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第22話 お金を数えながら新しい町へと



「銅貨125枚、小銀貨87枚、銀貨32枚、小金貨6枚で……金貨は1枚、か。衛兵って収入はそこそこな感じなのかな?」

「3人分とはいえ、家の中の全て金を盗んだ訳ではないのじゃ」

「まあ、服のポケットとかまでお猿さんたちには探せないだろ」


 ボクはキンタの上でお金を数えながら、後ろから話しかけてくるミカゲに答えた。


 冒険者ギルドでボクに証拠もなく殺人容疑をかけてきた衛兵さんたちの家から、夜間空挺部隊を派遣して盗ませたものだ。


 殺人容疑をかけられた仕返しとしては、優しい方だと思う。

 次の給料日まで苦しめばいい。


 まあ、その殺人容疑は……実際にはボクが犯人なんだけどな。それはまた別の話ってことでお願いしたい。


「こっちは小金貨224枚、金貨32枚だからなぁ」

「子爵と商会の分なのじゃ? そっちも全てを盗んだ訳ではないのじゃ」

「全部盗んだらすんごい金額になる気がする……ま、わずかでもダメージを与えられたと思っとくしかないかぁ……」


 殺人容疑は子爵と商会も関係してそうだったから、そっちにも夜間空挺部隊は派遣しておいた。


 衛兵3人の家だけだと少なくなるような気がしたので。

 ついでにやっとこうかな、と。


 まさか、今度あの町に戻った時は……窃盗の疑いをかけられたりしないかな?


