121 影の救済者
「アレク!どうだった?」
ミレイアが駆け寄ると、アレクはくしゃっとした笑みを浮かべ、そっとミレイアの頭を撫でた。
「大丈夫。言われた通りにしてきたよ」
不可解な表情を浮かべたレオンが、ミレイアの袖をつまみ問いかける。
「どういうこと?」
「実は、今朝レオンと別れた後、たまたまアレクが現れたから、お願いしてみたの。レガリアの兵が占拠した帝国の街を、見に行ってほしいって」
「え……。見てきたのか? どんな様子だった?」
レオンがアレクに鋭い視線を向ける。
「今朝の状態は、いいとは言えなかったな。どんな命令を受けていたかは知らないが、レガリアの兵たちは街の大きな軍事施設を爆破し、歯向かう帝国民に剣を向けていた。怪我をした者もいたし、火のついた民家もあった」
「そんな……」
「しかし、死者が出なかったのは幸いだった」
「何も……できなかったのか?」
「俺が行って、ただ見てくるだけなわけないだろ。第一、ミレイアの注文はそんな簡単なものではなかったはずだよな?」
アレクがミレイアの肩に手を回して問いかける。
「そうだったね……無理言ってごめんなさい」
「いや、俺は嬉しかったんだよ。頼ってもらえて。ミレイアのためなら寿命が半分になったって構わないんだ。早く俺と一つになってよ」
耳元で囁かれ、顔を赤くしているミレイアを、レオンが奪い返すように抱き寄せる。
「それで?」
「壊れた軍事施設と焼けた民家は、神聖力を使って元の状態に修復した。怪我人の治療も行った。もちろん、姿は消したままでだ。それに……兵たちと帝国民には、一時的に意識が朦朧とする幻覚魔法をかけてきた。意識がはっきりするころには、すべて夢だったと思うだろうな」
「そうか……父が帝国に示した戦線布告や、兵の不法入国の問題は残っているが、実際の被害がなければ話し合いで解決できるかもしれない。……助かったよ、ありがとう」
「いや、レオンに礼を言われる筋合いはない。俺は、ミレイアのためにやったんだから。お礼ならミレイアからもらうよ」
アレクはミレイアの前に回り込み、少し強引に唇を合わせると、「またね」と手を振って消えていった。




