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131 約束の1時間

「来てすぐで悪いんだけど、ハンスがずっと会いたがっていたから、少しの間遊んでやってくれない? 一時間後にはベッドで眠る約束をしているから」


応接室で待っていたララベルが、ミレイアの顔を見るなり手を合わせた。


「はい、もちろん。ハンスとパミルと一緒に遊んできます。でも……何か大事な話があったんじゃ?」


アルスが神妙な顔で頷く。


「ああ。ハンスが寝てからゆっくり話そう。今日は泊まっていくんだろう?」


ミレイアは、笑顔で頷くララベルをちらりと見てから、「はい」と返した。


「ミレイア、早く行こう!」


ハンスがミレイアの手を引き、自分の部屋へ駆けていく。パミルも嬉しそうにその後を追った。



ハンスの部屋に入った瞬間、ミレイアは思わず声を上げた。


「あら? 前にわたしが来た時のままになってる?」


半月前に初めてハンスの部屋を訪れた際、ミレイアは調子に乗って魔道具の小鳥や木馬、浮かぶ七色の星や光の輪などを出し、部屋を横切る長いすべり台まで作ってしまった。そのすべてが、以前と同じ状態で残っていた。


「うん、あの日のままだよ」


平然と答えるハンスに、ミレイアは慌てて謝る。


「ごめん! 邪魔だったよね? ちゃんと片付けていけば良かった。せっかくの大人っぽい部屋が台無しだよね……」


「だめだよ、片付けちゃ。ミレイアが俺のために出してくれたんだから、全部宝物なんだ」


ミレイアが苦笑いしていると、パミルが口を挟む。


「あのね、ミレイアお姉ちゃん。ハンス、この部屋すっごく気に入ってるの。昨日、初めてお友達をいっぱい連れてきて、みんなで楽しく遊んでたんだから」


「近所の同級生に自慢したら見せてって言われて……しょうがなく遊んでやっただけだよ」


「そんなこと言って、帰りにまた遊ぶ約束してたよね? 前みたいに乱暴なこともしなくなったし……お友達に優しくできるようになったのは、ミレイアお姉ちゃんのおかげだよね」


「パミル、それは考えすぎよ。ハンスはもともと優しくて、かっこいい男の子だもの」


ミレイアの言葉に、ハンスの頬が赤く染まる。


「考えすぎじゃないよ。俺は、ミレイアに相応しい男にならないといけないから……」


「でも、ハンスが大きくなるころには、ミレイアお姉ちゃんはとっくに結婚してると思うよ? すっごくモテるんだから」


パミルがからかうように言い、ハンスはむっと頬を膨らませる。


「えーそんなの、まだわからないだろ」


「そうね、先のことはわからないよね。でも――ハンスが素敵な大人の男性に成長する未来は、ちゃんとわかる気がするな」


ミレイアが微笑みかけると、ハンスは照れたように目をそらした。


その後、3人は部屋に残してあった遊具に加えて、ミレイアが新しく出した不思議なおもちゃで夢中になって遊んだ。

大きなおもちゃをワンタッチで出し入れできる片付けボックスをプレゼントすると、ハンスは大喜びした。


やがて、ハンスは遊び疲れ、ミレイアの腕の中で静かに眠りにつく。

ちょうど、約束していた一時間が過ぎた頃だった。


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