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128 大歓迎

ルイスの幼い弟妹に手を引かれ、ミレイアとティナは古いけれど丁寧に手入れされた大きな部屋へ案内された。磨かれた木の床は艶やかで、窓から差し込む光が温かく空間を満たしている。


奥には『ミレイアさん・ティナちゃんありがとう』と大きく書かれた横断幕。壁や柱には、子供たちが一生懸命作ったであろう花飾りが色とりどりに揺れていた。

人数分の椅子が並んだ大きなテーブルには、魚介料理、季節の野菜料理、焼きたてのパンなどがぎっしりと置かれ、やさしい香りがふわりと漂っている。


「わあ、すごいご馳走! 飾りつけまで! オリーさん、準備大変だったでしょう?」

ティナが弾んだ声を上げる。


「大変じゃないわ。子供たちも楽しんで準備していたし……実は料理も半分以上はご近所の皆さんが、2人のためにと持ってきたものなの」

オリーが少し照れたように微笑む。


「今日はお招きありがとうございます。歓迎していただき嬉しいです」

ミレイアは丁寧にお辞儀をした。その姿に、オリーはふっと目を細める。


「まあ、そんなにかしこまらないでミレイアさん! 貴族のご令嬢にこんなことを言うのは失礼かもしれないけど、あなたのこともティナちゃんのことも、もう家族同然に思ってるんだから」


その真っ直ぐな言葉に、ミレイアの頬が自然とほころんだ。


その笑顔を見た瞬間——。

「うっ……」

エクスが胸を押さえて唸った。

「いけないダメだ……息子の同級生にときめくなんて……第一俺には最愛の妻が……」


ぶつぶつ呟く父の姿に、娘のウララが白い目を向けている。


ふと横を見れば、ティナはいつの間にか小さい子供たちを両手に4人も抱えている。


「ティナって見かけによらず力持ちだよなー」

ルイスが感嘆の声をあげる。


「そうよ、わたしはたくましいの!悪い!?」


「まさか! 可愛いのにたくましいなんて、最高じゃん!」


「……はあ。何言ってるんだか……」


いつもの2人の掛け合いを微笑ましく眺めながら、ミレイアはルイスの母へ話しかけた。


「オリーさん、お腹の赤ちゃんは順調ですか?」


「ええ、おかげさまで。少しお腹も膨らんできたわ」

オリーが優しくお腹を撫でると、近くにいた子供たちの目も自然と輝く。


「12人兄妹なんて、珍しいですよね。わたしは一人っ子なので、羨ましいです」

賑やかな家族を眺めるミレイアの瞳は、憧れの色を帯びていた。


ウララが勢いよく首を横に振る。


「私は一人っ子が羨ましい! だって、なんでも独り占めできるんでしょ?第一……12人も子供を作るなんて、父ちゃんが節操がないだけじゃない」


腕を組む娘に、エクスが口を出す。

「ウララ〜。何てことをいうんだ! お前たちは全員俺とオリーの愛の結晶で……」


「コホン。とりあえず、みんな座ってちょうだい」

オリーが咳払いをすると、ざわついていた部屋がすっとまとまった。


ルイスがジュースを掲げる。


「では、改めましてミレイアさん、ティナ。ようこそエントリー家へ。町を救出してくれたことと、俺と仲良くしてくれていることへの感謝をこめて、かんぱーい」


「かんぱーい!」

小さな弟妹たちも一斉に真似をし、部屋中に明るい声が響いた。


家庭料理の素朴な香りと、家族の賑わいに包まれ、ミレイアの心は温かく満たされていく。


「ミレイアさん、お口にあうかしら」

オリーが心配そうに覗きこむ。


「はい。すっごく美味しいです。高級レストランにも引けをとりません!」


エクスが腕を組みながら頷く。


「最近、漁で獲れる魚が前より美味しくなった気がするんだよな」


「わたしも思ってた!」とカヤ。

「今までは嫌いだったのに大好きになっちゃった」とマヤ。


ティナがミレイアの肩をつつく。


「それ、ミレイアの魔法のせいじゃない?」


「海を浄化したせい?」

ミレイアがきょとんとする。


「絶対そうだよな!」

ルイスが得意げに笑う。


そこから町の変化や、ルーエ商会の噂話が次々と飛び出し、食卓は一層にぎやかになった。


やがて、エクスがティナに向き直る。


「ティナちゃん提案のホテル建設の件だけど、この前町内会議で話したら、全員賛成だったよ。町に活気がでるのはみんな大歓迎だってさ」


「良かった。反対する人がいなくて」

安堵したティナに、ミレイアが首を傾げる。


「ホテル建設って?」


ティナは胸を張って説明した。


「父さんの経営するホテルの系列で、港町に建設計画をたててるの。ルーエ商会を作ってから遠くの町や異国の商人がたくさん訪れるようになったから、拠点となる宿が必要だと思って。町で獲れる美味しい魚を使ったレストランも併設するから、評判になれば観光客も増えると思うの」


「なるほど」

ミレイアは感心して頷いた。


その横でルイスが身を乗り出す。

「ティナ……俺の町のために色々考えてくれてるなんて……嬉しすぎる! みんなに自慢したい!」


「べ、別にルイスのためなんかじゃないんだからね!」

ティナはぷいっと顔を背ける。


カヤが2人の様子を見てぱっと手を叩く。

「わかった! ティナちゃんはルイス兄ちゃんと結婚するのね!」


「え、違うよー。2人は学園に通ってるからまだ恋人同士じゃない?」

とマヤ。


「違う違う! わたしたちは恋人同士でもないし。ただの友達!」

ティナが慌てて否定する。


「そうだよ、マヤ、カヤ。俺とティナはただの友達だよ……今はまだ」

ルイスが意味深に口角を上げた。


「ねえ、ティナちゃんの好きなタイプってどんな人?」

ウララが好奇心全開で尋ねる。


「好きなタイプ? うーん、優しくて家族想いで、一緒にいると楽しくて嘘がつけない人かな」


「「「ルイス兄ちゃんじゃん」」」

複数の声が揃い、場がさらにわっと盛り上がる。


「ち、違うし……」

ティナが真っ赤になり、ルイスは満足げに笑った。


おせっかいなミレイアは、

この2人はきっと大丈夫ね……と胸の中でつぶやいた。


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