第24話 サキュバスピクシーは純情ビッチ!?
森の奥地の山脈の中腹。
築城中の新動物王国拠点にて。
「……ご主人さま」
「ん? 何?」
寝る前のひと勝負を終えたところで、ミカゲがシーツで裸体を隠しながら話しかけてきた。
いつもは堂々と布面積の乏しい水着みたいなヤツで動いてるクセに、こういう時だけ恥じらう感じで隠すとか!? そんな感じで隠すとか!?
反則だろっ!?
そんなのアリか!? いや、可愛いけども!?
復活しちゃうだろぅぅっっ!?
ボクは若いから!? 思春期だから!?
復活しちゃうんだよぉぉっ!?
「……そろそろ、ドリカにも情けをかけてやるべきなのじゃ」
そのミカゲの一言で。
冷静になったボクのボクは一瞬でしぼんでいった。
ミカゲが言いたいことは分かる。
でもなぁ……何ていうか……。
「ドリカの体がわらわよりも小さいことが気になるのじゃ?」
「いや、それはそれでもちろんあるんだけど……」
「?」
「あー……何ていうか、その……」
もう何度も、全裸で求め合ってきたミカゲのことを……まっすぐに見つめられないボクがいる。
ミカゲの感覚だとテイムした魔族とは関係を持つべき、というものらしい。
実際、ミカゲはその日のうちにボクを押し倒してる。
もちろん、ドリカがすっごく小さい子に見えてしまうというのも問題がある。
たとえ、あれでも100歳なんだとしても、だ。
でも、それ以上に……。
「その……ボクとしては、だな……」
「何かあるのじゃ?」
「……そういうことは、ミカゲとだけ、したい……」
ボクはミカゲから顔をそらしたまま、ぽつりと言った。
それを聞いたミカゲがどんな顔をしたのかは分からない。
照れくさくて、ボクはミカゲの方を向けなかったし。
聞こえているとは思う。
小さい声だけど、今はボクとミカゲだけの空間だから。
しばらく沈黙があって……それからミカゲは、ボクを背中から抱きしめてきた。
いつものようないやらしい感じではなく、何というか……そっと、優しく、ゆっくりと、という感じだ。
「……その一言は、わらわたちサキュバスピクシーに対する殺し文句なのじゃ……」
え?
そうなの?
偶然の産物だけど!?
ボクの言葉で、ミカゲが、喜んでくれたんなら……ものすごく嬉しい。
「……わらわたち、サキュバスピクシーは……長き時を生きるのじゃが……こうして体を重ねる相手はひとりなのじゃ……」
「えっ……?」
「ご主人さまはなぜか勘違いしておるようなのじゃが、わらわたちは一途な種族なのじゃ。じゃからのぅ、さっきのご主人さまの言葉は……本当に……本当に、嬉しい、のじゃ……」
マジか!?
サキュバスピクシーってサキュバスじゃないの!? ビッチ的な!?
あ、いや。
そういえばただのサキュバスじゃなくて、ピクシーってのがくっついてるな?
あと、エロさでは確実にビッチではあるし!?
いや、待て。
そうだとすると、ボクは……。
ミカゲをテイムすることで無理矢理ミカゲの唯一の相手になったってことなんじゃないのか……?
何かフェロモンみたいなのを魔物使いは放出してるみたいだし……。
「……こうして触れておるとご主人さまの不安な気持ちも伝わってくるのじゃ」
いつもとは違う、エロくない抱きしめ方のまま、ミカゲがそう言う。
「のう、ご主人さま。わらわは別に……ご主人さまの『支配術式』に敗れて、嫌々ご主人さまと番うたのではないのじゃ」
「え? そうなの……?」
「120年生きた魔族たるわらわを上回る魔力量を有し、あり得ぬほどの数の魔物を操るご主人さまは……わらわにとって魅力的な、ただひとりのお方なのじゃ……」
ミカゲがボクの背中に、1回だけ、エロくない、優しいキスをする。
それは体で感じるのではなく、心の奥にまで届くキス。
「……ご主人さまがわらわを抱きしめて、『好きだ』、『愛してる』などと囁きながら果てる時はわらわも心から満たされておるのじゃ……」
うっ……グッとくる。
一度しなしなになったはずなのに、またグングンと復活してきたじゃないか……。
ミカゲが可愛い……可愛すぎるのが悪いっ!?
