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126 おせっかい

お見送りに来ていた人々は、魔導走行車が見えなくなると、それぞれの仕事へと散り散りに戻っていった。


残っているのは、ミレイア、ロイ、クラリス。そしてアルスとパミルだけだ。


ミレイアはアルスの前に駆け寄る。


「こんにちは、アルス叔父さま。ここで会えると思っていなかったから、びっくりしました。今日はどうして?」


「やあ、ミレイア。パミルから色々聞いたよ。陛下の治療がうまくいったようで良かった。馬車の件は……驚いただろうが、パミルが気づいて、君が機転をきかせてくれたおかげで大事にならずにすんだ。実は、今日ここに来たのは、それにも関わる理由なんだ。名目上はパミルの婚約関係の書簡を届けることだが……ミレイア、君に話がある。ここでは話しにくいから、我が家に来てくれるかい?」


「もともとパミルを送っていくつもりでしたけど、この後約束があるから、ゆっくりはできなくて……。夕食の後でお邪魔してもいいですか? ララベルさんが良ければですけど」


「もちろん。そもそもララベルに“ミレイアさんは忙しい子だから、必ず捕まえてきてくれ”って言われて来たんだよ。これから予定があるなら、パミルは馬車で連れて帰るよ。なあ、パミル」


アルスはキョロキョロと辺りを見回した。隣にいると思っていたパミルが、いつの間にかクラリスとロイの近くで話している。

会話の内容までは聞こえないが、ロイが楽しそうに笑い、クラリスが恥ずかしそうに顔を隠しているところを見ると、パミルが2人の微妙な関係をからかいに行ったのかもしれない。


「パミル、今日会ったばかりなのに、もう仲良くなったのね」

ミレイアが感心したように呟く。


「はは、あの子にはそういうところがあるんだ。人の心に入り込むのがうまいところは……君に似ているかもしれないね」

そう言うとアルスは、クラリスとロイに挨拶を交わし、パミルを連れて戻ってきた。


「えー、わたしはミレイアお姉ちゃんと転移魔法で帰りたい!」


「わがまま言っちゃだめだよ。ミレイアはこれから約束があるそうだ。だけど、なんと、夕食が終わったら我が家に来てくれる約束をしたよ」


「え! お父さま、やるじゃない。ミレイアお姉ちゃん、泊まっていってくれるの?」


「うーん、わたしはいいんだけど……ララベルさんにも聞いてからね」


「やった! ミレイアお姉ちゃんが泊まってくれたらハンスも喜ぶよ。今日はわたしと一緒に寝ようね! それじゃあ、また後で!」


パミルは元気よく手を振って、オルコット家の馬車に乗り込んだ。


パミルとアルスを見送ったミレイアは、隣で手を振るロイとクラリスに視線を向ける。

心なしか、ふたりの距離が近い。


「ねえ、クラリス。パミルと何を話してたの?」


「え、婚約の話とか……ロイの良いところを聞かれたりだとか……」


言い淀むクラリスの隣で、ロイが苦笑しながら口を挟む。


「俺には恋愛指南をしてきたよ。あの子、本当にまだ9歳か? ミレイアさんの従兄弟って言われると、なんか納得だけど」


「そうね、ふふっ。2人が一緒になれたらいいのにって思っているのは、わたしも同じよ」


「な……何を言ってるの? 私には婚約者がいるのよ」


「だけど、クラリスの気持ちはロイさんの方を向いてるよね?」

ミレイアの言葉に、ロイが引きつった笑みを浮かべる。


「ずいぶんはっきり言うなー。俺は告白もしていないし、クラリスの気持ちを確かめたこともないのに」


「だからよ!何も言わなければ、ロイさんはきっと、クラリスが他の人と結婚するのをウジウジしながら見ているだけでしょう?

クラリスはきっと、結婚した後も、仕事でロイさんに会うたびに胸が締め付けられるような後悔をするわ」


「ミレイア、ちょっと待って。さすがにおせっかいすぎない?

私の気持ちはバレバレだったかもしれないけど、婚約は幼い頃に家同士で決められたものよ。気持ちだけで無くせるものではないの。

第一……ロイは私のことなんて、友人としてしか見てないわよ」


クラリスの言葉に、隣に立つロイが深いため息をついてから、真っ直ぐに言い切る。


「いや、それは違う。俺は、ずっと……クラリスのことしか意識してない。幼いころ、初めて話した時からだ。

婚約者がいることを聞いてからも、自分への婚約話が増えてからも……女性として好きだと思えるのは、一緒になりたいと思えるのは、クラリスだけなんだ!」


「え……うそ……だけど……」


ロイの正面からの愛の告白に、クラリスは顔を赤くして動揺している。


「すぐに返事する必要はないんじゃない?」

ミレイアが穏やかに口を挟む。


「どうせクラリスのことだから、“婚約者のリオネルさんに申し訳ないから一緒にはなれない”って言うんでしょう?

だけど、リオネルさんはクラリスの気持ちになんて、とっくに気づいているんじゃないかしら。

クラリスのご両親と話して思ったの。あの方々は、すごく見る目のある人たちだって。

リオネルさんは素敵な男性だけど、クラリスの気持ちを蔑ろにしてまで一緒になってほしいとは思っていない気がする。

まずは素直になって、少しくらい足掻いてみてもいいんじゃない?」


「……本当、おせっかい」


「ごめん。これからも友達でいてくれる?」


「当たり前よ。ミレイアみたいな人には、なかなか出会えないもの……。ミレイアに言われるなら、少しぐらい……素直になってみてもいいかしら」


クラリスが照れながらロイを見つめると、彼は満面の笑みを返した。


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