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第20話 ここって、いい冒険者ギルドだよね……(遠い目



「黒髪で、黒目の……」

「ボクがエニシですけど?」


 衛兵の言葉を遮るようにして、ボクはすぐに名乗り出た。


 この町だと黒髪で黒目なんてすごく珍しいから、ボクじゃないと言い張るのは無理がある。


 でも、受付のカウンターからは離れないようにする。

 できれば味方につけたい。ギルド職員を。


「貴様が……ふむ。間違いなく黒髪、黒目だな。ついて来い」

「……」


 衛兵が冒険者ギルドの入口から出て行く。

 ボクはその場に残る。


「……エニシさん? ついて行かないんですか?」

「ついて行くとは一言も答えてないですよね?」

「まあ、そうですね……なんか、モメそうですからギルマスを呼んで来ます……」


 ギルド職員が気をきかせてくれたらしい。

 そのタイミングで衛兵たちが再び冒険者ギルドの中に戻ってきた。


「おい!? ついて来いと言っとるだろうが!?」

「いや、そもそも何の用なんでしょうか?」

「何!?」

「理由も教えてもらえずに、ついて行く訳ないですよね?」


 この人権なんて欠片もない世界で。

 衛兵にのこのことついて行ったら何があるか分からん。


 取り調べとかいう名の拷問が待ってるって予想できてしまうだろう……。


「うるさい!? ついて来いと言ったらついて来い!?」

「だから理由は?」

「うるさい!? おい、おまえたち! あいつを引きずり出せ!」


 うわぁ、めちゃくちゃだよ。

 早めにこの町から出て行くべきだったかもしれない。


 でも、護衛依頼の時に拠点の変更はちゃんと申し出て欲しいって言われてたから。

 流石に無視する訳にはいかなかった。


 部下らしいふたりの衛兵がのそのそと歩いてボクのところまで近づいてくる。

 さすがに衛兵だと分かってて、ぶん殴る訳にもいかない。


(……ご主人さま……対処するのじゃ?)

(ミカゲは我慢するように……)


 ここでミカゲの力を使わせるのもよくない。


 とりあえず、できることは限られてる。

 抵抗はしても、叩きのめす訳にはいかないって感じだ。


 ふたりの衛兵が、それぞれ、ボクの右腕と左腕を掴んだ。

 そこでボクは、ただ、踏ん張った。それだけ。


 衛兵がふたりで引っ張っても、ボクはビクともしない。


「なっ……」

「う、動かん……」


 これでもすでに単独でオーガを倒せる強さを身につけてる。

 まあ、魔物使いとしての自動的なレベルアップの仕組みのお陰ではあるけど。


 この衛兵ふたりが冒険者ギルドのランクにあてはめてどのくらいの強さなのかは分からない。

 でも、少なくともBランクぐらいの力がないとボクを強引に引きずり出すことはできないだろうと思う。


「何をやっとるか!? 早く引きずり出せ!?」

「そいつぁ、穏やかじゃねぇなぁ。おまえ、どこの衛兵だ?」


 どうやらボクの時間稼ぎは間に合ったらしい。


 カウンターの奥からガタイのいいオッサンが出てきた。

 なんか暴力が似合いそうなタイプだ。


「……ちっ。ギルドマスターか……」

「なんかよぅ、聞いた話だと、いきなりついて来いって言ったらしいじゃねぇか?」

「ふん。衛兵の命令には従うべきだろうが?」

「何の理由でつれて行くんだ? こいつはさっきから理由をたずねてるだろ?」

「ちっ……」


 舌打ちを2回。

 どう考えてもまともな衛兵の態度じゃない。


 ……つまり、裏で色々とつながってそうな衛兵ってことだ。


 オゥ、イェー商会とか、な。


(……ミカゲ。あとでこの衛兵3人の家とか家族構成とか、全部確認しておいて)

(任せるのじゃ)


 人間社会から完全に手を切るのなら、別にこの衛兵と真正面からモメてもいい。

 でも、それはまだ早い。


 魔王プレイはできれば最後まで残しておきたいルートだし。


 ボクはまだあの国に……ボクを追放して悔しいと思わせてない。

 魔王プレイに入ってしまえば、追放して正解だった的な話になる可能性が高い。それは避けたいと思う。


 ……まあ、あの国を後悔させた後になったとしても、人間社会とおさらばしたいって訳でもないけど。


「……理由が納得できるものであれば、ついて行くことも考えますけど?」


 ボクがそう言うと、衛兵がにらんできた。

 ボクの腕を掴んでたふたりの衛兵は、ギルドマスターがあごを動かすだけですぐに手を離した。


 なかなかいい対応をしてくれる冒険者ギルドでありがたい。


「……冒険者エニシ。貴様には、冒険者ワルサー、及び、冒険者コアクーを殺した疑いがある」


 衛兵リーダーの発言に、ボクは真顔で答えた。


「……それ、誰?」

「誰だと!? とぼけるな!?」


 衛兵のリーダーが狂ったように叫んだ。


 別にとぼけている訳ではない。

 そもそも基本的にソロ活動をやってるボクには、冒険者の知り合いなんかいない。


 名前を知ってる冒険者なんていなくて当然だ。


 たぶんあいつらだろうというのは分かってるとしても、その名前を知らないというのもまた事実。


「……あぁ、まあ、そうですよね。エニシさんは他の冒険者と組んで活動していないので」

「ですよね? 聞いたこともない名前ですけど?」

「なんだ、知らないヤツを殺したとか疑われてんのか? いくらなんでも、そりゃ意味分かんねぇだろ」


 ギルドマスターとギルド職員もボクの味方らしい。


 実にありがたい状況だと思う。

 本当にいいギルドなんだよなぁ、ここって……。






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