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第27話 謝罪って、何だっけ……? (遠い目



「どうも、カイラッドさん」

「ああ、エニシさん。無事にお戻りで何よりです」

「それよりも……手紙に書いていたあの話は……」

「……ええ。冒険者ギルドからギルドマスターが毎日のように来ますよ。エニシさんに謝罪したいと、ここに」


 ミカゲ、ドリカと3人でいちゃいちゃするダンジョン生活を切り上げて、ボクは久しぶりにフランドールの町へと戻ってきた。


 フクロフクロウ宅急便に入ってたカイラッドさんからの手紙に、ギルドマスターが謝りに来てるって書いてあったからだ。


 ギルドマスターの謝罪はどうでもいいけど、カイラッドさんに迷惑をかけるのが嫌って話。


 ま、その謝罪も……カイラッドさんがホーンラビットの肉やオークの肉を安く大量に卸してるからだと思う。


 カイラッドさんとボクとの関係は冒険者ギルドでもつかんでる可能性が高い。

 護衛依頼を指名で受けて、ここ、フランドールまで一緒にやってきたからな。冒険者ギルドに記録が残っててもおかしくない。


 だから……カイラッドさんの肉の仕入れ先は……特に、オークの肉の仕入れ先はボクだと思ってるんだろう。


 冒険者ギルドとしては、その肉をカイラッドさんじゃなくて冒険者ギルドに卸してほしいってところじゃないか、というのがボクとミカゲの予想。


 もちろん、冒険者ギルドに卸すつもりはない。


 カイラッドさんがもうかればボクももうかるという仕組みだから。

 そこに冒険者ギルドを組み込む意味はない。


 ホーンラビットはともかく、オークの肉は割と高級な扱いらしい。

 それをあのギルドマスターがいる冒険者ギルドに卸すとかあり得ない。脳筋まではともかくとして、戦闘狂は関わりたくない相手だ。


 あの場面でギルドマスターをボコるのが物語としては、ボク、何かやっちゃいましたか的な展開かもしれない。でも、そんなの関係ない。


 なんでボクがあのガルーダって戦闘狂なギルドマスターの言いなりにならなきゃいけないのか。

 あのギルドマスターの思い通りに動くなんて、ボクには我慢できない。


 だから――。


「おーっ、いたいたいたーってばよ! 門番から聞いて走ってきたってば! あん時ゃすまなかったなってばよ! 謝るってば!」


 ――ガルーダが謝罪してきても、許すつもりは、ない。


 いや、そもそも、全然謝罪されてる感じがしないんですけど!?

 この脳筋戦闘狂は常識が足りないのでは!?


 たぶん、かなり強いんだろうと思う。

 今のボクだと、4:6くらいで負ける可能性が高い。そんな感じ。


 ミカゲに『鑑定』してもらえば、もう少し力の差がはっきりするかもしれない。


 でも、強いから……そういう人間だから自由気ままで自分勝手な振る舞いができるってのは……。


 この腐った異世界ならではって感じで、すごく嫌な気持ちがする。


 ……ボク自身も、かなり強くなってきたから。たぶん、そういう嫌なヤツになりかけてる。だからこそ、気持ち悪さを感じるのかもしれない。


 おそらくあの時の模擬戦を受けていたとして……きっとガルーダは手加減をしてくれたと思う。

 同時に痛い思いもしただろうけど。ボクが。


 でも、そういうことじゃないんだよな。手加減すればいいって話じゃない。

 他人を好き勝手に巻き込む態度が、気に食わない。


 別にガルーダや、冒険者ギルドと対立したい訳じゃない。

 ただ、ガルーダって人は、ボクとは合わないタイプの人なんだろうと思う。


「……カイラッドさん。奥に入らせてもらっても?」

「え、ええ。どうぞ、中へ」


 ボクがガルーダを完全に無視したまま、振り返ることもなくカイラッドさんに話しかけると、ほんの少しだけカイラッドさんは戸惑いつつ……それでもボクを中へと導いてくれた。


「お、おいおいおおいぃぃってばよ!? 悪かったってばよ!?」


 いや、本当に謝罪されてる気がしない。

 なんだあの謝り方は?


