129 また来てね
食卓が片付き、窓の外がすっかり暗くなったころ。
ミレイアがプレゼントした“自作の不思議なおもちゃ”を大事そうに抱えた子供たちが、名残惜しそうに彼女の周りへ集まっていた。
「ミレイアさん、もう行っちゃうの?」
「えー、まだ遊びたい」
「楽しい魔法もっと見せてよ〜」
「やだやだ〜行かないで〜」
「泊まっていけばいいのに!」
小さな手が袖を引っ張り、無邪気な声が次々に重なる。
「ミレイアさんに勉強を教わりたかったのに……。すごく教えるの上手なんでしょ?」
ウララは不満そうに口を尖らせた。
「うん、ごめんね。この後行かないといけないところがあって」
ミレイアが柔らかく微笑むと、子供たちはさらに「やだ〜」と声を上げる。
「みんな、わがまま言ってはだめよ。ミレイアさんが困っているでしょう?」
オリーがやさしく子供たちを引き離し、ミレイアにちらりと申し訳なさそうな視線を向けた。
そこへ、片付けを手伝っていたティナがひょこっと顔を出す。
「わたしは泊まっていくよ」
弾けるような笑顔とともに、子供たちへ両手を広げた。
「今夜はわたしと、眠たくなるまでいっぱい遊ぼー!」
「うん!ティナちゃんと遊ぶ〜」
さっきまで沈んでいた子供たちは一気に機嫌が治り、ティナと一緒にぴょんぴょん跳ねはじめる。
「しーっ、静かに。今、小さい子供たちを寝かしつけてきたところだから」
奥の部屋からエクスが顔を出し、慌てて制止した。
静けさが戻ったのも束の間、
そのすぐ後ろからルイスが勢いよく飛び出してきて、ティナの顔をのぞきこむ。
「ティナ! 今、泊まっていくって聞こえたんだけど、マジで!?」
「わわ!近いよルイス……」
ティナはぐいっと顔を押し返しながら、頬を赤くして答えた。
「港町のみんなの家を回ったり、商会に顔を出したりしたかったんだけど、今日はもう遅いし……って話してたら、オリーさんに泊まっていったらって言われたの……。家にも連絡しておいたから大丈夫だよ」
「わあ……! まだ一緒にいられるなんて、めっちゃうれしい!」
ルイスは子供たちに混ざって、全身で喜びを表すように跳ね回っている。
ティナがその腕をつかんで止めながら伝える。
「ミレイアは予定があるから、もう行っちゃうんだって」
「えー、ミレイアさんは泊まらないんだ……残念。転移魔法で行くの?」
「うん、行くね」
ミレイアは軽く片手を挙げた。
「次に会えるのは冬季休暇が終わってから?」
ティナが尋ねると、ミレイアは少し考えてから頷く。
「そうだね……。ティナたちは年明けの王宮のパーティーには行かないの?」
ティナが首をひねった。
「あー、第二王子の婚約パーティー? うちにも招待状が来てたみたいだけど、行くのは父母かな。ミレイアはレオン殿下と行くの?……色々企ててるってクラリスから聞いたけど……」
小声で探るように囁く。
「まあね……。でもレオンとは別口で行くことになりそう……」
ミレイアの言葉に、ティナは少し眉を寄せた。
「ふーん。危険なことはしないでよ。わたしにも手伝えることがあったら言ってね!」
「俺も! ミレイアさんのためならなんでもするからな!」
ルイスが、ティナに負けじと胸を張る。
「うん、ありがとう。また連絡するね!」
ミレイアは微笑み、足元に転移魔法陣を展開させた。淡い光が床を照らす。
「今日はみなさん、ありがとうございました」
「ミレイアさん、また来てね!」
「すぐに来てね」
「ありがとう」
「大好きだよ〜」
「バイバーイ」
大家族の明るい声に包まれながら、ミレイアはふわりと光の中に姿を消した。




