119 ルーペ
買い物で3日くらい滞在する予定なので、フラシルへ戻る移動の為のフェリーの予約をしにいくと掲示板にポスターが貼ってあり、7日後に祭りがあると書いてあったので滞在を延ばす事にした。
近くで精霊の家がないか販売員に質問すると、すぐ近くと小型フェリーで8時間の距離にも1つ。
フェリー移動が必要な精霊の家へ先に行く事にして、アイスとウインドを港近くの厩舎に預けて船の旅。
2人は採掘した宝石や鉱石を磨いたりカットしたり、私は水晶を使って物作り。
フラシルの黄金砂丘で沢山採れた水晶を使って何か作れないかな?と考えていたのだけれど、こちらでは紫水晶のアメジストは高めの宝石になるが、無色や他の色水晶はドレスや小物、インテリアなどに良く使われるけれど、アクセサリーの宝石としては、あまり人気はない。
なのでアクセサリーではなくルーペを作ろう。
こちらにはルーペも老眼鏡もない。
そして、そもそも視力は基本的にみんな良い。
私のいた世界でも大昔は遠くを見る機会が多く、本は贅沢品で夜は早く寝る、スマホも無かったから視力は良い人ばかりだったとテレビ番組でやっていた。
それでも年を取ると小さな字は見えにくいし、老眼になる。
こちらの世界では若くても病気などで視力に問題がある人は居るようだけれど、治癒魔法である程度は見られるようになるのだとか。
老眼は病気や怪我では無いので治癒魔法は効かない。
そして年をとって見えにくくなっても通常の生活にはそこまで支障は無く、老いとはそういうものだと受け入れる。
元々今でも早く寝るし、本自体が贅沢品でスマホはないから細かいものを見たり書いたりする一部の文官職の人達が苦労するくらい。
ルーペと老眼鏡の違いはルーペは拡大する、老眼鏡はピントを合わせる、なので目の程度によっては拡大とかの問題ではなく、老眼鏡でなければ見えないという事はある。
ガラスの話になるがもともと、どこの国でも多くの地域で水晶(石英)は採れ、窓ガラス、シャンデリアや花瓶、ポーションや飲料の瓶、インテリア置物など、たくさん利用されているのだけれど、一番は窓ガラスへの加工。
ガラスには水晶のみで作る水晶ガラスと石灰などを混ぜたガラスがあり、水晶ガラスの方が頑丈で高級になる。
素材が水晶のみになるから高くなるのは間違いではないが、加工時に溶融 1,700℃ ~必要で石灰の方は1,200℃ ~ と手間がかなり違うので水晶ガラスは王宮や高位貴族、豪商などの一部の者達しか手にできないくらい高級品になる。
見た目はそこまで変わらないが軽さと耐久性は水晶ガラスが強く、何より熱に強い。
水晶が約1,100℃、石灰が約400~600℃と倍近い差の耐熱温度。
よく防犯番組で泥棒がガラスをバーナーで熱くして急激に冷やすと割れて鍵を開けられる、という放送が流れていたけれど、水晶のみで作ったガラスは熱した後、急速に冷やしても割れない。
特殊な装置でしか1,100℃以上になんて熱する事はできないのだから。
それと、いろいろな薬品にもほぼ影響されない。
もともとルーペは水晶のみより石灰ガラスの方が向いている。
家のガラスのように防犯的な熱に対しての強さは必要ないのと、石灰を混ぜたものより水晶だけのほうが加工しにくいうえに価格が高くなる事、ルーペのレンズにおいて重要なのは光を曲げる力(屈折率)だから加工しやすいほうが良いのだ。
加工しやすいといっても専用の道具がなければ高熱での加工はできないので、ギルドにやってもらおう。
魔法水晶は高級素材だけれど、火魔法で加工しやすいので私でも扱える。
軽い、割れにくい、透明度が違う、光が反射する時の美しさが違うので、素材としては普通の水晶より4倍は高い値段になるけれど。
そして老眼鏡とルーペの違いの話に戻るが、ルーペのガラスは両面の真ん中が膨らんだ形で拡大させたいものの近くで使い、老眼鏡は片面側が凹み、反対の面側が膨らんだ皿のような形で瞳のピントを調節するものなので目のすぐ近くで使わないと見えない。
でも眼鏡が無い世界だから、見た目的に眼鏡は拒否感があると思う。
仕事で相当老眼の程度が深刻なら使うかもしれないし、使う人が増えて当たり前になれば平気だろうけれど。
マダムがしてるイメージのチェーンをつけてネックレスのようにすると、アクセサリー的に見えて良いかな?とも思う。
ネックレスは円形の枠にルーペガラスを嵌めたもの、デザイン加工された金属の蓋。
この蓋をスライド出来るようにすると普段はネックレスとして、ルーペとして使いたいときはスライドさせて蓋が持ち手替わりになる。
蓋は2種類。
男女共に使えるデザインで1つは真円で細工デザインの隙間から下のガラスが少し見えるタイプ。
もう一つは蓋が真円ではなく、デザイン性のあるものにして隙間から見える下のガラスの面積が多いタイプ。
デザイン画を見せてアイクに魔法銀を加工してもらう。
アビー「これは年配でなくても売れそうだぞ。魔道具作りなんかでも細かい細工の時に良さそうだ」
「そう?それならネックレスじゃなくて手鏡サイズもあると良さそうね」




