アルヴィンの心配
姿を消したまま、謁見の間に向かうミレイアたち。
アゼルと手を繋いで歩いているミレイアの後ろを、パミルとアルヴィンが並んでついて来ている。
「あのさ、パミル。ミレイアさんって……兄上の恋人だって言ってたよね?」
「ええ、言ったわ」
「じゃあ、どうして前にいる2人は、夫婦みたいに手を繋いでいるの?」
「アルヴィン……その疑問、すごく普通だわ!
わたしも、2人の距離感は変だと思う。アゼルがミレイアお姉ちゃんを狙っているのは確かだし……。だけど、手を握るのは治療の効率をあげるためらしいよ……一応」
「へえ……そうなんだ」
アルヴィンは笑顔を見せながらも、足取りは重く、不安な気持ちを隠しきれずにいる。
「……王妃様のことが心配?」
「……うん。母上は、僕に執着して、わがままな王妃を演じて現実逃避することで、なんとか心を保ってきたんだ。もし、心の治療がうまくいったとして……現実に引き戻されたら、逆に生きることが辛くなってしまうんじゃないかって思って……」
ちょうど謁見の間の前に辿りついたミレイアとアゼルが、足を止めた。
そして、アルヴィンの方を振り向いた。
「アルヴィン殿下。そのためにあなたを連れてきたの。王妃様が、今、心から信用できるのはあなたの存在だけだから……。できるだけそばにいてあげてほしいの。すべてが解決するまで、ちゃんと見ててほしいの。もちろん、あなただけに背負わせたりしない。わたしたちも時々様子を見に行くし、陛下にもお願いするつもりよ」
ミレイアが、アルヴィンの不安を拭い去るように声をかける。アゼルもそれに続く。
「正直、王妃様が正気に戻った後にどうなるかは、予想できません。だけど、このままにしておくわけにはいかないんです。わかりますよね?」
アルヴィンは、深く頷いた。
「さあ、入りましょう」
いつもなら扉の前に立っているはずの護衛の姿は見えない。侍女長のジュリアスが、うまく説明をしておいてくれたのかもしれない。
謁見の間の扉が、重厚な音をたてながら開かれる。
すぐに、奥の玉座に並んで座る国王カイルと、王妃カミリアの姿が目に入った。
「え? 何故誰もいないの?……護衛は?」
カミリアが、不思議そうに開かれた扉を凝視している。
カイルは、姿の見えない救済者たちの存在に気づき、柔らかく微笑んだ。




