第19話 あの国のその後とボクのこれから……。
「そういう訳で、フランドールの町に拠点を移そうと思います」
「そうですか……エニシさんは期待の新人だったので、とても残念ですけど……」
冒険者ギルドで受付のギルド職員に拠点変更を届け出てる。
ここ数日はドリカのダンジョン内で過ごして、ダンジョンに魔力を供給していた。
もちろん、ミカゲも一緒に。
ホーンラビットをはじめとするいろいろな魔物たちもダンジョン入りさせて、塵も積もれば精神で魔力を供給させてる。
一部の魔物……ゴブリンとか、オークとか、オーガなんかには森の奥の拠点を移動させてる。
今よりもさらに奥地で、山脈の中腹。
そこに築城する勢いで町づくりをさせてる。
ドリカとはダンジョンの成長のさせ方について話し合いをした。
カイラッドさんがいるフランドールの町で役立つダンジョンとなりつつも、冒険者なんかの侵入者からできるだけ魔力を吸収できるように、という考えで。
今のところ、まだ6層までの魔力しか吸収できてないらしい。
ダンジョンを成長させるための魔力と同時に、ダンジョン内のもろもろを維持するための魔力も必要なので……本当はもっとゆっくりと滞在したかったけど……。
することがミカゲとのアレだけというのはヒマすぎるという贅沢。
ボクも……かなりのダメ人間になってきた気がする。
「フランドールのギルドにはこの証明書を持っていけば問題ないはずです」
「了解しました。こちらのギルドには本当にお世話になりました」
フランドールの冒険者ギルドに登録拠点を移して、そこでボクが新しいダンジョンを発見するという大手柄を立てるストーリー。
もちろんマッチポンプで。
そうやって冒険者ギルドや……領主である伯爵なんかとも面識を得たいところ。
それで……ダンジョン探索での活躍で名を上げる作戦。
当然、それもマッチポンプで可能だ。
くくく、これで……あのクソみたいな国を悔しがらせてやるぜ……。
「いえいえ、こちらこそ。エニシさんのような礼儀正しい冒険者がもっと増えてほしいと思ってるくらいなので、本当に……本当に、残念です……」
ギルド職員が心からそう言ってる気がした。哀しい顔で。
そこまで残念な顔って……。
ボクは思わず、声を落として質問してしまった。
「……最近もまだ、新しく来た人たちが暴れたりしてるんですか?」
「……まあ、そういう感じです」
「……何か、あったんです?」
ギルド職員がボクに顔を近づけて、さらに声を落とした。
「まだ確定情報じゃないんですが……隣国の王都で反乱が起きているみたいで……」
「え? 隣国って……」
ボクがいたあの国だよな!?
金貨50枚でポイっとボクを捨てたあの国!?
森に入ってからは色々と嫌がらせしといたあそこのことだろ!?
「……庶民の生活が苦しくなって限界だったらしいです」
「ああ、そうなんですかー」
思わず棒読みになるボク。
いや……そうなるようにホーンラビットを片っ端から連れて逃げたけど!?
「……しかも、隣国は勇者召喚をしていたらしくて……」
「へー、ソウナンデスネー……」
ボクもその勇者召喚に巻き込まれたひとりですけどね?
「……反乱を起こした庶民の鎮圧に勇者を送り込んだみたいなんですよ。あくまでも噂ではありますけど」
「勇者で庶民を……? えぇ……やりすぎなんじゃ……」
「まさにそうなんですが……その思惑は破綻したようなんです」
「どういうことです?」
「……送り込んだ勇者が庶民の味方になったらしくて……」
ギルド職員が遠い目をしながらそうつぶやいた。
「マジか……」
あの人たちそういうタイプだったのか!?
意外といい人かもしれないってくらいには思ってたけど!? 金貨も増やそうとしてくれたし!
まさか民衆を導く立場になるなんて!?
……あ、いや。導いてるとは限らないのか。
勇者とか賢者とかだったから、戦力としてはなかなか強いはずだけど……。
「そこから王都を二分する戦いになって……今では一部の貴族も庶民の味方になって国内を二分する戦いになってるとか」
王都だけじゃなくて反乱が拡大してる!?
「……どちらが優勢とか、そういうのは?」
「勇者も召喚してから間もない状態で、まだ十分に鍛えているという訳ではないらしくて、そこまで圧倒的な戦力でもないみたいですね。そのせいで本当に反乱軍と王国軍が互角なのだとか」
「……実は勇者ってそこまで強くないんでしょうか?」
「いえ、強いはずです。今の段階でも、4~5人の騎士を相手にして勇者ひとりで互角の戦いができていると聞いたので、かなりの強さはあると思います」
よく分からんけど、あの国が混乱してるのならそれでいいか。
しかし、勇者になった人たちがそんなことをしてるとは……。
あの国に残ってなくてよかった。
「……それにしても、なんで勇者は庶民の味方をしたんだ……?」
ボクはただつぶやいただけだった。
でも、それはギルド職員の耳に届いていたらしい。
「庶民の味方って立場の方が勇者らしくはありますが……なんでも、仲間が殺されたらしいです」
「え? 勇者の仲間が?」
「正確には……自殺したという話のようなんですけど……詳しい情報はまだ届いてないんですよ」
いや、十分に詳しい情報のような気がする!?
自殺した勇者の仲間!?
でも、あの3人が自殺する姿が想像できない!?
よく知らない連中だったけど、平気でハニトラに食いつくような人だろ!?
絶対に自殺とかしないって!?
そうすると……置手紙で自殺したフリをしてあの国から逃げたボクの話が無関係だとは思えないんですけどぉぉっ!?
意外といい人だったあの勇者たちだから……反乱の鎮圧で庶民の町に出る、そこでボクの自殺を匂わせる手紙に気づく……そんな感じか?
ありそう。
そういう流れって自然な気がする。
あの人たちなら、このままだと自分たちも……とは思わないような気がする。
どっちかというと、反乱軍に加わったのってボクの仇討ち的な動きの可能性が高いような……?
庶民が暮らしに困ってる状態で、そんなところにボクを放り出してるからなぁ。
ボクに対する罪悪感もあったのかもしれない。
一応、同郷ではあるんだし。
いや……あくまでも可能性の話でしかない、か。
でもまあ、反乱軍側に寝返ったって情報はたぶん、間違いないんだろうと思う。
「……勇者召喚とかやるからそんなことになるんじゃないですかね? よう知らんけど」
「まあ、召喚した勇者をどこかの戦争に利用しようと考えていたでしょうから、それが自分たちの敵になったという話なので……自業自得かもしれませんね……」
うん。
全面的に賛成だな。
まさに、自業自得。
「それでは……ボクはこれで……」
「ここにエニシという冒険者は来ていないか!」
なかなか面白い情報を入手したボクがそろそろギルドを出ようとしたところで、入口からそんな大声が聞こえてきた。
ボクの名前が出たので、ボクとギルド職員が顔を見合わせた。
「……あれ、誰なのか、分かります?」
「誰かは分かりませんが……正規の衛兵の装備ですから、間違いなく衛兵ですね」
「衛兵が? ボクを……?」
「何かやらかしました?」
「何もしてないと思いますけどね……?」
入口付近の衛兵は3人。
単独行動ではないから、衛兵としての業務で間違いない。
……いや、ボクが何かしたかと言われたら、何もしてないとは言えないけど。
いろいろヤってることは否定できない。




