過去を視た後
静まり返った部屋に、ため息が響いた。
「はあ……、もう限界」
「ノエル!大丈夫!?」
ふらつくノエルを、横にいるミレイアが慌てて支えた。
アゼルが心配そうに近づき、ノエルの手を握って顔を覗き込む。
「魔力は安定しているようだけど……」
「わわっ、魔力切れじゃないから!私はただ……」
焦って手を引っ込めたノエルは、しばらく黙り込み――重い表情で口を開いた。
「ただ、視えた内容が余りにも衝撃的で……耐えられなくなっただけです。王妃様の過去が、想像していたものと全然違っていたので……」
その瞬間、堰を切ったようにノエルの目から涙が溢れ出した。
ミレイアが、ノエルの背中をさすりながら声をかける。
「ごめんね、ノエル。あんな場面を視てしまったら、ショックを受けるに決まってるよね」
「ええ……。私も、魔力が少ないことで父親に虐げられて育ちましたから……少しだけ気持ちがわかるんです」
『ノエル……すまない。俺がノエルの能力に頼ったばっかりに……辛いことを思い出させてしまった』
アルスが通信魔道具ごしに頭を下げている。
「大丈夫よ、兄さん。私は頼ってもらえて嬉しかったの。力が使えるようになったことも……。幼い頃は、自分はいらない人間で、この世で1番不幸だと感じていたわ。けれど……私には、味方になってくれる姉さんや兄さん、おばあさまもいた。……愛してくれたサムは亡くしてしまったけど、今はお嬢様がいるし、仲良くしてくれるフローラや、ノクシア領のみんなもいる。でも……王妃様は、今もまだ父親の呪縛から逃れられずにいる……」
『ああ。救いがないよな……同情はするよ。しかし、実の息子を殺そうとした罪は消えない。』
アルスの厳しい言葉に、ミレイアがピクリと反応した。
「わたしは……、やっぱりレオンを殺そうとした王妃様は許せない。だけど……今の彼女には責任は問えないと思う」
「……治療が必要だな」
アゼルが呟き、ミレイアが静かに頷いた。




