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ヨウィエルの告白

ヨウィエルは、運ばれてきたコーヒーを一口飲み、静かに息を整えてから――ヴィエルとして生きた記憶を語り始めた。


「ミレットは、前世の俺にとって、生涯ただ1人の愛する女性だった。……結局、一緒にいられたのは、彼女が帝国に視察に来ていた、たった1ヶ月間だけだったけどな……」


ーー


レガリア王国の視察団を招いた晩餐会で、ヴィエルはミレットと初めて出会った。

凛とした立ち姿、大きな濃紺の瞳、時折浮かべる憂いを帯びた表情ーー全部美しくて……疑いようもなく、一目惚れだった。


ヴィエルは、彼女をホテルの特別室から公邸の客室に移らせて、朝から晩まで一緒にいた。言葉が通じなくても、ただ側にいるだけで楽しかった。


ミレットが不思議な能力で帝国語を習得した後は、一日中話をした。レガリアの魔法のこと、魔道具のこと、聖女の仕事のこと、家族のこと、精霊の住む森のこと、自分が初代聖女の生まれ変わりであること……包み隠さず色々教えてくれた。


お返しに、帝国の歴史や、流行りの文学の話をすれば、目をキラキラさせて喜んでくれた。


お忍びでデートもした。手を繋いで歩いた町は、いつもの景色なのに、ずっと輝いて見えた。

ミレットがさりげなく治癒魔法を使うのを見た時には、嬉しさと同時に、遠いところに行ってしまったような寂しさも感じた。


その頃のヴィエルには、多くの縁談が来ていたし、愛人でもいいから……と誘惑してくる女性は数えきれなかった。しかし、ずっと、一生をかけて愛するただ1人の相手を探し求めていた。


ミレットが、そのただ1人だと確信するのに、時間は必要なかった。


視察団が帝国を離れる日、ヴィエルは、ミレットに求婚した。

レガリアに帰る……と断る彼女から、溢れ落ちた涙を見て、早まりすぎたかもしれない……重荷でしかなかったのかもしれない……と胸が締め付けられた。


だけど、諦める気など更々なかった。いつか、必ずレガリアまで会いにいくと約束して、去っていく彼女を見送った。


視察団がレガリアに到着したころ。魔術師による緊急通信がヴィエルが住む宮殿に届いた。

"レガリア王国内部の治安悪化により、入国を制限する"


その一言で、国交は再び閉ざされた。


入国はおろか手紙も届かない日々。

それでもヴィエルは、レガリアの文化や言葉を学び続けた。


しばらくすれば、会いに行ける。

その時が来たら――もう二度と、離れたりしない。 


そう言い聞かせる日々を過ごした。


そして、一時の感情に溺れた馬鹿な皇子と噂されながらも、すべてを捨てる覚悟で皇位継承権を放棄して、幼い弟に皇太子の地位を譲った。


ようやく国交復活が叶ったときには、ヴィエルは25歳を迎えていた。

結婚適齢期を過ぎたミレットは、既に家庭を持っているかもしれない。

それでも、わずかな希望を持って、馬車はレガリアに向けて出発した。

ーー幻の聖女が毒を飲んで亡くなったという知らせが届いたのは、その直後だった。

そして、レガリアの国境を越えた時、急な心臓発作によりヴィエルの生涯は幕を閉じた。


ーー


「今回の人生で、前世の記憶を思いだしたのは10歳の時だった。もしかしたら、ミレットも生まれ変わっているかもしれないと、聖女と呼ばれる人間や、よく似た見た目の人間を探し回ったよ。そしてようやく、見つけた。ーーさっき、君の目を見たとたんに確信してしまったんだ。100年の月日を越えてーー恋焦がれたミレットとの再会を」


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