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6 二人きり

「わあ、素敵な部屋ね!」


ミレイアは、案内された客室の煌びやかさに目を輝かせた。

広い室内に配置された重厚な家具、壁や天井を彩る繊細な装飾。大きな窓の向こうには、宝石を散りばめたような帝都の夜景が広がっている。三部屋続きの構造で、その一室には、ひと目で上質とわかる大きなベッドが据えられていた。


隣に立つレオンは、呆れたように小さく息を吐く。

「まったく。王太子の俺の部屋よりも格式の高い部屋をミレイアに用意するなんて……あいつ、とんでもないやつだな」


「もう、レオン。いい加減、機嫌直したら?」


顔を覗きこむミレイアを、レオンがぎゅっと抱きしめる。


「……やっと二人きりになれたな、ミレイア。

俺が、どれだけこうしたいと思っていたか……わかってる?」


低く囁く声に、胸が熱くなる。


「それなのに、君はヨウィエルにキスまでされて……あんなふうに、簡単に気を許している。正直、すぐにでも連れ去りたかった」


軽くため息をついて、レオンは続ける。


「……これがなかったら、今ごろ理性がどこかへ消えていたな」


そう言って、手のひらに小さな石を乗せて見せた。

シオンから渡された、感情を落ち着かせる石だ。


「あ、ちゃんと持ってたんだ……。ごめんね、ヤキモチ妬いたんでしょう?」


「当たり前だ」


即答してから、レオンはミレイアの頬にそっと手を添える。


「……とりあえず、上書きしないとな」


唇が、静かに重なる。


「ん……」


角度を変え、何度も重ねられるキスは、次第に深くなり、そのたびにミレイアの喉から甘い吐息が零れた。


「ミレイア……愛してる」


「わたしも……レオンを、愛してる」


抱き上げられ、そのままベッドへと運ばれる。レオンに押し倒されるような形で、さらに唇を重ねる。ミレイアの首元のペンダントが淡く光った。


「ま、待って、レオン」


流れるように服を脱がそうとするレオンを、ミレイアはそっと止める。


「ミレイア? ……嫌だったか?」


「嫌じゃない。全然、違うの」


ベッドに座ったミレイアは、一瞬、言葉を探すように視線を伏せてから、小さく息を吸った。


「……すごく、したい。でも……今は、ちゃんと話したいの。今日、どうしても伝えなきゃいけないことが、たくさんあるから」


「話……?」


「ええ。何から話せばいいかな……そうね」


ミレイアはマジックポシェットに手を伸ばし、一冊の古い日記帳を取り出した。


「まずは、これのことから」


「それは……?」


「前世の記録よ。大おばあさまから預かったの。

初代聖女――ミレナが残した、日記帳」


レオンは恐る恐るそれを受け取り、ページをめくる。だが、そこに並んでいるのは、意味を成さない記号のような文字ばかりだった。


「……正直、何が書いてあるのかさっぱりだな」


「でしょうね。本人にしか読めない魔法がかかっているの。でも、わたしには……ちゃんと、文字として認識できているわ」


ミレイアは静かに続ける。


「信じられない話だと思う。でも、レオンには知っておいてほしいの。……聞いてくれる?」


「ああ。君の話なら、どんなことでも」


その即答に、ミレイアは微笑んだ。


「わたしね……今、四回目の人生を生きているの」


「……四回目?」


「もちろん、前世の記憶そのものはないわ。でも、この日記に書かれていた記録を見る限り……

今回の人生では、過去三回の人生で出会った、大切な人たちの生まれ変わりと、運命的に再会しているみたいなの」


「……そんなことが、本当に……」


呟くようなレオンの声に、ミレイアは小さく頷く。


ミレイアが語り始めた、前世から連なる数奇な運命の物語を、レオンは一言も遮らず、ただ静かに、真剣な眼差しで聞き続けていた。


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