギルド内全体が静かになっていた。
受付には女性しかいないから嫌な予感はしたけれど仕方なく誰も並んでいない席に行く。
アイク「ギルマスに面会は?」
受付嬢「少々お待ちください」
スムーズに案内されそうだと思えた中、少しして戻ってきた受付嬢。
受付嬢「アイザック様、アビゲイス様、お待たせ致しました。ご案内致します」
歩き出してすぐピタリと受付嬢が止まった。
受付嬢「アイザック様とアビゲイス様だけのご案内になります」
美月を蔑む視線で見ながら低音で話す受付嬢。
アイク「それはギルマスの指示か?お前が勝手に決めたのか?」
受付嬢「⋯⋯怪しい方はご案内できないので⋯⋯」
アイク「俺達の伴侶だ。そもそも俺達が連れている時点でお前から許可を貰う必要はない」
アビー「もう案内はいらない」
受付嬢「得体の知れない場所から来た女と結婚するなんて⋯⋯」
アイク「あ?渡り人の事を言ってるのか?殺すぞ」
アビー「渡り人だとしてお前に関係ないし、渡り人は稀有な存在だ」
受付嬢「っ!!稀有なんだから他にもいるでしょう!渡り人は望めば選び放題じゃない!なんでこの2人なのよ!私はずっと前から好きだった!何年も前から!一年に一回会えるチャンスがあるギルドで働き続けるために何人もの求婚を何度も断っていたのに!中には男爵様もいたのよ!でも男爵じゃこの2人と比べて見劣りするから嫌なのよ!自慢できる結婚じゃなきゃ王都で称賛されないわ!」
アイク「何年もってお前の事は知らない女で、ギルドの受付だという認識でも覚えていない」
受付嬢「!!!⋯⋯私はギルド受付嬢人気ランキング1位なのよ!!」
近くにいた冒険者1「人気ランキング?そんなのあったか?」
近くにいた冒険者2「聞いたことないよな?」
「誰かと比べて2人を選んだ訳ではなく、称賛されたり自慢したいからでもなく、共に生きて歩んでいきたいと愛した相手がアイクとアビーだっただけです」
「「ミツキ」」
2人にギュウギュウと抱きしめられ少し苦しい。
受付嬢「うるさい!うるさいぃ~~!!!」
ドカドカと階段を駆け下りる音がして視線を向けると大きな体の男性だった。
マスター「なんだ、なんだ?なんの騒ぎだ!?」
近くにいた1人の冒険者が説明してくれた。
マスター「⋯⋯はぁ~~~、ローズ、自分の感情を仕事に持ち込むな。しばらく謹慎だ、すぐに帰宅して頭を冷やせ。お前達は俺の部屋に来てくれ」
2階の階段から近い部屋がマスターの部屋みたいだけれど、カーテンやラグ、テーブルクロスなどが小花模様や繊細なレースでマスターとのギャップが凄くある。
マスター「コーヒーでいいか?淹れるからソファに座っててくれ」
「よろしければストックしてあるのでお出しします」
マスター「いいのか?ありがとう」
コーヒーとシュガーポット、ミルク、マシュマロを乗せた小皿も。
さっきの騒動で疲れたのか甘いコーヒーにしたくてマシュマロを2つ入れた。
マスター「ん?なんだそれ?」
「マシュマロといって少し硬めの生クリームみたいなものです。甘いのが苦手でなければお使いください」
アビー「俺はこっちのチョコマシュマロだな」
アイク「俺もチョコだな」
マスター「チョコ?白いのと茶色のとどう違うんだ?」
アビー「直接食べてみろ」
マスター「モグモグ。面白い食感だ。雲を食ってるみたいだな。雲は食ったことないが。白は確かに生クリームを少し固めたような感じだ。モグモグ。茶色のは甘い中にほのかに苦みを感じるのに嫌な苦みじゃない。美味い」
チョコマシュマロをコーヒーに4つも入れるマスター。
マスター「うん、美味い。コーヒーに溶けると食感も変わるんだな。最近流行ってるのか?」
アビー「いいや、ミツキが開発したやつで後で商業ギルドで登録する」
マスター「すげえな、渡り人だとは聞いていたし魔法の凄さも聞いていたが食品方面でも凄腕なんだな、それにしてもうちのギルド員が済まなかった。あれでもマシな方なんだ。結婚したってニュースが流れてきた直後はもっと荒れてたんだぞ。婚約の話の時は誰も信じていなかったんだが、結婚が真実だって知った女冒険者なんて朝から夜中まで酒飲んで仕事をまったくしないから依頼用紙が溜まりまくった。ギルド員も仕事はなんとかするが死んだ魚のような目でやる気がまったく感じられなくて。俺は結婚の話が流れて来た時も顔の似た別の双子の話かと思ったくらいだ。お前らに似た双子なんているわけないだろと受付の女達にドヤられたが。まぁ、時間が経てば落ち着いてくると思う」
アイク「ミツキのランクアップの件で来た」
マスター「ああ、アシアのギルドから連絡はきてた。なんでも最終ボスのイリエクロコダイルを短剣でとどめを差したのが嫁さんらしいな。あれは心臓の場所が分かりにくいだろう?個体によって微妙に位置が違うし、何かピンポイントで心臓の位置がわかるのか?」
アビー「いいや、心臓じゃない」
マスター「心臓じゃないのにとどめを差せたのか?頭は硬いよな?」
双子の視線がマスターの股間にいく。
マスター「えっ?まさか⋯⋯」
開いていた足を閉じて顔を青白くさせたマスター。
マスター「虫も殺さないような見た目で恐ろしい攻撃するんだな⋯⋯今回でBランクにする、パーティーランクもBだ」




