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第28話 ダンジョン発見の報告を! 発見した訳じゃないけどな!



「また、あの商人からの手紙を読んどるのじゃ?」

「ああ。ガルーダってギルドマスターはもう来てないらしい。その代わり丁寧な謝罪の手紙が冒険者ギルドから届いたってさ。カイラッドさんに」

「エニシさまではないのじゃ?」

「ボクにも送ってきてるみたいだけど……カイラッドさんはそれを勝手に読んだりしないだろ。ボク宛てなんだし」

「それはそうなのじゃ」


 ドリカのダンジョンの奥でのんびりしながら、フクロフクロウ宅急便が届けてくれた手紙を読んだ。


 手紙を書いたら、手紙が返ってくる。

 まあ、それが礼儀ってもんだろうと思う。


 ボクだけでなく、カイラッドさんにも謝罪の手紙が届いたのはいい。

 そういう対応をしてくれるまともなギルド職員はちゃんといるってことだ。


 あのギルドマスターが特別ダメな感じなのか、それとも……そういう暴力装置みたいな人材も必要ってことなのか。

 まあ、必要だろうな。冒険者ギルドには。


 ボーダントの冒険者ギルドでも、隣国から移ってきた連中がモメて暴れてたし。


 ……ガルーダって人はボーダントのギルドの方が向いてるんじゃ?


 あそこのギルドマスターは、ちゃんとした人だったな。

 衛兵から守ってくれたし。


 ギルドマスターが交代すればいいのに。


 ボクはそんなささやかな願いを心の中でつぶやいた。


 考え事をしてるボクに、ミカゲが寄り添うようにして甘えてくる。

 可愛い。このまま襲ってしまいそうだ。


「……ドリカの話だと、エニシさまとわらわがあと3日もここにおれば、魔力は十分貯まるそうじゃ」

「そっか。それならあと3日はここで楽しもうか。あ、そういえばカイラッドさんの手紙にちょうどいい家が見つかったって書いてたな」

「おぉ、それはいいのじゃ。これで町に行った時も遠慮なく声を出せるのじゃ」

「いや、その家にはダンジョンの裏口をつなぐから、ここに戻ればいいだけなんだけど……」


 あと、ボクとしては……声を出さないように我慢してるミカゲにすっごくドキドキするから。


 ……別にそのくらいなら、おかしな性癖ってこともないよな? 比較対象がないからよく分からんけど、問題ないはず。


 カイラッドさんが見つけてくれたフランドールの家は、建物よりも庭が広いところだ。

 従魔を庭で飼えるように、そういう家を探してもらっていた。キンタサイズの熊は普通の庭だと無理だし。


 見つかったのはなかなかいい物件で、もう買い取ってくれたらしい。

 ボクが卸してるグリーンウルフの抜け毛とか、ハチミツとか、オークの肉とかで資金は十分足りてたみたいだ。


 ま、そことダンジョンの裏口をつないだら、大浴場があるこのダンジョンに戻るつもり。大きなお風呂がある生活は手放せない。


 ……そうすればドリカも喜ぶし。


 異世界に召喚されて……ミカゲといい、ドリカといい、とにかく……他人の温もりってもんが、すごく支えになってる。


 元の世界……日本で暮らしてた頃は、友達はいたけど彼女はいなかったし、誰かの温もりとかはそんなに感じてなかったと思う。

 それでも、特に問題はなかった。あの世界では。ボクはそう思ってる。


 やっぱり……ボクも心のどこかで孤独を感じてるのかもしれない。


 異世界にいる、異物でしかないボク。

 それを受け入れてくれるミカゲやドリカの存在は大きい。


 たとえ……求められてるのはボクの魔力だったとしても。






「……伯爵様に報告したいことがあるので、連絡してもらえないでしょうか」

「伯爵様に? いや、流石にそれは難しい。とりあえず、お屋敷の執事殿には連絡できなくもないが?」

「あ、それでも十分ですから、どうか、お願いします」


 フランドールの町の門で、門番の衛兵にそんな話をした。


 ボクはついに……フランドール近郊の森の中へと、ダンジョンの出入口をつないだのだ。

 そして、その第一発見者として……初の探索者として、伯爵に報告するつもり。


 新しいダンジョンの発見を報告すれば大手柄らしい。

 それが有益なものでも、危険なものでも、どちらでも大手柄だ。


 有益なダンジョンなら説明するまでもないだろう。


 危険なダンジョンだったら、その対策を急がなければならない訳で。

 領主として伯爵は早く知りたいはずだ。


「……それで、何の話を伯爵様に報告するつもりなんだ?」

「それは……ここだけの話にして下さい。実は……」


 ボクは門番の衛兵に近づき、耳元で囁く。


「……森の中でダンジョンを発見しました」


 ぐるっと急にボクの方を向いた門番の衛兵は、尋常ではないくらい目を見開いていた。


 ……そこまで驚くようなことなんだ?






「……ダンジョン発見との報告ですが、間違いないのでしょうな?」

「間違いないです。中に入って4層までは確認しましたので」

「中に……? 既に4層までと……? 探索してきたとは……しかも、そこまでもう育っているダンジョンなのか……」


 領主館の応接室で、ボクは執事さんと話してる。

 伯爵様は今、いないらしい。


「……危険性はどうなのです?」


(暴発……魔物が溢れ出ることを心配しとるのじゃ)


 ミカゲが執事さんの発言の意図をこっそり教えてくれて助かる。


「……とりあえず、すぐに魔物が溢れ出るような状態ではなかったと考えています」

「たとえそう感じたとしても、可能な限り早く、調査が必要です。騎士団と衛兵を動かす準備をしますが……君に案内を頼んでもよろしいでしょうか?」

「はい、もちろんです」

「そうですか……助かります」


 執事さんは複雑そうな表情になってる。

 ボクが危険は少ないと報告しても、それを信じる訳にはいかないんだろう。


「……明日、朝からすぐに南門を出ます。そこに来るように頼みます」

「分かりました」

「それにしても……」

「はい?」

「……なぜ、冒険者ギルドではなく、こちらに報告を?」

「あれ? 冒険者ギルドの方がよかったでしょうか?」

「いえ。逆ですね。こちらに知らせて頂いて感謝しています。くれぐれも、まだ冒険者ギルドには情報を漏らさぬようにお願いします」


 キラン、と執事さんの目が光る。

 どうやら冒険者ギルドにはまだダンジョンのことを知られたくないらしい。


 ……門番には話したから、そっちから漏れたら責任は取れないけど。


「……ここに連絡してくれた門番にはダンジョンのことを話してしまいましたけど?」

「ああ、彼はもう口止め済みです」

「あ、そうですか……」

「ギルドが先に見つけると……ダンジョンの利権の半分くらいは譲らなければならなくなるので……今回の報告は本当にお手柄ですよ。伯爵様も喜ばれるはず。褒美は期待してもらっていいです」


 ……あらまあ。狙ってた訳ではないけど。


 どうやら冒険者ギルドの利益を大きく削ってしまったらしい。

 これに関してはわざとではない。


 そういう可能性はあるかも、くらいには考えてた。その程度だ。


 わざとじゃないけど……あのギルドマスターが嫌いなボクとしては、運が良かったと思う。


 せっかくだから、この執事さんには……冒険者ギルドに情報を持ち込まなかった理由も説明しとくとするか……。






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