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ツインマッドサイエンティスト

「…フーリ先輩、あれ。」


 真顔に戻ったそられが示した先には、二人の敵の猛攻からリノンを守るパイセンが確認できた。右手で防御壁を展開しながら、左手で回復を行っている。その手の先の方向に目をやると、ちょうどリスティが立ち上がったところだった。よかった!回復が間に合ったんだな!


「…先輩、どうする。あいつも近い。」


 続けてそられの視線を追う。…リーダーか。そんなところに潜んでいやがったか。だけど、数的有利はこちらだ。今の間に頭を叩きにかかるか?…しかし、奴め。この状況においても攻撃に移る素振りがない。何を考えてやがるんだ。


「私とそられは一定の距離を保ちつつリーダーを警戒。パイセンのフォローにはリスティが向かってるから任せよう。戦況が悪くなればフォローを頼む!」

「…了解。」


「ロッキングロック!」


 ちょうどパイセンの救援に到着したリスティの魔法で、地面から岩の壁が盛り上がる。それはパイセンたち三人の四方を囲み、敵を断絶した。


「…助かりましたー。危うく魔力切れになってしまうところでしたー。」

「間に合ってよかったですわ!女神先輩、回復助かりましたですわ!」

「お役に立ててなによりですー。にしても、この身体は制限が多いですね。さて、ここからどう切り返しましょうか?残念ながら、今の私では魔力不足で攻撃が発動できませんし。」

「ならっ!覚醒するしかないですねっ!本気いっちゃいましょう!」

「…正気ですの?あれは長く持たないですわよ?」

「そられも覚醒発動したみたいですし!負けてられないですっ!」

「わかりましたわ。女神先輩、すぐ倒してきますのでしばらくここにいてくださいまし!」


 短い戦略会議を終え、リノンとリスティは岩の壁から飛び出す。そして、敵に相対するや否や声を揃えて詠唱した。


「「ツインマッドサイエンティスト!」」


 …なんだ、それ。すごいダサそうだ…。


 厨二病も吃驚のダサいネーミングとは裏腹に光の柱が派手に二人を包む。一柱は稲妻を纏った光。もう一柱は濁った色にも関わらず何故かツヤツヤした光。対照的な二つの柱はあっという間に天へと消え去り、残された地上には新たなコスチュームの二人が立っていた。…あえて、もう一度言う。


 …なんだ、それ。すごいダサい…。


 リノンはおそらく電気で編んだ白衣を、リスティは…汚れまくった服みたいなおそらく土製の白衣?茶衣?を。それぞれ纏っていた。


「ほぉ!良いセンスじゃねぇか!」


 !?…敵が喋った!?


 とツッコミもままならない間に、フードローブ二人はそのフードローブを脱ぎ捨てた。…そうか、お前らも白衣着てたんだったな。アイデンティティ脱ぎ捨てたかと思えば、新たなアイデンティティを確立してくるんだな。やっぱ手強いよ…。


「あなたたちと一緒にしないでほしいですわ!」


 リスティが胸ポケットから取り出した眼鏡をかけながら先の言葉に応答する。でも。何故、今。このタイミングで真面目ちゃんスタイルに?!


「見てくれなんてどうでもいいぜっ!はやくお前らの脳汁ぶっしゃーしてやりたいぜ!ひゃっはー!!!」


 …リノンさんですよね?キャラ変わってるよ?怖いよ?


「…全く。だからやりたくなかったのですわ。安久慧りのん、時間がありませんわ。一撃で決めますわよ!」

「ひゃっはー!」


 奇声を合図に散開する。そして、リノンは電撃をその掌に纏わらせながら、敵に突撃する。敵も咄嗟に避けようとするが、そられによってバフ解除された素の状態では回避しきれず容易に捕えられてしまう。片の手で乱暴に相手の頭部を掴む姿はもはやカタギではない。


「辞世の句は詠んだかっ?詠んでないよなあ?…詠めたらよかったなあっ!」


 あ、狂暴化しても中身はおバカのままなんだな。


「いくぜ!ヌルポガ!」


 詠唱と共に掌の電流が相手の頭部を強く刺激する。敵は奇声をあげて白目を向いているが、どことなく絶頂した表情にも見える。…こいつ、何をしたんだ。ていうか、なんだよその古のネットミームと最後の幻想に出てきそうな技を足した名前!


「海馬に電極ぶっ刺す要領で、存在しねえ幸せな記憶を見せてやるんだ。嬉ションしながら気絶しやがるぜ!ひゃっはー!」


 …着想はマッドサイエンティストなのに、なんかいろいろとズレてない?


「…そられ、リノンのああいうとこちょっとヒく。」


 やめてあげなさい。しかし、結果としては秒殺だった。ある意味強かったのも事実だ。…リスティのほうは?


「ポリッシュ・フィニッシュ!」


 リスティの眼鏡のレンズがふいに発光し、その視線の先の地面を泥化する。泥に足を取られた敵は、思わず転倒する。


「きゃっ!私の一張羅が!」


 汚れた白衣に気を取られたところに、巨大な影が現れる。影の正体を確かめるべく上を向くと、そこには超でっかい泥団子が浮遊していた。それも磨かれてピカピカツヤツヤの。何故あんなところに泥団子が、と疑問に思ったのも束の間。その巨大泥団子は重力に逆らうのをやめて落下する。敵は逃げようにも泥に足を取られて上手く逃げれない。…そして泥団子はそのまま敵を押しつぶしてしまった。


「あら、白衣が汚れてお揃いになってしまいましたわね。」


 …いや、まてまて。倒したのはいいとして、リスティ。そのマッドサイエンティストは泥のほうのマッドだろ!そして最初柱に包まれてた時のあの光も磨いた泥団子の光だろ!


「…落ちない汚れを心に刻んでやりましたわ。ざまぁみろですわ!」


 リスティ。決め台詞までダサいよ。私の知ってるリスティを返して…!洗濯して返してよーっ!


 …ともあれ、形勢は完全に逆転。あとはリーダーを残すのみとなった。…こんな状況になっても不敵に笑う、不気味な…。




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