122 四角関係
「キャー! ミレイアお姉ちゃん、今の美形の男性はだれだったの? き……キスしてたよね!? キャー!」
アレクが消えた瞬間、パミルが興奮して飛び跳ねた。
ミレイアは恥ずかしそうに苦笑いする。
その横から、レオンとアゼルが揃って冷ややかな視線を向けていた。
「ミレイア、避けようと思えば避けられたんじゃないか?」
レオンがミレイアの唇をそっと指で拭う。
「ごめん。突然だったから……」
「それに、あいつなんかに頼らなくてもいいだろう? ミレイアには契約聖獣たちがいるじゃないか」
アゼルが眉をひそめて問いただす。
「ギンとモフィは、わたしのいる場所には飛べるけど、知らない場所には行けないの。それにスインは若い精霊だから、まだ出来ないことが多くて……。アレクなら、壊れたものを元に戻せるし、魔力も並外れているもの。実は、さっきキスされたときも――魔力を分けてくれたんだよ」
「……だからって、気を許しすぎだ」
「あいつはミレイアの貞操を狙ってる変態だぞ」
「ミレイアに触れていいのは俺だけだ」
「ミレイアを治療していいのは僕だけだ」
ミレイアが二人に責められて目を泳がせているのを見ながら、パミルが楽しそうに手を叩いた。
「な、なにこれ!? 恋愛小説みたいな展開! 三角関係かと思ったら四角関係!?」
「パミル……あのね、アレクは人間に見えるけど、水の精霊なの」
ミレイアの言葉に、パミルが目を丸くする。
「まさかの美形精霊!? ミレイアお姉ちゃんの魅力は、もはや種族をこえてるのね! さすがだわ!」
「もう……」
ミレイアが呆れてため息をついた時、扉をノックする音が響いた。
レオンが返事をすると、護衛のひとりが顔をのぞかせる。
「レオン殿下。宰相と文官長が、正門前でお待ちです」
レオンは早足で護衛に近づいて、言葉を交わしている。
その隙を狙うように、アゼルがミレイアを抱き寄せた。
「魔力の流れを見てるだけ」と言い訳しながら……。
切ないぐらい優しい魔力が、ミレイアの中に流れこんでくる。
「大丈夫そうだね。僕は、そろそろ魔塔に戻るよ。パミルのことは任せてもいいかい?」
「ええ、もちろん。ありがとう、アゼル」
ミレイアはアゼルをぎゅっと抱きしめ返す。
「くれぐれも、危険なことはするんじゃないよ」
「うん」
「またな……」
「うん、またね」
アゼルは名残惜しそうに離れると、転移の光を残して姿を消した。
「うわぁ、意外と大胆ね……」
手を振っていたパミルが呟いた。
レオンが、転移の光に気づいて戻ってきた。
「良かった。ミレイアが黙っていなくなったかと思ったよ。転移したのはアゼルだけか……」
「レオン、もう行くの?」
「ああ。行ってくるよ」
「正門前まで一緒にいくわ」