「わらわたちサキュバスピクシーは、たったひとりの番を見つけたら、その番と生涯を共にする種族なのじゃ。生きるも、死ぬも、一緒なのじゃ」
「え? 死ぬのも……?」
「そうなのじゃ。ご主人さまの魔力で生きて……ご主人さまの魔力が途絶えたら死ぬしかないのじゃから……」
マジか!?
ある意味ですんげぇ重たい一族じゃん!?
いや、それでもすごく嬉しいけども!?
「ご主人さま以外の男に襲われたら、その時も死ぬのじゃ」
「えぇ!?」
「そのくらい一途に番うのがサキュバスピクシーなのじゃ……じゃからのぅ、ご主人さまよ。もはや……わらわがご主人さまを裏切ることはあり得ぬことなのじゃ」
ぎゅっ、と。
そこでミカゲはボクのことを強く抱きしめてきた。
……ずるい。こんなの、心に刺さりすぎるだろ。
「安心してほしいのじゃ、ご主人さま……わらわはご主人さまと共に生きるのじゃ」
「……うん」
「じゃからのぅ……ご主人さまがドリカと何度まぐわったとしてもわらわがご主人さまから離れることはないのじゃ」
「いや!? なんでそこでそういう話に!?」
やっぱりサキュバス要素で公認ハーレムってこと!?
純愛ルートはどこに消えたんだ!?
「……ご主人さまの『支配術式』を受けたわらわじゃから分かることなのじゃ。ドリカも……間違いなく心からご主人さまを求めておるのじゃ。それが満たされぬというのは……ドリカに惨めな思いをさせるということなのじゃ」
……やっぱり『支配術式』っていう魔物使いの能力のせいって部分もあるのか。
「ご主人さまがわらわとだけ睦み合いたいとゆうてくれたのは……本当に嬉しいのじゃ。だからといって……ドリカがご主人さまの魔力で満たされることがないというのも、同じ立場におるわらわには耐えきれぬことなのじゃ……」
やっぱり公認モンスター娘ハーレムじゃん!?
ボクとしては……本当に、ミカゲだけでいいと思ってる。
本気で……そう思ってる。
でも、ドリカにも……必要だってミカゲは言う。
「……この体が成人でこれ以上成長しないわらわと違うて、夢現族のドリカは魔力で成長するのじゃ。ご主人さまが心配しておるドリカの体の小ささはすぐにでも解消できるのじゃ」
「え!? そうなんだ!?」
それって……。
ドリカがすぐにでもボンキュッボンになっちゃうってことかぁぁっ!?
「……むぅ。ご主人さまのご主人さまが……こんなに腫れ上がっておるのじゃ。わらわとだけ睦み合いたいとゆうたのにドリカでこうなるのは許せんのじゃ……妬いてしまうのじゃ……」
「あ、いや!? これはそもそもさっきからミカゲがすんげぇ可愛くてこうなってるだけで!? 別にドリカは全然関係ないっていうか!?」
「……本当なのじゃ?」
するりとボクの脇から可愛い顔を赤く染めて、ミカゲがボクを見上げてくる。
めっちゃめちゃ可愛いんですけどーーーーっ!?
ボクはもう止まれない。
ブレーキなんてどっかにいってしまった。
がばっとミカゲを抱きしめて、押し倒す。
「あっ、ご主人さまっ……」
「ミカゲっ」
異世界にやってきて、今が最高に幸せな瞬間なのかもしれない。
「……あ、あん……ご主人さま……」
「ミカゲ……お願いがあるんだ……」
「ご主人さまのお願いなら、わらわは……ミカゲは、本当に何でも叶えてあげるのじゃ……あっ、あんっ」
「……ボクのことは……ご主人さまじゃなくて、エニシって呼んで欲しいんだ……」
「……それは……いいのじゃ?」
「ミカゲにだけは……他の……これから先、ボクがどんな子をテイムしていったとしても……ミカゲだけはボクのことを……そう呼んで……」
「……分かったのじゃ……エニシ、さま……あ!? ああんっ!? んっ!? エニシさま!? エニシさま!? お、大きいのじゃ!?」
だって!?
グっときちゃったから!?
名前を呼んでくれただけで!?
このあと、ボクとミカゲは時間を忘れて愛し合ったのでした。まる。