 ボクはそのままガルーダを無視し続けて、カイラッドさんのお店の奥へと姿を消した。






「……一応、冒険者ギルドのギルドマスターというのは……かなり高位の存在なので、あれでいいんでしょうか?」

「ボクの態度は……まあ、よくはないと思ってます。でも、高位の立場にあるからこそ、好き勝手に振る舞うのはおかしいってボクは思うんです」

「ああ、エニシさんがおっしゃりたいことは……よく分かる気がします……」


 カイラッドさんも……ボーダントの町で理不尽な目に遭ってきたもんな。

 分かってもらえると思ってた。


「ボクがたまたま、対抗できるだけの力がある。それだけのことで、ボクのような力がなかったら、あの人にめちゃくちゃ振り回されることになるんです」

「そうですね。そういうのは……嫌なものです」


 うんうん、とカイラッドさんも力強くうなずいている。


 ボクの気持ちは分かってもらえたと思う。

 でも、それでも……このままだとカイラッドさんに迷惑をかけっぱなしになってしまう。


 いや、マジでボクの嫌がるところを突いてくるよな!?

 あれ、狙ってやってんのか? 脳筋っぽいのに!?


 天然だったとしたら、マジでボクとは合わない感じの人だろ……。


「……カイラッドさんは今、冒険者ギルドに依頼を出したり、取引をしたりとか、そういう関係がありますか?」

「今はないですが……ただ……どこか他の町へ行く場合は、どうしても護衛依頼を出す必要がありますね」

「そうすると……このままだとマズいですかね?」

「あ、いえ……もちろん、こちらとしては冒険者ギルドよりもエニシさんを最優先で動きますよ」


 カイラッドさんは微笑みを浮かべながら、そう言ってくれた。


 ありがたい言葉だけど、それをそのまま信じる訳にはいかない。

 ボクはカイラッドさんに我慢させたい訳じゃないから。


「とりあえず、冒険者ギルド宛てに抗議の手紙を書こうと思います」

「なるほど。穏便な手のひとつではありますね」

「届けてもらってもいいですか?」

「もちろん」


 冒険者ギルドのトップであるギルドマスターがあんな人だったとしても、他のギルド職員の中には話が通じる人もいるはず。


 そもそも、ボクに謝罪させようって言った人、させてる人が必ずいる。

 アレは自分から謝ろうとするタイプじゃないだろ。


 だから……今の状態だと謝罪になってないし、より関係が悪化するかもねって話をうまく伝えたい。


 ……あのギルドマスターが関わってこないんなら、冒険者ギルドに行ってもいい。それならオークの鼻とか、オーガのツノとかで討伐報酬が手に入るからな。


 下らないケンカでそういう損を飲み込むのも……もったいない。


 まあ、冒険者ギルドからの頼みは引き受けないってスタンスで、どうにかひとりの冒険者としての換金ができるようにしたいところだ。


 あんな失礼なヤツがいるんなら、何かを頼まれても断る理由になるだろ!?


 まずは……謝罪に来てるつもりで、逆に迷惑になってること。

 そもそも謝罪してるように見えないし、聞こえないこと。

 謝罪に見せかけて嫌がらせをしているのではないかと感じていること。

 謝罪して、それでどうしたいのかが全く分からないこと。


 それから……できればガルーダとはこの先も関わりたくないこと。

 ガルーダが絡んでこないのなら、冒険者ギルドに顔を出してもかまわないと思ってること。


 だからといって、冒険者ギルドからの依頼を引き受けるつもりもないこと。

 オーガのツノやオークの鼻の分で冒険者としてはかなりの金額分の損害が出ているけど、そこはもうあきらめようと思ってること(本当は思ってないけど嫌味で書いとく。書いといたら払ってくれるかもしれないから)。


 これくらいだろうか。


 書いたらカイラッドさんに読んでもらって、問題があるようなら書き直そう。


「手紙を書いたら、また森に入ります」

「ええ、分かりました。どうか、お気をつけて」


 ……こんな感じでカイラッドさんみたいに接して欲しいと思うのは間違ってるのか?


 せめて、ボーダントの冒険者ギルドの人たちみたいに接してくれたら……それで十分なのになぁ……。






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