 絶対に証拠は出てこないと思うから、疑われてもどうにでもなりそうではあるし、あのギルドマスターなら守ってもらえそうだ。


「おそらく、子爵や商会の方はアクセサリーがなくなったことが大きいのじゃ」

「ああ、ネックレスと指輪なんかがあったよね。あれはこの国だと換金できないからなぁ……」


 さすがにそれをやる気はない。

 自分から危険に首を突っ込むことになるだろうし、バレたら流石にアウトだ。


 ただ、ロングテールモンキーは実に優秀な泥棒であると断言しておこう。

 ボクの中では、かなりポイントが高い。


 アクセサリーはともかく、銀貨や金貨には名前がある訳じゃない。

 これならどこでも使えるし、ボク自身が冒険者ギルドの討伐報酬でそこそこ稼いでるから不自然でもない。


 手持ちの資金があるのはありがたい。


 あとは、フランドールの町に入れば……カイラッドさんがいる。

 あの人と一緒にやっていくんなら、うまくやればお金に困ることはないはず。


「キンタはこのままゆっくりでいいのじゃ?」

「うーん。どうせ、途中の町には入らないつもりだし。森で夜は過ごせばいいから」

「従魔を連れて町に入ると騒ぎになるのじゃ……」

「いっそ森の中を移動するか……キンタなら街道と同じスピードで走れそうだ」


 ボーダントの町からフランドールの町は街道を馬車で6日というところ。

 前回のカイラッドさんの護衛で向かった時はそうだった。


 途中にイルバ男爵領のコナモの町と、フランドールと同じライゼル伯爵領のギャランダの町がある。


 町と町の間がだいたい2日って感じ。


 ……ただ、次のコナモの町はなぁ。セージル子爵の手が回っててもおかしくない気がする。


 爵位が下なんだ、男爵だから。

 うかつに中に入ると、何があるか分からないってのはちょっと怖い。


 ライゼル伯爵領に入ってしまえば、子爵はそんなに怖くない。

 前子爵が毒で死んで、新子爵に代わったばっかりだし、伯爵相手に何かの影響力がある可能性はたぶん低い。


 カイラッドさんがライゼル伯爵領のフランドールの町に逃げたのはそれが分かってたからだろうと思う。


 ……ボクがやった毒殺みたいな報復はできなくても、カイラッドさんなら刺繍糸をセージル子爵だけには売らない、なんて仕返しくらいはやるだろう。


 ボクとカイラッドさんはフクロフクロウ宅急便で手紙のやり取りをしてる。

 すでにグリーンウルフの抜け毛の納入はしてるし、あの刺繍糸の再開発も進んでるらしい。

 ちなみにボーダントの時の職人は引き抜かれてしまったそうだ。


 新しくグリーンウルフの刺繍糸が出来上がったら、まずは伯爵家に献上してから売りに出すって話だった。

 その時のお土産として、ハチミツの小壺も用意してるって。


 どうかカイラッドさんの商売がうまくいきますように。


「そんじゃ、そろそろ街道を外れて森に入るか」

「十分に街道を走るキンタを見せつけたのじゃ。これであの町を離れたと理解するはずなのじゃ」


 アリバイってほどのもんじゃないけど、ボクはもうあの町にはいない。

 だから、窃盗事件とは関係ない。そんな感じにしたい。


 ボクはキンタに指示を出して、森へと入った。


 だからミカゲ。

 森で少し影になったからって、後ろからそこを触らないように。


 まあ、いつものことなんだけど!






「マジでブラッドベアーだ……」

「あの噂ってマジだったのか……」

「だから、この前見たって言っただろーが」

「そんなん信じるワケねーだろ……」

「ママー、こわいよー」

「見ちゃダメだって言ったでしょ。もう帰るわよ……」

「あいつ、オークやオーガも狩ってくるって話だぜ?」

「Bランク!? 魔物使いが!?」

「いや、Bランクではないらしいぞ?」

「なんでだよ?」

「自分じゃなくて魔物が強いからじゃないか?」


 フランドールの町の門では特にトラブルは起きなかった。

 前と違って、従魔の証明ができたから。


 でも、町の大通りを冒険者ギルドに向かって進んでると、なんかお祭り騒ぎになってきた。


(なんだか前にも似たような経験をした気がするのじゃ)

(まあ、ボーダントの町でもこういう感じだったよな。でも、あの時よりはボクの知名度が確実に上がってるみたいだ)

(確かにそうなのじゃ……)


 これにも慣れておく必要がある。

 いつかはこの国の王都でもこれをやって……その時にはあの国を追い出されたって話を広めてやるんだ。


 史上最強の『魔物使い』としてな!


 絶対にあの国の連中を後悔させてやる!?


「エニシ殿!」

「あ、カイラッドさんだ」


 見物客の中に、カイラッドさんがいた。

 ボクに向けて手を振ってくれてる。


 これはたぶん……ボクとのつながりのアピールに違いない。


 ボクも手を振り返す。

 カイラッドさん以外はなんかおそるおそるって感じで見てるからな。


 従魔が怖くないってアピールでもあるのかもしれない。


「ギルドのあとはウチに来てください!」

「分かりましたーっ!」


 キンタを連れたままだと宿には泊まれない。

 この世界は『魔物使い』にとって厳しいままだ。


「……あいつ、すげぇな」

「ブラッドベアーが怖くねーのかよ……」

「冒険者じゃないだろ? 何モンだよ?」

「……確か、繊維ギルドの商人じゃなかったか?」

「ああ、噂の刺繍糸の?」

「まさか、あの緑の糸は……」


 おっと。

 また、刺繍糸の秘密がバレたかもしれない。


 別にバレたとしても……抜け毛を大量に集められないからマネはできないけどな。実際、オゥ、イェー商会は失敗したし。

 引き抜いた職人も……素材が足りなければ何もできないだろうに。


 でも、今度は……ボクたちも同じ失敗をしないようにする。もう燃え落ちた店の前で悲しむカイラッドさんを見たくない。


 もっとボクが積極的にカイラッドさんを守っていきたい。

 ここの領主である伯爵との関係も……どうにかうまくやりたいところ。


 とりりあえずは……冒険者ギルドから、だな。


 ボクの『魔物使い』としての知名度も上がってるし、こっちでテンプレが起きたりしないとは思うけど……。






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