011 双子冒険者
アイザック「おい」
声が聞こえて目を開けると、日が落ちてしまったようで、月と星が見える。
月の明かりが強いから視界はクリアで、横たわる私を支えていてくれている人と、私の正面には膝をついて見下ろしている男の人がいた。
アイザック「大丈夫か?」
地球では聞いたことのない言語だったけれど、自然と理解はできて不思議。
それよりも気を失っていたし、結界で魔力を相当使ったみたいで大丈夫じゃない。
髪は銀色で、切れ長の目で吸い込まれそうな綺麗なブルーの瞳。
昔見たブルームーンを思い出した。
物語に出てきそうな美丈夫は力強い眼差しで、その人は私と目が合うと一瞬目を見開いた。
アビゲイス「どこか痛いところはないか?」
私をしっかり支えてくれている人が聞いてくるけれど、声がそっくり。
視線を向けると双子?に思えたその人も、私と目が合うと一瞬目を見開いた。
双子の男神様?
でも冒険者のような服を着ている。
アビゲイス「ケガはしてないよな?魔力切れか?」
アイザック「ケガはなさそうだから魔力回復のポーションを飲ませよう。これを飲んでくれ」
小さな瓶を渡され飲むと少し苦味があるけれど、スーっと楽になってきて眩暈が落ち着いてきた。
「あ、あの⋯⋯ありがとうございました」
やっと声が出てきてお礼を言う。
アイザック「何語だ?」
アビゲイス「共通語以外を使っている国なんてあったか?」
私が発する言葉は通じないみたい。
「すみません。ありがとうございました」
こちらの言語だろうと意識して話そうとすると話せた。
アビゲイス「良かった。共通語も話せるのか。怪我はないか?一人でこんな森の奥深くに?」
アイザック「一人では無理だろう。誰かとはぐれたのか?」
「従魔のウルフも一緒だったんですが、魔獣が出て」
双子「「魔獣!?」」
私を支えていない方の人が立ち上がり、剣に手をかけ周りを警戒しだした。
そこへ大きな何かを背中に乗せながら、パールが戻ってきた。
鹿のようだけれど、私が知っているバンビのようなかわいい鹿ではなく、パールより背丈が大きく筋肉モリモリな体と足、大きな角があり喉から血が出ていた。
ドサリと鹿もどきを地面に落とし、こちらをじっと見て、双子を警戒しているようだが、双子もパールを警戒している。
「パール!」ノロノロと起き上がり、パールに近寄り抱きつく。
アイザック「ウルフってシルバーウルフだったのか。普通のウルフよりかなりでかいな。亜種か?」
アビゲイス「ウルフがいたとしてもまさか女一人で今まで移動して野営していたのか?」
信じられない。という顔で見てくる双子。
アイザック「とりあえず少し移動しよう。水辺だし魔素が強いポイントだ」
アビゲイス「街と俺達の家の方向、西に移動するか」
助けてはもらったけれど、知り合ったばかり。
「えっと⋯⋯その」
『美月、さっきは敵かと疑っていたからか、殺気を感じたが今はもう無いし、嫌な思惑、気配もしないから大丈夫だ』
頭の中に直接聞こえてきた念話にビックリしたけれど、パールが話せるのは知られないほうがいいよね。
一緒に行動するのは勇気がいるけれど、この2人は信じていいような直感があるというか、信じたい、と思った。
「ありがとうございます。ご迷惑でなければお願いします」
アイザック「俺はアイザックで、こっちが弟のアビゲイスで双子だ」
「美月といいます。この子はパール。助けて頂き本当にありがとうございます」
アビゲイス「よし。出発するか。馬はどこに繋いでいる?」
「えっと、馬はいなくて」
アイザック「まさか徒歩で移動していたのか?」
「⋯⋯時々、パールに乗せて貰ったり」(乗ったことはない)
双子「「⋯⋯」」
マウンテンバイクはこの世界には無さそうだから言わなかった。
アビゲイスさんの馬に乗せてもらう事になったけれど、パールを抱きしめたときに私にも血がついてしまっていたので困った。
「あの、すみません。血がついてしまうかも」
アビゲイス「クリーンしようか?」
??クリーン?と思っているとふわっと、そよ風のようなものを感じたら服の汚れとパールに付いていた血も落ちていた。
「すごい。ありがとうございます。こんな魔法あるんですね」
アイザック「知らなかったのか?クリーンを?」
どうしよう。知らないのはおかしい事だったんだ。
シャワーは使えていたし、クリーンという魔法は知らなかった。
後々知った事だけれど、クリーンは魔力消費は多いが人間は基本使える無属性魔法でパールには使えない魔法だった。
質問されても答えに困る事ばかり。どうしよう。
「⋯⋯」
アビゲイス「渡り人なのか?」
「渡り人?」
アイザック「違う次元、世界から渡ってきた人の事だ」
アビゲイス「頻繁にじゃないが、渡り人は過去にもいる。最後の渡り人は何十年も前で隣国の話だから詳しくは知らないが、異なる世界から来たようだ」
私みたいに異世界転移している人がいるのね。どう話せば良いのか困っていたから助かった。
知らない事は知らないと言える。
「たぶん、その渡り人だと思います。こことは異なる世界から来たので知らない事が多くて」
アイザック「確かに黒目はどの国にもいないはずだから不思議だったが渡り人だったのか」
そういえば初めて会った時、二人共びっくりした表情だったのは黒目が珍しいからだったのね。
母がハーフでワンエイスな私は、わりと明るい茶色の瞳と栗色の髪だったけれど、こっちの世界では黒くなっていて不思議だった。
でも女神様に体を作って貰ったし、日本で見慣れてはいたから深く考えなかった。




