連絡と予定
「レオン!どうかした?帝国には着いたの?何か問題があった?大丈夫!?」
携帯通信機の上に映し出された小さなレオンが、慌てるミレイアに穏やかな笑顔を向ける。
『大丈夫だよ。帝国には昨日の夕方に無事に着いた。昨晩は、兵が占拠していた国境の町のホテルで泊まったんだ。今から魔導走行車に乗って帝都に向かうところ』
「良かった。……国境の町の人たちや、レガリアの兵たちは大丈夫だった?アレクが幻覚魔法をかけてきたって言っていたから……大分混乱していたんじゃない?」
『問題ないよ。兵たちは全員、騎士団が連れて帰った。それから……町を偵察してきたが、ほとんどの住民は占拠された記憶自体が消えていた。覚えている一部の者も、ただ悪夢を見ただけだと思っているようだった。町には被害の痕跡すら残っていなかったし……レガリアを嫌悪している者も想像以上に少なかった。ミレイアとアレクには、本当に感謝しているよ』
「わたしは別に何もしてないよ……?まあ、アレクにお願いしたのは正解だったかも。
レオン、今から交渉に向かうんだよね?」
『ああ。予定を一日早めてもらった。終わったらまた報告するよ』
「うん。頑張ってね、レオン。もしピンチになったら、すぐに助けに行くからね!
わたしは……今から魔塔に行ってアゼルに会ってくるわ。あと……時間があったらベルトランにも会いたいし、セドリックとやりたい研究もあって……」
ミレイアが、聞いてもいない自分の予定を意気揚々と話すのを聞き、レオンは盛大なため息をついた。
『はあ……聞きたくなかったな。他の男たちに会う予定なんて』
「もう、またヤキモチ?心配しないでよ。わたしに下心なんて全然ないから!」
『ミレイアはそうでも相手は違うだろ……。
まったく……。浮気したらお仕置きだからな』
「浮気はしないけど……それは逆効果だよ……。レオンの甘いお仕置きは、今のわたしにとってはご褒美みたいなものだもの……」
顔を赤らめるミレイアに、レオンは頭を抱える。
『はあ、やっぱり君には敵わないな。
声を聞いたらますます会いたくなってきた。だけどーーそろそろ時間だ……行ってくるよ』
「うん。行ってらっしゃい」
ミレイアはレオンの姿が見えなくなるとすぐ、携帯通信機を上着のポケットに入れた。
肩にはいつものマジックポシェットを掛け、胸元のペンダントを自然と確認している。
「ミレイア、また行っちゃうの?」
モフィがしょんぼりしながら問いかける。
「いっしょに行っちゃだめ?」
スインが甘えた声で駄々をこねる。
「うん……一緒に行ってもいいんだけど、今から行くのは魔塔だよ。スインたちを捕まえにきた怖い研究員の人たちもいるところだよ……大丈夫?」
スインは丸い体をプルプル震わせる。
「え〜どうしよう。やっぱりミレイア行かないで〜」
「こら、スイン。我儘は申すな。我らは主を守る存在。必要とされないならば近づいてはならぬ」
威厳のある声で注意したギンだったが、その瞳はどこか潤んでいて、そっぽを向いた横顔は少し拗ねているように見えた。
ミレイアはクスリと笑って3匹を優しくなでる。
「なるべく早く戻るわ。今晩は、家族と一緒に食事をとれると思うから、みんなにもまた魔力の粒を分けてあげるね」
「わかった」
「まってる〜」
「必要な時には遠慮なく呼んでくれ」
「うん。できたら、ノエルの様子も見てあげてほしい。わたしの今日の予定も伝言しておいて。お願いね」
転移魔法陣が足元に展開され、光が彼女の体を包む。
次の瞬間、ミレイアの姿はふっと消えた。




