124 夜空の散歩
湖が少ない砂地の広いところにコテージを出しパール達は就寝。
外に出てみると音の無い世界に月明かりの中、延々と広がる夜空と砂の世界だけ。
「まるでアラビアンナイトの世界ね」
アビー「空飛ぶ絨毯の物語だったよな?」
「ふふふ、物語的なメインは願いを叶えてくれるランプの魔人なのだけれど、私は魔法のランプより絨毯の方に憧れたな。宮殿の中の世界しか知らなかった姫が見たことのない広い世界を初めて体験できたの。私も病院の中から見えるのは狭い窓枠の中の空だけで、空はどこまでも広いはずなのに、って思ってた時にこの物語を何度も読んで、私も空の広さを感じたい、遠くの国々を見てみたいって思っていたの」
アイク「夜空を散歩しよう」
魔力がある限り落下の可能性は無いが、1%でもミツキを危険に近づけたくないから目的が無いと夜間は使わない様にしていた双子だし、空から景色を見たいと思った事もなかったが、ミツキに空からの景色を見せたいという思いと目的が出来た。
美しい自然を見ても「美しい」とは思うが、感想というだけだ。
でも、素敵だと感動したり嬉しそうなミツキは見たい。
どんな美しい自然よりも見たいと思う。
空飛ぶ砂場に乗り、夜空の散歩にでかける。
上空は地上よりも寒いから結界を。
コテージを見失わない範囲での散歩だけれど、視線の下は一面砂の世界。
奥には真っ暗な海と反対側遠くには街らしき明かり。
地上からは見られない景色を前後左右、見るのに忙しそうな美月を見て笑う双子。
「もうっ!笑った?」
アイク「可愛くてな」
アビー「物語の姫もこんな風に喜んだんだろうな、と思って」
「夜空の散歩が1番好きな場面だったの。
♪見せてあげよう、輝く世界
どこまでも続く無限の空
目を開いて、この広い世界を
魔法の絨毯に身を任せ
大空、月は美しく
誰も僕ら引きとめ、しばれはしない
大空、星も美しく
ときめく胸
初めてあなた見せてくれたの
素敵すぎて、信じられない
きらめく星はダイヤモンドね
大空、初めての世界
流れ星は不思議な夢に満ちているのね
星の海を、どうかこのまま
愛する人とずっと一緒に見つめよう
このまま、世界を、見つめて、いつまでも♪」
アビー「セリフのような歌だから耳だけでも演劇を見ている感覚になるな」
アイク「歌だけで物語の情景が感じ取れる」
夜空の散歩を終えてコテージまで戻り、中には入らず外でアウトドアソファを出してお酒を楽しむ。
気温は低いけれど、少し厚着をして焚き火をすれば暖かい。
早い夕飯だったから、おつまみも少しボリュームのあるものを。
焚き火に網を置きチーズフォンデュ。
チキンにウインナー、野菜に濃厚なチーズが絡んで美味しいし、体も温まる。
辛口の白ワインが凄く合う。
ネットショップで魔法のランプデザインのオイルランプを買ってテーブルにのせる。
挿絵が多い魔法のランプの本を出して2人に読み聞かせる。
「昔ある国のある街にアラジンという~~~~~~~洞窟に閉じ込められてしまいました」
物語の途中でパタンと本を閉じる。
アイク「眠くなったか?」
「ううん。脱出できるか続きが気になるでしょう?」
アビー「魔人に助けてもらうんだろう?」
「願いは3つだけだからなるべく願いを使いたくない主人公は別の方法で洞窟を抜け出すの。続きは明日の夜ね」
アビー「気になるな」
アイク「ああ」
「アラビアンナイトは千夜一夜物語という名前でもあって。砂漠の王様が妻に浮気されて殺してしまったの。その後に続く妻にも浮気される夢を見てしまい、夢を見た後は次々と殺してしまうのだけれど、ある大臣の娘が自ら妻になり王に毎夜物語を聞かせるの。その中の1つの物語が魔法のランプ。毎回物語の気になる場面で話を終えてしまうから、続きの気になる王様は妻を殺さずに毎夜話を聞くのを楽しみに待つようになるの。物語に夢中になり悪夢も見ないまま気がつけば1001夜が過ぎ、悪夢から助けてくれた妻に心を動かされ、彼女を終生の妻にすると誓うの」
アビー「なぜ1000じゃないんだ?」
「たぶん100とか1000、区切りのよい数字だと終わりの数字にも思えるからかな?終わりがない、完結しない続きが感じられるようにだと思う。バラも100本だと100%の愛だけれど101本は100%以上の愛がある、普通は100%で終わりだけれど、%では表現できない程の無限の愛。終わりなく、これからも続いていくという可能性を感じられるからかな」
アビー「なるほど。まぁ俺達は一日目から愛しさを感じていたが」
アイク「ああ。1000日もいらないし、終わりもない」
「ふふふ、それだと一夜物語ね」
☆☆☆☆☆☆☆
『アラビアンナイト、千夜一夜物語』
アラジンと魔法のランプ、アリ・ババと40人の盗賊、船乗りシンドバッドの冒険などの有名作を含む中東・南アジアの民話や伝承をまとめた物語集。
最初の妻に裏切られ、その後に続く妻達をも処刑する王の残虐な習慣を止めるため、大臣の娘が自ら嫁ぎ、毎夜物語をよい所で止めて次が気になるように語り継ぐことで王の心を動かし、裏切られた痛みを忘れさせ、癒し愛を語り合うようになる。
「千一夜」という数字は、アラビア語で「数えきれないほど多い」ことを示す慣用的な表現として使われている象徴的な数であって正確に1001話あるわけでは無く、最も古い現存する写本では282夜、物語の数としては40話分しか無かった。




