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走行車から降りて

魔導走行車は、軍事施設のある町の入口で静かに停止した。

門の前には帝国の騎士が三名、寒風の中、真っすぐ背筋を伸ばして立っている。彼らは見慣れない乗り物に一瞬だけ目を見開いたが、すぐに「ああ、これが例の」と納得したような顔で敬礼した。検問所から連絡が入っていたのだろう。


走行車から降りたレオンは、真っ直ぐ彼らの前に歩み出て、流暢な帝国語で話しかけた。


「レガリア王国王太子のレオン・エルヴィス・レガリアと申します。この度は、我が国の不法行為をお詫びに参りました。騎士の皆さんにも大変ご迷惑をお掛けしました」


「お、王太子殿下!? ど、どうか頭をお上げください!」


若い騎士が動揺して両手を振る。

ベテランの騎士は臆することなく、口を開いた。


「今回のことは、先程いらっしゃった騎士にも“手違いがあった”と謝罪を受けました。不法入国は罪ではありますが、被害がなく、一日足らずの出来事でしたので、強制送還で対処しました。我々こそ、事実確認もせず、レガリアの兵にかなり乱暴な拘束をしてしまい、申し訳ありませんでした」


もう一人の騎士は、寝不足のような目をこすりながら、気まずそうに視線を落とした。


「……その……私が本部に、レガリア王国からの侵入者が軍事施設を爆破し、町に火の手が上がり怪我人が多数出ている、と報告してしまったんです。でも……実際にはそんなことは何一つ起きていませんでした。侵入があったと聞いて動揺して……余計な妄想をしたのかもしれません……」


ベテラン騎士が彼の後頭部を軽く小突く。


「本当にお前は人騒がせだ。あの報告を聞いた時、心臓が止まるかと思ったぞ」


そのやりとりを聞いていたレオンは、胸に手を当てて軽く頭を下げた。

いつの間にか、宰相ソウダインと文官長ブリックがレオンの背後に静かに並んでいる。グレアム隊の面々も次々と走行車から降りてきていた。

その人数に、帝国の騎士たちがぽかんと口を開けて走行車の入り口を凝視している。


「ちょ、ちょっと待て……こんな小さな車から、どうしてこんなに……!?」

「中はどうなってるんだ?」


「怪しいものがないか確認しますか?」

グレアムが穏やかに提案すると、帝国の騎士たちは恐る恐る車内に足を踏み入れた。

ーーそして数分後、頬を紅潮させながら戻ってきた。


「……レガリア王国の技術力はここまで進んでいるのですか……。驚きました」


ベテラン騎士が感嘆のため息を漏らした。ブリックが一歩進み出て頷いた。


「驚かれるのも無理はありません。我々自身、いまだに信じられないくらいですので。それで……不躾ながら、いくつかお願いがありまして」


ブリックは、レオンから頼まれていた内容を静かに伝えた。


今夜の宿の手配をお願いしたいこと。

できれば王太子一行であることを伏せ、旅人として町の様子を見たいこと。

町にいる間、魔導走行車を預かってほしいこと。


話を聞き終えた三人の騎士は、顔を見合わせる。ベテラン騎士が慎重に返事をした。


「……車を預かるのは問題ありませんし、ホテルの手配もいたします。しかし、いくら皆さんが帝国語に慣れておられるとは言え……ただの旅人として振る舞うのは、少し難しいのでは……?」


「大丈夫ですよ。平民に紛れるのは得意なので」

レオンはにこりと、親しみのある笑顔を浮かべた。その柔らかな笑みに、騎士たちの肩の力がすっと抜ける。


「……承知しました。ただし、ホテルの責任者には本当のことを伝えさせていただきます。それだけはご了承ください」


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