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10 3人の夕食

煌びやかな晩餐室に、帝国の一流シェフが腕を振るった料理が次々に運ばれてくる。


3人は、長テーブルの中央に、ヨウィエルを挟んで並んで座っていた。


「美味しい!」


料理を口にしたミレイアが、ぱっと表情を綻ばせる。

その横顔に甘い視線を向けながら、ヨウィエルは次々に質問を投げかける。


「好きな食べ物は?」

「行ってみたい場所はある?」

「休日は、どんなふうに過ごしているんだ?」


ミレイアは一つ一つ丁寧に答え、柔らかい笑顔を向ける。

その様子を、レオンは口を尖らせ、不機嫌そうに見つめていた。


料理の芳しい香りとは裏腹に、室内には微妙な緊張が漂っている。


「そうだ、ミレイア。君、転移魔法で来たのに、国境検問所でわざわざ通行証を見せたそうだね。さっき報告が上がってきて驚いたよ」


「ええ。帝国は密入国に厳しいと聞いたから……」


「ああ……そうだね。最近は“夢幻の女神”を装って不法入国する輩が多くて。取り締まりを強化しているところなんだ」


ヨウィエルはそう言って、困ったように眉を下げる。


「後で特別な入国証を渡しておくよ。次に来る時は、直接俺の所へ転移してくれて構わない」


「ありがとう、ヨウィエル。商会の新しい生産拠点の件や、救急魔導車の件もあるものね。近いうちに、また訪れるわ。転移する前に連絡するね」


「うん、待ってる。……俺からも連絡していい?」


「もちろん!」


盛り上がる2人の会話に割り込めず、レオンは無言でフォークを置いた。その様子を見て、ミレイアがヨウィエル越しに話しかける。


「レオン! わたしは、明日の朝、転移魔法でレガリア王国に帰るけど、レオンも一緒に行ける? もし、宰相たちと合流してやることがあるなら、魔導走行車で帰ってきても……」


「いや、俺はミレイアと一緒に帰るよ」


「そう? それじゃあとりあえず……王宮に帰りましょう。両陛下にレオンを連れてくると約束しちゃったし……少し、家族で話した方がいいと思うの。わたしは、レオンを王宮に連れて行った後、すぐにノクシア邸に戻るわ」


「え、俺はミレイアと離れたくないんだけど……」


「ごめん、レオン。やらないといけないことが山積みだから……」


不満そうに眉を寄せたレオンは、ミレイアに食い下がる。


「だけど、もうすぐミレイアの誕生日だろ? 一緒に祝う約束をしたじゃないか」


「そうね。4日後……誕生日の朝には迎えにいくわ!」


「ミレイアの誕生日は12月24日? 俺の誕生日は12月25日なんだ」

ヨウィエルが、ミレイアとレオンの会話に割り込む。


「わあ、一日違いなのね!」


「ミレイアは、生誕パーティーは開くの?」


「いいえ。家族でお祝いするだけで、大げさなことはしないわ」


「へえ……。だけど、レオンは招くんだね」


「当たり前だろ。俺は、ミレイアの家族に認められているからな!」

得意顔のレオンを一瞥して、ヨウィエルはミレイアに話し続ける。


「俺も行きたいけど……その日は、国内外から賓客が訪れるから離れるわけに行かないんだよね」


「ヨウィエルは、やっぱり盛大にお祝いを?」


「ああ。面倒だけど、一応皇太子だしね。でも、ミレイアとも一緒にお祝いをしたいな。次に帝国に来た時にでも……」


「うん、そうね。その時はプレゼントを……」


ーーコホン


レオンが、咳払いをして会話を邪魔する。


「俺の誕生日は3月24日だ」


ミレイアは、クスッと笑って膨れっ面のレオンに応える。


「知ってるよ、レオン。わたしと3ヶ月違いだよね。レオンの誕生日は、みんなで盛大にお祝いしようね」


「いや、ミレイアと2人で……」


「俺は、明日ーー」


ヨウィエルが、再びレオンの言葉を遮る。


「グリアユス王国で会談があって、早朝に出ないといけないんだ。お見送りをできそうにないんだけど……」


「大丈夫よ、ヨウィエル。今日はありがとう」


微笑みかけるミレイアがあまりにも可愛くて、

ヨウィエルは思わず胸を押さえた。


「ミレイアとずっと良い関係でいられるなら……そして、レオンがミレイアに結婚前に手を出さない約束をするなら……レガリア王国の失態はなかったことにする。父にもそう、進言しておくよ。……わかったか? レオン」


「……は?」


終始牽制をしあうヨウィエルとレオンに、ミレイアは肩をすくめて呆れながら、デザートのケーキを頬張った。


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